Witch さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
「ラブコメの教科書」的存在。「ラブ」をしっかり「コメディ」で落とす。
【レビューNo.22】(初回登録:2023/1/23)
コミック原作の2014年作品。全12話。
「トモちゃんは女の子!」のレビューで本作に触れたので、ちゃんとレビューしておこうと。
個人的には、初心者の方に「オススメのラブコメは?」と聞かれれば、迷わず(入門書として)本作
を一番に推す位思い入れのある作品ですね。
(ストーリー)
「の、野崎くん、ずっとファンでした?!」
入学式のときからずっと思いを寄せていた佐倉は、ついに野崎くんに告白するもテンパってしまう。
すると野崎くんはサイン入りの色紙を差し出してきて・・・実は野崎くんは超売れっ子の「少女漫
画家」で、世間では「恋愛の教祖的存在」と祭り上げられているが、実際は初恋も未経験の究極の
「無自覚系鈍感男子」だった!!
こうして佐倉の前途多難な恋物語が幕を開ける。
(評 価)
・王道パターンを丁寧かつ全力でやる
ラブコメといってもいろいろあります。最近主流なのはハーレム系で主人公とヒロインたちの
恋模様をコミカルに描きながら最後に誰が選ばれるのか等。その点この作品はシンプルです。
★「ラブ」をしっかり「コメディ」で落とす。
・無自覚野崎くんからのアクション「野崎くん♡」→「・・・ですよね(´・ω・`)」
・佐倉からのアクション「野崎くん♡」→鈍感スルー→「・・・ですよね(´・ω・`)」
これを時に音楽や作画の効果でしっかり盛り上げて・・・でもやっぱり落とす。こんな感じで
大小織り交ぜながら、この王道パターンを丁寧かつ全力でやる。でもそれだけでなく
★「ラブ」→時に「落とさず」スルー→これを甘酸っぱい余韻が残る演出で魅せる。上手いです!
これでコメディに主軸を置きながらも、ちゃんとラブコメとして成立させているのです。
・サブキャラも丁寧かつ魅力的に描く
とはいえ、これだけではさすがに限界があります。そこでサブキャラ登場ですが、本作には
{netabare}・鹿島:女子ながらも王子様キャラでめっちゃチャラい。女子たちを魅了して騒ぎを巻き起こす。
・瀬尾:究極のKY女子で人をイラッとさせる天才。傍若無人な振る舞いで周りを振り回す。 {/netabare}
という2大トラブルメーカーがいますが、彼女たちには
{netabare}・鹿島→バイオレンス系突っ込みキャラ:堀先輩
・瀬尾→彼女に対抗すべく奮闘するもどこかズレてる残念男子:若松後輩 {/netabare}
というパートナーを組ませることで、彼女たちが空回りしたり嫌悪されることなく作品にしっか
り収まるよう構成されています。でも男子2人もモブ的ではなく作中で愛着が持てるよう丁寧に
描かれていますし、トラブル女子2人も実は部活では類稀なる才能を有しており、単なるおバカ
キャラで終わらせずに上手くキャラを確立させています。ここにユーティリティプレイヤー(?)
御子柴(ミコリン)を加え、それぞれの世界→新たな交友による「主人公×サブキャラ」「サブ
キャラ×サブキャラ」という無限の組み合わせでどんどん展開を広げていく。しかもそれぞれの
個性を殺しあうことなく逆に相乗効果を生み出し、しっかりエピソードを成立させています。
(同様の仕掛けを漫画家活動側(編集等)にも施しており、更に作品に奥行きを持たせている)
サブキャラを出オチで終わらせず、愛着の持てるキャラにちゃんと育てていく。だからこの作品
はどんどん面白くなっていくのです。
・4コマ漫画のテンポ感と視聴者側への積み重ね
この作品のベースは4コマ漫画のもつテンポ感です。シュートコメディを小気味よく畳掛けつつ
彼らの日常を面白く見せていく。それゆえ物語としての積み重ねは希薄です。肝心の佐倉の恋模
様はひたすら「落とされる」ので2人の関係は進展しませんし、変化といえばせいぜい新たなる
交友関係の構築位でしょうか。それでも視聴者側にはキャラへの思い入れや作品に対する愛着等
が着実に積み重なっていきます。この過程を経て「この作品らしい」ラストへと綺麗に繋げてい
くのです。
例えば通常のラブコメは大きなイベント(学園祭や旅行)やとんでもトラブル等シチュ設定に頼り
面白いストーリーを作ろうというところがありますが、本作にそんなものはありません。それでも
・王道パターンを丁寧かつ全力でやる。
・サブキャラも丁寧かつ魅力的に描き、キャラを育てていく。
・それをテンポや演出等で効果的にアニメとして面白く魅せる。
これだけで十分面白いラブコメは作れることをこの作品は教えてくれます。
だから自信をもって言えるのです。
「『月刊少女野崎くん』は『ラブコメの教科書』といえる作品であると」
あとOPはあのオーイシマサヨシ。今でこそアニソン界の大御所にまで上り詰めた感がありますが、
「オーイシマサヨシ」名義で発表した初めての作品で、彼のルーツともいえる曲ですね。
EDは佐倉(小澤亜李)によるキャラソンですが、これヒゲドライバーの作品だったんだな。どおり
で耳に残るはずだわw小澤亜李とヒゲドライバーは結婚してるみたいですが、この作品が縁だったり
するんですかね。