フリ-クス さんの感想・評価
3.5
物語 : 4.5
作画 : 2.0
声優 : 4.5
音楽 : 2.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
真相はマズいのでウソつきに極振りしたいと思います。
アニメ好きの方なら誰しも一本ぐらいは
『個人的には好きなんだけど、ぱっとしないからおススメし難い』
という作品をお持ちなのではと思います。
(そんなもんねえよ、という方、ごめんしてくださいまし)
本作『虚構推理』は僕にとってまさしくそんな感じのアニメで、
ほめるべきところは少なく、
あのねお前ね、とセッキョ-したくなるところがやたらと多い。
そのくせ、気になる。はっきり言って『好き』。
という、ダメ女にほれるバカ男的立ち位置で見ている作品であります。
まさかの二期開始ということで、
個人的にはとってもウレシイのでありますが、
おそらく、また『ぱっとしない』アニメになることが充分に予想されます。
というか、
カントクや制作会社にもモンダイがあるけれど、
お話の構造的に『ぱっとさせにくい』作品なんですよね、これって。
ストーリーがどうこうという以前の問題として、
そもそも作品のタイトルからして、
いわゆる『タイトル詐欺』みたいなものなんだもの。
登場人物は誰も『推理』なんかしちゃあいません。
じゃあ何をしているかというと、
カンタンに、そして身もふたもない言い方をすると
ウソをつく。
人間界ともののけたちの世界をまたにかけ、
さまざまな事件を口先八丁で解決して回るという、
言わば、うそつき『もののけ姫』のお話なのでありますよ。
ただし、ただ性格が悪いからウソをついているとか、
その場をしのぐために出まかせを並べ立てているわけではありません。
そこには、ちゃんとした『理由』みたいなものがあるわけで。
本作の主人公(ヒロイン)の岩永琴子は、
人間ではあるのですが、わけあって、
もののけ・妖怪の類の『知恵の神』みたいなことをしております。
人間界ともののけの間に起こる問題や疑問、
あるいは、もののけ間におこるトラブルなんかを解決する、
いわば『駆け込み寺』みたいな存在と考えていただければ、だいたい合ってます。
なにせ、もののけたちの『知恵の神』ですから、
現実の人間界で何が起こったのかという『真相』はすぐにわかります。
といっても、
琴子自身になにかものすごい能力があるというわけではなくて、
事件現場の地縛霊に聞いたりするだけなんですが。
ただ、その明らかになった『真相』が、
事件解決のためにはいささか都合が悪いものだったりするわけです。
あ~、これ、絶対アイツ納得しね~だろ~な~、とか、
うわ、これ、明らかにしたら余計に話がややっこしくなるじゃん、
みたいな感じですね。
(まあ、リアルでもよくある話っちゃよくある話です)
というわけで『ウソをつく』。
と言っても、相手もその事件に関する情報をもっているわけですから、
思いつきとか出まかせではダメなわけです。
きちんと下調べをしたうえで、
相手に明らかになっている断片をつなぎ合わせ、
辻褄を合わせつつ、
相手が納得できるような『真相っぽいもの』を『デッチあげる』。
そういうのが、本作のキモというか、
やってることのほとんど全てなのであります。
新しいっちゃ新しいし、着眼点はすごくいいのと思うのです。
むかし流行ったシドニイ・シェルダン作品のように、
アクションとかではなく『知略』を楽しむタイプのお話ではあるまいかと。
え? なんかフツーに面白そうじゃん。
なんて感じていただける方もいらっしゃるかと思います。
いや、確かに着想なり設定なり話の運びなりはすごく面白いんです。
ほんと、面白いっちゃ面白いんですが、
そういうお話の構成上、
どうしても『会話劇』が中心で絵面的に『ジミ』になっちゃうんですよね。
そういう原作をアニメ的に面白くするためには、
作画と演出に力を入れて視覚的に惹きつけるしかないんですが、
その作画と演出がブレブレで、
この際だからはっきり言っちゃうと『しょぼい』んです。
いやほんと、しょぼ過ぎて、人さまにおススメするのをためらうぐらい。
制作は、あたりはずれの落差が激しい、ブレインズ・ベース。
やるときはけっこうやる会社なんですが、
こっちはダメな方のブレインズ・ベースさんですね。
力の入ったカットは、けっこう力が入ってます。
妖怪の類はおどろおどろしく描かれ、ちゃんと深夜アニメしているんです。
ただ、そのテイストが安定しないんですよね。
できそこないの『ゲゲゲの鬼太郎』や『ぽんぽこ』みたく、
