「七つの海のティコ(TVアニメ動画)」

総合得点
65.8
感想・評価
70
棚に入れた
433
ランキング
3178
★★★★☆ 3.6 (70)
物語
3.7
作画
3.6
声優
3.6
音楽
3.5
キャラ
3.6

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ネタバレ

てとてと さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

名作劇場異色の冒険ロマン。名作なのは間違い無いけれど、絶賛はできない

世界名作劇場20作目。名劇唯一のオリジナルアニメ。
ナナミちゃんと仲間たちがシャチのティコや船仲間たちと共に世界中を冒険する。全38話。
※作品データベース様より転載

【良い点】
子供向けの海洋冒険浪漫の活力に溢れている。
超人的な潜水能力持つナナミちゃんが可愛い。シャチのティコと以心伝心で海で大活躍、見ているだけでワクワクさせる。
日本も含めて世界を股にかけるロードムービーで飽きさせない。
スクイドボールという潜水メカなどリアルには無いギミックもあり、ちょっとしたSFアニメとしても楽しい。
海中でハラハラさせる展開多く、手に汗握る。

主要キャラに子供だけでなく大人の方が多く、子供と大人が対等なチームな雰囲気も魅力。掛け合いも楽しい。
幅広い年代の仲間たちな構図作れているのは良作の証。
お調子者だが頼れるアル、知的で優しいが子供のような好奇心を持つ父スコット、
シェリルお嬢様に振り回される苦労人ながら結構強かな老執事ジェームズ、大人の男性たちがいずれも魅力的だった。
これにサブメンバーの軽薄トレジャーハンターのゲイルも加わり良きチーム。
特にゲイルは作風がお行儀が良くなりがちな中で唯一不良ぽくて一番人間味あり好き。
ゲイルが活躍する回は特に面白い傾向。

ナナミの他、シェリルお嬢様がわがまま娘ながら強かに成長してナナミの心の支えになったり、
最年少のトーマスが最初臆病だったのが最終的にポップばりの成長見せたり。
本作一番の見所はナナミ以上に、トーマスの成長ぶりにあり。
7話深海からの生還劇から、父ルコントからぶたれたのを「パパが初めて本気で怒ってくれた」と解釈する強さ。
9話で船を陸に渡らせる奇策立案して早速ペペロンチーノ号の軍師な頭角を現し、以降も要所で大活躍する。
北極海でゲストの子との交流などトーマス専用イベントも。
そんなトーマスを大人のアルが対等なパートナーとして扱う感じが良かった。極自然に主戦力扱い。

個別回では11話12話の事故で娘を亡くした家族に寄り添うエピソードが非常に良い。
時折コメディー回があったり、悪党に追われるアドベンチャーだったり、パニック物だったり、展開に幅がある。
全般的に、自然や命の大切さをさりげなく伝える良回が多かった。
全編通してのメッセージも分かり易い。

豪華声優陣。ナナミは90年代林原めぐみ全盛期のヒロインの一人。
池田秀一氏もさることながら、緒方賢一氏演じるアルの魅力が高かった。
楽曲はOPとEDが非常に良曲、流石は名作劇場。

【悪い点】
ロードムービーとしては移動の過程がやや分かりづらい。

最大の敵GMCと対峙していく流れになかなかならず、本筋から離れた寄り道回が多かった。
1話1話は悪くないんだけど、全編通してやや地味。
小悪党と戦うピンチはあれど、良くも悪くも子供向け番組的なお行儀の良さというか、盛り上がりはそこそこ。

ナナミちゃんは最初から完成されていて、成長という面は分かりづらかったような。トーマスの方が成長株。
ティコとの交流も最初から以心伝心でティコは喋らないのもあり、中盤母ティコとの死別もいまいち感情移入できず。
ジュニアとは一から交流する描写はあるも、以降あまり生かせていなかった。
ティコとは、ややタイトル倒れ。

終盤が微妙で全然盛り上がらない。
光クジラ生物兵器にしたらどれだけヤバいのかが分かり難く、単に光クジラいじめて可哀そう!では盛り上がれない。
ピンチからの逆転劇が、ナナミたち無関係に動物暴れて敵自滅なのも興醒め。
名劇唯一の悪役死亡なのは別に構わんのだけど、女幹部のベネックスにナナミたちに立ち塞がる敵役ぽさが足りなかった。
まあ悪党ではあるんだけど、企業家として普通に仕事してただけに見える。もうちょっと分かり易く憎たらしさが欲しかった。
そもそも終盤までナナミたち眼中にも無かったし、この物語のラスボスな印象が薄過ぎる。
この点はナディアのガーゴイルとかに比べて物語の盛り上がりに欠ける最大要因。

ラストの光クジラとの邂逅も、いささか宗教的な胡散臭さと説教臭さが鼻に付く。
まあテーマとしては正しいのは分かる、全編通して個別エピソードで描かれてきたメッセージとも合っている。
けれど、どうにも唐突感が拭えず。

【総合評価】7~6点
90年代前半の名作の一角。だとは思うんだけど、見返すと思いのほか微妙な面が目立った。
未来少年コナン、ふしぎの海のナディアと比べてしまうと、二段階くらい落ちる。
それでもこういう冒険浪漫アニメは貴重だし、水準以上の価値はある。
評価はとても良いと絶賛するには物足りない「良い」

【余談】
2021年公開のサウジアラビアのアニメ映画「ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語」の終盤が、七つの海のティコ終盤を彷彿。
好みの問題だけど、こういう天罰的な要素で決着するのは嫌い。

投稿 : 2023/01/22
閲覧 : 156
サンキュー:

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