nyaro さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
テーマが良い。「東京に原発があったら」と言う想像力が大事。
この作品は評価が難しいです。作者の持っている原子力発電所への警告とか、国を守るとは?生きるってどういう事?みたいな事を描こうとしているのは、非常に良いと思います。一方で、マンガ・アニメとしての出来は、まあまあと言うところです。
物語の下敷きとしては「東京に原発を」という広瀬隆氏の著作に触発されたのでは?と思われます。そんなに原発は安全だというなら地方じゃなくて東京に作れというドキュメンタリーです。
また「ナウシカ」の影響を非常に強く感じます。前日譚のような感じで、放射能耐性をもつよう遺伝子操作された少女というのは「ナウシカ」(コミック版)そのままです。つまり「オンユアマーク」ですね。
東日本大震災の2011年以前の2008年に連載開始をした先見性も素晴らしいと思います。原発反対派は事故率の統計知らないから科学的に考えないとか、経済を考えたらレアケースのために騒ぐのはバカバカしいとか、頭がいいと言われている逆張り系の言論周辺の人は言います。
が、1979年のスリーマイル、1986年のチェルノブイリ、2011年の東日本大震災と、わずか32年の間に破局的な原発事故が3回起きています。それも先進国で。ほぼすべてヒューマンエラーです。確率論って…アニメ批評に思想を入れても仕方が無いのでこれ以上いいませんけど。
ただ、本作の原作者がこのような話を青年誌で描いたのは、素晴らしいと思います。北斗の拳みたいな単なるディストピア設定ではなく、ストーリーの中に明確に原発についてのメッセージがあったと思います。
女子高生設定、制服で歩き回るのはどうかと思います。ただ、一応、寿命についての言及はあった気もしますので、男の生存確率が低い上にあまり成長できないという意味かもしれません。その意味では彼女たちにとっての死出の旅のような雰囲気も結論ではありました。人並みの学生生活を味わうような意味だったら、いい設定かもしれません。
携帯する武器や移動手段などちょっと無理はあると思います。遺伝子操作についても誇張しすぎだし、設定的に疑問もあります。
東京の放射能を利用するテロは、偏西風の関係で多分効果的でもないでしょう。
エピソードは、政府や敵対勢力の思惑とバトルという感じで、その動機とか方法、兵器などは青年誌的なドンパチです。その部分の出来は正直良くありません。
ですが、放射能の中に住む人間の営みとどうかかわるかという、ヒューマンストーリーを中心に人間を描こうとしている部分はなかなかいいと思います。
コッペリオンたちの正義感の部分は見落としたかもしれませんが、遺伝子操作?動物好きはそうみたいですね。この辺はSFとして一つの面白い味わいポイントになりそうです。
総評すると、この作品の存在自体は評価したいと思います。東京に原発があったらどうなる?という想像力を読者・視聴者に提示する。そのための引きだと思うと、女子高生3人も悪くありません。
SFとしての出来はそうでもないですが、ヒューマンストーリーやキャラ造形は悪くなかったです。
エンタメとしても、人間対人間の部分が青年誌的なストーリー展開になっているので、普通以上には面白いです。本当なら結末を見届けたいところですが、13話でもかなり見ごたえはありました。
作画は必要十分以上だと思います。キャラデザに個性がないので萌えにくいのと、若干サブ・モブに魅力がないのが欠点ですけど。
過大評価はしませんが、どちら派かはさておいてこのテーマを考えるきっかけを訴え続けるのはSFの役割だと思います。