いやこれ深夜アニメじゃなくてジュニア向けアニメのテイストでしょ、
とツッコミたくなるカット・演出が散見され、
どこに焦点を当ててモノ作りをしているのか見当もつきません。
もう、そこのあたりで世界観がぐりとぐら。
作品の性質上、会話劇中心でアクションはほとんどないのですが、
たまに出てくるそれは、
なんかもう語りたくないな的なアレであり。
唯一、第一話だけが『けっこう見られる』レベルなんですが、
それは典型的な『第一話サギ』。
そのイメージで続きを見ると、見事にうっちゃられてしまいます。
そして致命的なのが『話が長い』ということ。
(これ、他の方のレビュ-拝読してても、ほぼ共通意見かと)
第一期は全部で十二話。
その中で三つの事件を解決しているわけなのですが、
三話Aパ-トの途中から最終話である十二話のラストまで、
ほとんど10話分の尺をまるまる使って
『鋼人七瀬』という一つのお話をやっちゃってるわけです。
一話、二話と、ポンポンとリズムよく話が進んでいくので、
お、このアニメ、けっこう面白いんじゃね、
なんて思っていた視聴者も、さすがに飽きたりドン引いたりするんですよね。
話そのものはよく練られていて面白いのですが、
いかんせん『長い』、そしてもちろん『テンポが悪い』。
第七話のサブタイなんて「鋼人攻略戦準備」だもんなあ。
『準備』で一話まるっとなんて、
サブタイだけで視聴者が引くと思わんかったんか、おい。
そもそもメインの『鋼人七瀬』事件はそこまで重厚長大なお話でもなく、
話の合間合間に物語の設定解説みたいな話、
・琴子のパートナ-である九朗が不死になったヒミツ
・事件の裏にいる六花との関連性
みたいなものが差し込まれて、解決が引き延ばされていくわけです。
そういう
時系列を入れ替え、
少しずつ情報を出して全貌を明らかにしていく
という演出自体、古臭いし、そもそも意味がない、と拙は思います。
時系列をぐちゃぐちゃ入れ替えるのが『カッコいい』なんて、
いったい、いつの時代の感性なんだよ、とか強めに言ってもみたり。
原作がどうなってるのかは読んでないのでわかりませんが、
鋼人七瀬事件以前のできごとは
アニオリのエピなどを加えて事前に数話かけて流してしまい、
その分、七瀬をコンパクトでリズムよく進めた方が、
視聴者も集中できて楽しい作品になったのではと愚考する次第です。
あと「ひどいなあ」と思うのが、OP・EDのカット割り。
曲自体はぜんぜん悪くないのですが、
流れている映像がひどすぎて、作品本編まで薄めちゃってる感じがいたします。
そもそもOP映像というのは、
その作品の世界観を簡潔かつ魅力的に語る『招待状』である『はず』なんですよね。
(OP詐欺もままありますが、それは置いといて)
ところがこの作品、OPをいくら眺めても、
バラバラなカットがぐちゃぐちゃに並んでいるだけで、
なにがやりたいアニメなのか、全然、これっぽっちもわかりんせん。
EDなんかもっとひどくて、
琴子と九朗が、ドレスとタキシードで踊っているだけ。
お話が地味だからEDぐらい明るく華やかに、とでも思ったのでしょうが、
本編の世界観ぶっちぎっていますし、
そもそも『華やか』の具現がドレスとタキシードって……あんたは昭和のおっさんか。
というわけで、僕のおすすめ度は残念ながらBランクです。
お話は、ほんと面白いんです。
細部まで設定や伏線がほんとによく練られていますし、
オチも素晴らしいものなのですが、
いかんせん『アニメとしての完成度』はBクラスとしか言いようがなく。
胸を張って万人におすすめできるレベルにはありません。
萌え成分はほとんどなきに等しく、
血沸き肉躍るようなアクションなんて別の惑星の話ですし、
目の覚めるような美しい映像なんて、1カットも存在いたしません。
え゛、ジュニア向け? とか思ってしまうカットと、
シリアスなカットが入り乱れて、
作画や演出のテイストそのものが不安定な神様状態でもありますし。
そして、一つのお話が長い。
ムダに長い、あまりにも長い。長すぎて死にそう。
ただ、そういう作画や演出、シリーズ構成の『しょぼさ』も、
見慣れてくると、あまり気にならなくなってきます。
(少なくとも僕はそうでした)
しょぼさも味のうち、なんてモノすごい理屈で割り切ってしまえば、
それなりに楽しめる作品になってきます。
{netabare}
とりわけ、九朗と六花の『未来決定能力』のアイディアは秀逸。
この、便利そうで実はそうでもない能力のおかげで、
作品の絵面にも、物語の構成にも、ぐっと奥行きが生まれています。
{/netabare}
あと、基本『会話劇』が中心の作品なのですが、
