ネムりん さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
中高生にとっての告白とは・・・
原作HoneyWorks。
物語は高校3年生の榎本夏樹と瀬戸口優、幼馴染みの関係にある2人を中心に男女7名の恋の行方と告白について恋愛模様を描いていく。
本作は言わずと知れた中高生をターゲットにしたアニメ映画ですが、いきなり告白から始まり無駄なものを極力除いて結論から入り、トゥルーエンドは別に用意されているといったもので、最初観た時の印象は"シンプルで分かりやすい"これに尽きると思います。
テーマは「告白」なので、他作品とは異なりそこに至るまでの過程がほとんど省略されていて、作品の作りはとにかく結論が欲しい若年層の心境を捉えたものになり、実際に映画がヒットしたのも中高生の目線から見た販売戦略としては核心を突いたものに思えました。
告白するきっかけやモチベーション、そして好きな理由といったものではなく、告白するまでの心境の変化を捉えたもので、どういう気持ちで相手を見つめ最後に告白に至ったのか、主人公視点で分かりやすく視聴者に伝わるように内容が描かれていました。
このような作品の作りは導入部分が"CHiCO with HoneyWorks"名義でOP曲を担当していた「アオハライド」に近いものがあるけど、過去作品には自分の知る限り一致するものはなく、別視点から見える目新しさがあり、多くの人がいろんな意見を持ったと思います。
中高生の時に異性を好きになるのは理屈といったものではなく、笑顔などの見た目や運動が出来たり、ギャグのセンスが面白いとかその人が感じるインスピレーションが一致すれば好きになるのだと思いますが、女性脳の観点から見た好きになるは信頼関係や共感を大事にするのが特徴にあることから、親しい男友達のことを気付いたら好きになっていた女性が多く、本作の主人公、榎本夏樹は瀬戸口優と幼馴染みの関係にあるので一緒にいる時間が長いほど相手に惹かれていくのはごく自然の流れで、この場合、物語の背景を詳細に描く必要がないため、短い描写の中にも実際の女性心理を捉えた的確な表現方法だと思いました。
成長して大人になると理想が崩れまた見方が変わってきますが、中高生の目線からすれば学生時代、隣の席の女の子と会話が弾んだり、部活動がきっかけでいつのまにか一緒にいることが楽しくなり好きになっていたこともあるかと思います。
そういったものをすべて凝縮したものが本作の作りで、言葉では説明できない不明瞭な恋愛事情が若年層にとっては共感できるものになり、冒頭の告白シーンで恥ずかしさからはぐらかしてしまうヒロインが、その理由が説明できないから逃げたくなる気持ちはこのことから推し量れます。
二度目の告白で本番の予行練習を名目にヒロインが本当の告白をして、ここで優が夏樹の気持ちに気付いてあげてと勘ぐったりしますが、このシーンはその姿が高校生らしいなと感じました。
青さというか気付かないふりをしているようにも見え、経験からくる未熟さであり、実は好意を示してくれていたサインだったと大人になってから気付くこともありますが、現実を考えればこのような向こう見ずな描写が中高生ウケするのは分かるような気がします。
一度本気の告白を勘違いされて短い回想シーンが入り、理由なんかいらないと繋ぎ止めるように本当の気持ちを相手に伝える部分が全てを物語っているようで、これが飾らない素直な気持ちと捉えるとある意味このようなシンプルな作りの作品が中高生のバイブルと言えるのかもしれません。
恋愛作品としては実情を捉えた実践的な内容に見えることから中高生にこの作品が支持されたのは納得がいくもので、適切な距離感や余裕といったものを重視する大人の恋愛観ではなく、中高生の価値観を考えてあげると「告白」というイベントを通じて、思春期の多感な時期においては"その時の瞬間"の自分の気持ちが何よりも大切なことを伝えたかった作品内容なのかなと思いました。