てとてと さんの感想・評価
3.8
物語 : 2.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
アラビアの魅力は伝わる力作でクオリティーは高いが、宗教とエンタメは水と油
サウジアラビアと日本の共同制作アニメ映画。111分。
聖地メッカを侵略せんとする覇王相手に、主人公らイスラムの戦士たちが立ち向かう。
※作品データベース様より転載
【良い点】
敬虔なイスラムの民や戦士たちの誇り高い生き様を魅力的に描いている。
作画は良好で象戦車の迫力や合戦シーン、殺陣アクションは見応え十分。
古谷徹氏をはじめ、日本語版の豪華声優陣。
戦記としては、絶望的な戦力差の侵略者相手に勇気と団結で立ち向かっていく王道で見やすい。
敵の恫喝戦術に士気崩壊しかけたのを主人公が鼓舞して持ち直すシーンは一番燃えた。
イスラムの戦士たちの最前線での掛け合いの雰囲気も良い。
敵ボスのアブラハの覇王っぷりがカッコイイ。強者の余裕で主人公らを分からせたがる人。
堂々と決闘に応じて実力では主人公負かしたり、戦闘の前に軍事力を威圧に用いて降伏させようとしたり、良き覇王だった。
正直主人公たちよりも、神の奇跡に抗った彼の方に共感できてしまう。
頻繁に聖書?コーラン?(浅学なので詳しくは知らない)の朗読シーンあり、
イスラム教?というかサウジアラビアの?逸話としては興味深かった。
ムッタリブ長老という、穏健派ムスリムの理想的な在り方も示していた。
【悪い点】
あまりにも宗教的な作風。
神を信じ悪に屈せず仲間と共に戦い抜けば必ず奇跡が起き神が助けてくださる、がテーマ?
徹頭徹尾、カミカゼ頼り。終盤ピンチで唐突に鳥の爆撃で逆転勝ちした展開は呆気に取られた。
(七つの海のティコの終盤を彷彿)
アブラハも主人公と最後の対決の直前に天罰?で退場、ここは主人公が止め刺すのが王道じゃないかと。
ハリウッド映画だって、宗教色は濃くても、ちゃんと主人公自身の力で勝つから日本他世界中で普遍的に楽しめるんだけど、
本作は(日本人が親しんできた)物語の王道に反している。正直つまらない。
宗教的価値観については、別にとやかくは言わない。
むしろ彼らの信仰と揺らがぬ生き様は尊敬に値するし、信念の為に戦うのも素晴らしい。
本作の問題点は、その素晴らしい題材を、エンタメ作品として面白く見せる構成に落とし込めていない点。
聖書?コーラン?(浅学なのでよく知らず、違うかも?)の神の説話?を朗読するシーンが3回ほどあり、
個々の話は興味深いんだけど、ストーリーが盛り上がっている最中に長々と回想朗読が入り著しくテンポを損ねている。
特に後半主人公がアブラハに敗れた後の朗読は盛り上がりに水を差している。
こういうのはストーリーの中で自然に組み込むべき、作劇が下手。
【総合評価】2~3点
イスラム教徒もしくは一神教の人々でなければ共感を得るのが難しそうな作品。
題材が悪いとは思わないが、エンターテインメントとして普遍性に欠ける以上、
日本アニメやハリウッドに比べ、イスラム圏の外への広範な支持は得られないと思う。
評価は難しい、申し訳ないが「悪い」
サウジアラビアと日本の合同制作第一弾の「アサティール未来の昔話」が普遍的な道徳を題材にしているためか
日本人にもある程度共感できる(面白かった、自分のレビューは良い評価)。
どちらかというとアサティール路線の方が良い。