Witch さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
「米澤穂信」×「京アニ」奇跡のマリアージュ! (でも書きたいのは「2期の可能性キター!!」)
【レビューNo.26】(初回登録:2023/2/1)
小説原作の2012年作品。全22話。
米澤穂信の青春ミステリー小説「古典部シリーズ」をアニメ化。
(「氷菓」はシリーズ第1作にして同氏のデビュー作)
(ストーリー)
主人公・折木奉太郎は
「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」
をモットーとする省エネ主義者。そんな奉太郎は姉からの脅迫(?)をきっかけに廃部寸前だった、
古典部に入部することに。そこで出会った千反田えるに推理力を見込まれ、彼女の叔父にまつわ
る謎解きを依頼されることになる。古典部には親友の福部里志と彼に思いを寄せる伊原摩耶花も
加わって・・・
(評 価)
・米澤穂信のココが凄い
本作品は数話にわたる長編と1話完結の短編からなる22話で構成されています。
ミステリーとはいえ、高校生の日常が舞台なので作風としては地味ではあります。
(基本事件内容的にはショボい)
なので10編程のエピソードには正直面白さの当たり外れはありますが、どのエピソードも単なる
謎解きで終わらず含みのあるテーマ等が盛り込まれておりに味のある仕上がりになっています。
特に長編3編は本格的なミステリーっぽく、解き明かした謎は決して後味のいいものではない
のですが、その「ほろ苦さ」やエピソードの締めまでを含め同氏の技量の高さを伺わせます。
個人的には長編はもちろん見応えがあって好きなのですが、19話「心あたりのある者は」という
短編が秀逸だと思います。
{netabare}「理屈と膏薬はどこへでもつく」これを証明するために、一本の校内放送内容からどんな事件が
あったをひたすら(でっちあげ的な)推論を展開していくという奉太郎と千反田の会話劇ですが、
いかにも遊び心に溢れて、最後にちゃんとオチまでつけるという異色作ですね。{/netabare}
・京アニのココが凄い
・ヒロイン「千反田える」がとにかく魅力的
活発な瞳が特徴的なキャラデザに加え、愛らしい性格からくるその言動、それでいて自分には
厳しい一面も持ち合わせており「動く千反田える」は本当に魅力的です。さすが「涼宮ハルヒ」
で社会現象を巻き起こした京アニ。ヒロインをどう描けば面白くなるかを分かっていらっしゃる!
放送から10年程が経ちますが、今なお「好きなヒロインランキング」があれば上位に入ってくる
超人気キャラですね。
・作画や魅せる演出等全てのレベルが高い
上述の通り地味目な作風ですが、(舞台の神山市:岐阜県高山市が聖地らしい)上高地の風光明媚
で長閑な情景を丁寧な作画で描いており、この作品の雰囲気と見事にマッチしています。
またミステリー作品にありがちな冗長な会話劇も、カメラアングルの小まめな切替や音楽や作画の
演出効果等で退屈させずに魅せる工夫が素晴らしいです。何というか細部にまで気を配りアニメを
面白く魅せるこだわりが感じられるみたいな・・・
原作既読ですが、個人的にはアニメは原作を超える面白さだなっと。米澤穂信の原作の良さを引き出し
つつも「何故アニメで見せるのか」その命題にしっかり応えている京アニの仕事ぶりには脱帽です。
【2期の可能性について考察 (実はこっちが本命)】
2期待望の声が高い作品ですが、(業界云々の話は置いといて)本作には致命的な問題があります。
それは2期ができるだけのストックがないということです。あと少し書いてくれれば1クールいけそう
なんですが、古典部シリーズの最新刊も2016年11月で止まっており新作が待たれる状態です。
(アニメ映画化という手もありますが、明快がきっかけがないと今更って感じでしょうね。)
★「古典部シリーズ・長編」ついにキター!!!!!
実はこのレビュー書いてる最中に再確認したら、すいません見落としてました!
Twitterで1年程前にこのような発表があったようです。
「KADOKAWAさんから出る新刊は、〈古典部〉シリーズの長篇にしようとご相談しています。
— 米澤穂信 (@honobu_yonezawa) Feb 4, 2022」
エピソード的には、これでギリ1クールいけるかって感じですね。まあ1年経ってまだ発刊まで至っ
ていないので、アニメ化があったとしても2024年以降って感じですが、今までの絶望的な状況から
かなり見通しが明るくなったのは確かですね。今年中の新刊発表に期待!!
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以下ボツネタw(上述情報確認前)
・米澤穂信の多才さ
古典部シリーズでデビューした同氏ですが、その後本格派ミステリーに取り組み高い評価を得ること
になります。2022年に「黒牢城」で「直木賞」も獲っちゃったしね。なので古典部シリーズより優先
的に書きたいものがあるのかなって感じる部分があります。それを如実に感じたのが
「本と鍵の季節」(2018年12月発売)
って作品なんですが、「高校生男子2人が日常の謎を解き明かしていく短編集」ものなんですが、
「古典部シリーズとめっちゃ被っちゃってるやん!!」
(内容的は古典部よりかなりビターなんで差別化はできているんですが)本書を読んだ感想は
「同氏的には古典部よりこちらにご執心でシリーズ化するのでは?」
という不安でした。図らずもこの予感は的中し、続編が2022年11月に発売されました。
(未読ですが)これを最近知ったので、思わず本レビューを書いた次第です。
これでますます原作発表が遠のいたという印象ですね。
・本当は米澤穂信も続編が書きたい?!
では古典部シリーズに愛着がなくなったのといえば、それも違うかなっと。むしろ愛する作品ゆえに
中途半端なものを出したくないから筆が止まっている気がします。・・・知らんけどw
アニメ化の部分で古典部活動の1年間を結構描いてしまった感があるので、ここから先の展開が意外
と難しいんですよね。2年になって同じことの繰り返しでは芸がないですし。それに体育祭や修学旅
行等で青春してる千反田たちを見たいかといえば、それも違うだろうって話だし。
~ここからアニメ化以降のネタバレ含みます~
{netabare}
以降の話では、摩耶花の大きな環境の変化や千反田の別の1面や(高い理想を掲げるがゆえの)苦悩など
各主要キャラの掘り下げをメインに展開している感がありますね。ネタ的には
・里志回や奉太郎の将来を模索する様を描く等の掘り下げ回
・謎多き奉太郎・姉や入須先輩の卒業エピソードetc
まだいろいろ書けそうな気がしますが。あとアニメ化だと「ラストにふさわしいエピソードは?」
って話もありそうですね。アニメでは
「千反田の新たなる決意と自分の将来について向き合い始める奉太郎」
という図式を京アニらしく綺麗に締め括りましたが、2期にふさわしい結末とは?{/netabare}
業界的には「10年前の作品の続編を今更やるメリットは?」って話もありそうですが、もし実現すれ
ばかなり反響があると思うので、原作さえ書き上げてくれれば期待できるんじゃないかとみてます。
「古典部シリーズに飽きたんじゃない!きっといい作品にするために思案を巡らせているんだ!!」
個人的には好意的に捉えて、「これぞ古典部シリーズ!」いう作品を引っ提げての凱旋を期待です。