太郎 さんの感想・評価
2.8
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 2.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
チート薬剤師の異世界ファンタジー
タイトルとか絵柄から、異世界の薬局を舞台にしたゆるふわ日常アニメかと思って見たら、割とハードな展開もある王道ファンタジーものでした。
いわゆる文化や医療レベルが未熟な中世ヨーロッパ風の異世界で、最先端の現代知識を備えた転生者が無双する話なんですが、知識だけで無双できるほど甘くないのはリアリティがある。このコロナ禍の時代に、疫病と闘うことの難しさを表現しているのは素晴らしい。いい時期にアニメ化したと思う。
キャラは無難な正統派。万人受けするけどその分印象も薄い。それが良いとか悪いとかいうことではなく。登場人物の名前は覚えにくいけど、人数は少なめなので、誰が誰だかわからなくなるほどではない。ただ、エレンが魔法の先生という設定だけは必要なかったと思う。活躍はほとんど助手としてだし。
トラブルや困難が起こってそれをチート能力で解決していく王道ストーリーは分かりやすい。ほどよくファンタジー要素もあり、世界観が好きな人には楽しめる。
ただ、都合のいい魔法とか特殊能力を主人公に盛りすぎたのは悪手。薬の素材を調達する苦労がなかったりしてせっかくのリアリティが損なわれている。急にチート級の能力を身に付けた主人公をあっさり受け入れる周りの人達にも違和感。裏を返せば良い人ばかりなので、それはそれで微笑ましくていいんですが。
あと薬剤師が万能すぎて実態とかけ離れている。主人公はただの薬剤師なのに、診察や診療、外科手術など医者の仕事までできちゃう。というか医師が1人も出てこない。現実世界でもそうですが、医師がいると薬剤師はただ薬を出すだけの存在になってしまうので、薬剤師を活躍させるために物語から排除したのでしょうが、医師がいないのは非現実的だし、なんでも薬で治そうとするのは無理がある。
異世界なのに、登場する病気とかウィルスの種類が現実と同じというのも都合が良すぎる。それなら異世界じゃなく過去にタイムスリップする話でよかった。せめて似たような違う病気にするとか、一捻りあればもう少し盛り上がったと思う。異世界にしたことで薬学と魔法を矛盾なく共存させなきゃいけない点も重荷だったと思う。怪我なんか魔法で何とかなりそうだし。
主人公が10歳というのも必然性がなく、スペックに対してあまりに若すぎて不自然。コナン君みたいに頑張って誤魔化したりすればネタになって面白いけど、隠すこともなく普通に振る舞ってる。そしてそれを疑問に思わない周りの大人たちも都合が良すぎる。作者が小学生を主役にしたかっただけとしか思えない。
題材がいいだけに、他の方のレビューにもある通り細部の作り込みの甘さがもったいない。個人的には最後までそこそこ楽しめましたが。