ヘンゼル さんの感想・評価
4.3
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
設定は大味、しかしキャラクターの完成度は高い
リコリスという日本を裏で支える治安維持組織が、日本の犯罪者を問答無用で銃で撃つという、バイオレンスな作品かと思いきや、リコリスという組織に忠実で躊躇なく人を撃てるが、人との関り方が下手な「井上たきな」という女の子と、自由奔放でリコリスでも最強であるが、不殺の主義を貫き人付き合いが上手い「錦木千束」という女の子の二人が危機や付き合いを通じてどう変わっていくかを味噌とした作品である。
こういった作品で似たような作品と言えば、ゾンビ映画が挙げられるだろう。ゾンビという危険や壁を乗り越える人間ドラマを主軸とし、ゾンビという敵をそこまで深堀りはしないし、設定も大味な場合が多い。
リコリスリコイルで、ゾンビの役割を果たすのは、「リコリス」という組織、そして「真島」という敵の存在である。彼らに対してそこまで深堀りはされずに話は進むため、ストーリーに重きを置いている人達からすれば好みに合わないと思う。本作品はあくまで、二人を主軸とした物語である。それらをメインに、世界観や設定はあくまで副菜かデザートのポジションで見れば良いのかもしれない。
本作品の特徴は「百合」(女性同士の恋愛関係)に近い友情を上手く描いている点である。たきなが千束と関わっていくうえで、心の内が開けていく様は、表現としてもとても上手く、距離が縮まり、いつしかかけがえのないものになっていくのは観ていてとても心が温かくなった。
アクションシーンの作画もものの見事に描き切っていて、最後まで力尽きることなく完成しきった制作陣の方々には感謝しかない。
彼女たちはどこか不器用で、どこか繊細で、しかし信念や自分を持っている強い女の子である。そこに愛らしさも兼ね備え、まさに2022年を象徴するアニメキャラクターの一員になったであろうという事は間違いない。
ブレないテーマを貫き、魅力的なキャラを生み出した本作品は星4.3とする。