てとてと さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
イロモノで好みが割れるけれど名作
ゴンゾの深夜アニメ全24話。ハードコアサスペンスで変態異能バトル系。
※作品データベース様より転載
【良い点】
「ハードコアサスペンス」や「大人の童話」というキャッチフレーズに相応しいだけの内容や雰囲気の魅力。
腐敗資本主義のディストピアで渦巻く変態的な欲望の世界を、ユーフォリアという異能存在を軸に見せてくれる。
アニメ作品としての確固たる作風を確立しているので、(視聴者の好みによるが)ハマれる人なら堪らない魅力がある。
魑魅魍魎渦巻くサスペンスではあるが、話の軸は王道かつ明快で分かり易い。
狙われるヒロインの15歳の少女を守って、変態どもと戦うお話。
主人公の33歳の戦場カメラマン・雑賀が渋くてカッコイイ、まだ幼く可憐な印象の神楽ちゃんが守られヒロインという王道。
ヒロインが物語の鍵となる存在というのもベタな王道。敵(水天宮ではなく悪徳政治家など)がベタな悪なのも分かり易い。
敵味方が変態ばかり、おもしれー奴らばかりで飽きさせない。(特に子安武人氏演じる奴の変態ぶりが凄い)
ユーフォリアは各々の欲望に基づく異能という設定が、バトルとドラマ両面で効果的に使われていて分かり易い。
異能バトルは地味で淡々としているように映るが、雑賀の異能の使い方や泥臭い攻防の駆け引きが巧い。
派手さは無いが、雑な力押しではないバトルなので中々の見応えがある。
後半の、敵ボスと思われた水天宮のドラマと魅力が抜群。
汚い資本主義の権化…と思われた水天宮の過去や生い立ちからの、秘めた激情と野望が圧巻だった。
水天宮と彼を慕う男たちの掘り下げが丁寧、また前半から随所に伏線も張られており、全編通して完成度の高いドラマがある。
終盤の雑賀と水天宮の対決で、双方が本懐を遂げて勝利者となるラストは驚きかつ、痛快極まる。
全編通して交差するドラマがきちんと関連し合っている事に気付かされる脚本構成が素晴らしい。
全編通してのテーマも良質、欲望を象徴するユーフォリアとの戦いを通して、生きる在り方を問うて見せている。
雑賀も欲望の変態性は敵と変わらないが、ジャーナリストとして自由を求め、その自由は他者の自由を奪わない、守る事であった点で一線を画している事が分かり易く伝わる。
だからこそ彼は主人公の資格があり、変態であると同時に高潔でもある。
それと、資本主義風刺でありつつ、この手の作品にありがちな思想臭さ説教臭さで興醒めになりにくい点も好評価。
本作は別に「無粋」な反資本主義思想の話などではない。
水天宮がお札燃やしても経済崩壊しなくね?とかのツッコミは無粋、本作の本質に関係ない。
ドラマの主軸は資本主義云々どうでもいい、あくまで雑賀や神楽や銀座そして水天宮の個人ドラマなのだから。
中盤の総集編が何でも金額出してくる演出で笑える。センスある総集編。
キャラクターは雑賀と神楽も悪くは無いが、どうしても水天宮の方が魅力的に映る。
水天宮もさることながら、普通の作品ならモブであろう部下たちのドラマも非常に良かった。
ヒロインとしては神楽よりも、ヤンデレ女刑事の銀座さんが次第に魅力を深めていく。
とはいえ、薄幸の守られ系で健気な神楽ちゃんもやはり可愛い。
作画はあまり良くはないが本作特有の雰囲気は出せており、好意的。
アダルトなグロさや、あまりアニメ的ではない泥臭いバトルシーンなど、綺麗ではなくても力を感じる。
音楽はOPの「グラビアの美少女」が印象的。
【悪い点】
前半の展開が地味かつワンパターン気味。
変態とバトルを繰り返す、まあ変態がおもしれー奴らではあるんだけど…
中盤もややダレる感じも。
水天宮の魅力爆発する陰で、雑賀がどうしても霞む。
ヒロインも神楽ちゃん魅力が乏しいわけではないが、中盤以降アクティブに魅力を発揮する機会が乏しかった。
結局守られ系の子供の域を出られず、もう少しヒロインとしての存在感があればと惜しまれる。
作画が低調。
特有の魅力は出せているが、綺麗だったに越したことはない。
異能バトルも派手な盛り上がりが乏しい。
【総合評価】8~9点
かなり好みが割れそうだけど、ゴンゾ作品でも上位に入る名作の一つ。
近い時期のゴンゾ作品だと「ソルティレイ」の方が万人受けしやすい名作だけど、正直こっちの方が好き。
「大人の童話」という看板に偽りなし。めっちゃ面白いアニメ。
評価は「とても良い」
最高評価にするには粗も多いので。
本作もまた平成時代を象徴する作品の一角といえそう。