じん さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
巨匠が拓く、CGアニメ新時代
井上雄彦。日本の10本の指に入るほどの画力と構成力を持つ漫画家だと個人的に思う。精緻なモデルのキャラとドラマを生み出す構図で言えば日本トップなのかもしれない。
世代ではないが原作を読んで知っており、評判が素晴らしいと聞いたので公開から1ヶ月遅れて鑑賞してきた。
結論。CGが作者の頭に追いついてきた、というよりCGの表現が作者によってより高いステージに昇華されたと思う。これを契機に、日本アニメのCG新時代が訪れるかもしれない。
かつて大友克洋巨匠がAKIRAで漫画だけでなくアニメの表現までも変えてしまったように、顔や自由なカットによるアニメ的な表現を用いながらCGによるカメラ切り替えによってかつてない迫力を出しているのだ。
彼の漫画では試合中の臨場感を集中線や動きを表す輪郭によって表していたが、画角を的確に使い分ける圧倒的な撮影技術と24fpsに挑戦する人間に忠実なモーションでそれが表現されていて思わず唸った。
これは撮影技術や構図を研究し尽くしてきた井上雄彦にしかできないのだ。原作が動いているのではない。動かし方を知っているから原作ができた?いよいよ何も分からなくなってきた。
因果関係がむしろ逆で上の考え方を思わずしてしまう根拠は映画体験についても巨匠はよく知っている気がするからだ。{netabare}目を覚ませるボールのバウンド音、なるほどこれは確かに蘇らせると言わしめるほどのスウィッシュの音にこだわりを感じる。試合をしているかのような音源位置の躍動も、{/netabare}従来までありえなかったほどの臨場感だ。
物語や声優は、及第点だと思う。声優の高齢化やアニメのメディアとしての変革にやれることを一生懸命に探し回った結果だと思う。{netabare}途切れがち、セリフが薄い{/netabare}といった意見はもちろんわかる。
撮影技術の進歩に貢献したのは近年ではエヴァンゲリオン(無機的なモーションのアニメーション風撮影)や新海作品(背景の深化)などだと記憶しているが、これだけ優れた作品が出てくると人の動きや追い方に関してもCG優位な時代が来ていると言えるのかもしれない。