nyaro さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
虚業の制作者、演者、ファンの心理の歪みを描いた傑作です。
心理系のサスペンスとしては、アニメのみならず映画や小説含む創作物の中で最高峰といっていいでしょう。日本のみならず、欧米の特に映画関係者に衝撃を与えたようです。
真偽は定かではないですが、本作をそのままパクったと言われるような映画もあります。映像のオマージュを明言している作品も存在します。
アイドルから女優という転身による不安。女性を切り売りして行くという葛藤。自分のやりたい事とやっている事のギャップ。自分が誰だかわからないアイデンティティの喪失あるいは分裂。そういう芸能界に生きる女性としての葛藤とファン心理、ストーカー心理を描いた素晴らしいストーリーでした。
鏡の多用による2つの自分という演出が、心をざわつかせます。今敏独特の画面・色合い、何よりもキャラデザでアニメなのか実写なのかわからなくなるような感覚になります。自分の存在の不確かさというテーマによく合っていました。
ヌードシーンも多々ありますが、本作においては女優を描いていますので必然に感じます。感じますが、同時に女優のヌードで安易な作品作りをしているような、あるいはそれを喜んでみている我々大衆心理まで、描いている感じです。アイドルファンの醜い側面からの描き方もリアリティがあります。
そして、そのヌードシーンやレイプシーンの評価・人気と清純のギャップがヒロインそしてファンの歪みの原因になってゆきます。
本作は1997年。1983年とちょっと離れてますが、松田聖子さんがファンに鉄パイプで襲撃された事件があったのでそこからの着想もあったのでしょうか。
芸能界という虚業を、制作者、演者、ファンの3方向を心理的な裏側から見たとき、どれだけ歪んだ世界なのかという描写が素晴らしい作品でした。
この映画が81分ですか。信じられないですね。濃密すぎて見終わったあと、疲労で脳みそがクラクラします。息をするのを忘れるからでしょうか。
キービジュアルのデザインのセンスもすごいですね。ジグソーパズルで表現されたアイドルでもなくヌードでもなく…残念ながら「パーフェクトブルー」の意味が考察しきれてません。ブルーの心理は憂鬱ですが、それだけでしょうか?ブルーフィルムならポルノ画像の事だし…改めて考察してみます。
それとラストの一言ですね。これは見た人各自が考察すべきでしょう。
それにしても、素晴らしい作品です。今敏氏。本当におしい人を失いました。改めて今回視聴しましたがいや、良いですね。本当に世界で認められておかしくない作品だと思います。
私は氏の最高傑作は「パプリカ」かと思ってましたが、初監督のこの作品が最高傑作だったかなあ、という気がしました。そして「妄想代理人」は本作の焼き直しな気もしました。