えりりん908 さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ジェネリックジブリと、アンチジブリと、ポストジブリと。
スタジオポノックが制作した、
短編3作品からなる劇場版アニメです。
言わずと知れた米林監督とか、ジブリ色は濃いですが、
そこから踏み出そうとする意欲が、感じられる、そんな作品群で構成された、オムニバス作品でした。
1本目の「カニーニとカニーノ」は、{netabare}誰が観ても、
ジブリそのもの。みたいな、サワガニの兄弟を擬人化して描く、
小川の中というミニマムな舞台での、
生きることの大変さ、家族の絆の強さを表現することに重点を置いた、
とても解りやすくて、感情移入も容易な作品。
敢えて逆に言うと、
意欲作とは言い難い、ジブリの残滓を引きずり過ぎた作品と映りました。
生物の表現、水の表現、主役兄弟のキャラなどは
流石の手腕で、みんな{/netabare}きれいにジブリしてますw
2本目の「サムライエッグ」、これはジブリ的なファンタジー世界とは一線を画した、アンチジブリと言っていい意欲作で{netabare}した。
主人公の小学生のリアルな、重いアレルギーと背中合わせで生きていく姿。
そしてその困難が予断なく、厳しい現実として描かれます。
重度食品アレルギーの恐ろしさと、その事実に敢然と立ち向かう母と子の、
周囲の人々に救いの手を差し伸べて貰うことも厭わず、「生きる」姿勢。
ファンタジー色はいっさい排除されています。
それだけに、胸に突き刺さる。
これはジブリでは到底できない表現。
生命の危機に瀕したときの、アレルゲンと戦うシュン君の勇気に、
頑張れ{/netabare}、ガンバレ!と我を忘れて応援してしまいました。
3本目が「透明人間」、透明={netabare}存在が感知されない、
それだけではないのです。
このストーリーの主人公は、重量さえも持ち合わせていないので、
重量物を身につけるか固定物に掴まっていなければ、
糸の切れた風船みたいに空の彼方へと消え去ってしまう宿命を背負って、
それでも仕事に出勤し、コンビニに行き、
職場でもコンビニでも気づいて貰えないのに、一生懸命に生きています。
ただ生きている。それだけのことがこれほどの困難であるということ。
この存在の、何ものにも例えようの無い軽さが、重いです。
他人と異なる存在であること。
他人にはわからない生き物であること。
透明人間であることを比喩として、
主人公以外はごくごく普通の人間社会の中、
他人に認知さえして貰えない辛さ、厳しさ、恐ろしさといった諸々が、
{/netabare}ポスト・ジブリ的ファンタジー世界観で描かれます。
良い並びですね。
3作品ともに、{netabare}20分にも満たない小品でありながら、
生きることの困難と意義をしっかりと伝えようとしてくれます。
まるで、鈴木Pに見限られたとしても、アニメ業界でもがき続けるぞ、
辛いけど自分たちはアニメーターとして{/netabare}生きていくぞ。
という意志表明のようでもあるのかな?
なんて、ちょっと、考えてもしまいました。