その『会話』を成り立たせている役者さんのお芝居が、すごくいいんです。
これは一聴の価値アリではあるまいかと。
琴子(ヒロイン)役 鬼頭明里さん
九朗(パートナ―)役 宮野真守さん
紗季(九朗の元恋人)役 福圓美里さん
六花(九朗の従姉で黒幕)役 佐古真弓さん
映像がしょぼいので気がつかない方が多いかも知れませんが、
この四人が織りなすドラマ、お芝居としての完成度は『すごい』です。
泣いたり叫んだりわめいたりというシ-ンがほとんどなく、
全体的に抑え気味、適度に『間』をもたせた、淡々としたお芝居なんですね。
ですが、その淡々とした語り口調の中で、
その台詞の奥にある感情や心の『揺れ』『ひだ』みたいなものが、
ものの見事に表現されています。
特に、紗季役を演じた福圓美里さん。
作品の主要キャラではほぼ唯一の『一般人枠』であり、
感情の波が一番大きい役どころなんですね。
そこのところを、他の役者さんに合わせた抑え気味のお芝居で、
時にコミカルに、時にシリアスに、そして時にはエモく、
バランスをとりながらうまく演じきっています。
これぞ役者の真骨頂。叶うことならば舞台劇として謹聴したいレベルかと。
あと、この四人の中で、佐古さんだけは事前に存じ上げなかったのですが、
調べてみたところ、文学座に二十年も在籍し、
外画吹き替えで数えきれないほど主演を張ってきたベテランさんなんですね。
お父さんは、演劇集団円の設立から参加した、故・佐古正人さん。
(血統書付きなんだ)
佐古さんのおかげで、
ヘタをしたら『アタマおかしい危ない女』にしかならなかった六花が、
ミステリアスで思慮深い、そしてかなりヤバい、
素晴らしくかっこいいキャラとして立ち上がりました。
実を言うと、拙はこの六花さんが大のお気に入りで、
六花さん目当てで二期を視聴するところが無きにしも非ずかと。
(いえ、別に萌えちゃいませんが)
ほんと、ほめるところってそのぐらいかなあ……
最初に言ったように、僕的には『好き』な作品なんですが、
その『好きポイント』がけっこうマニアックなところに集中してるし、
欠点がすごくはっきりしているので、
どんなに推したところでダメな方にはまるっきりダメだと思います。
ムリ推しするような作品でもないですしね。
ちなみに、本作監督の後藤佳二さんって、
これまで六本のテレビアニメを監督されている方なんですが、
あにこれでの人気ランキング最高位は、
二十年前の監督デビュ-作『キディ・グレイド』で、3961位です。
それ以降、一度も4000位以内に入ったことがなく、
直近の監督作だった『エンドライド』(2016年)は7076位なんですね。
もちろん、あにこれランキングがなんぼのもんじゃい、とも言えるし、
アニメの評価って、監督『だけ』の責任じゃないわけですが、
さすがに六本もやって、ギリ4000位以内が一本だけってのはなあ……。
で、本作はなんと841位!(2023/01/09現在)
これって、すごく申し訳ないんだけど、客観的に言って、
カントクや制作の手柄じゃなくて、
純粋に原作が面白いのと役者さんの力だと考えるのが妥当みたいな気がします。
これはほんとうに100%拙の主観であり、
誰かを貶めてやろうなんてつもりは全くありませんが、
もうちょっとマトモにつくれば
充分に300位以内が狙えるポテンシャルの作品だと思うんですよね。
惜しい。もったいない。嗚呼口惜しや。
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ちなみに、二期も総作監が変わっただけで、
本作とまったく同じ制作スタッフでお送りすることになっております。
一話見たそす。いや、見たんだけどさあ……
・OP、相変わらず、何がしたいアニメなのか皆目わからず。
・本編開始から丸々三分、モブがぐだぐだと設定を説明するだけ。
(番宣じゃなくて本編なんですよ?)
・バトル、激しょぼ。
おまけにバトル中、モブが九朗の能力をぐだぐだ解説。
もちろん、会話にのっけて設定を説明するのは他でもやってますよ。
確かにやってはいるんだけどさ、
ここまで『あからさま』かつ『長い』かつ『つまらない』のは、
さすがにちょっと見たことないかなあ。
というか、こんなに『これまでのおさらい』をするなら、
サブタイに13話(一期からの通番)なんてつける意味、なくない?
ちなみに、コンテも演出も監督本人なんだけど。
まあ、このあと雪女で悠木碧さんが出てくるみたいだから、
続きは2nd seasonのレビュ-にて。
もしも途中で心が折れて描くの挫折したら、ごめんしておくんなまし、