ようす さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
世界。日常。それは、たくさんの人の心の重みによって成されるもの。
2022年公開の新海誠監督による映画作品。
前作「天気の子」が私の中ではあまり好きになれなかったので、
今作は劇場へ行くかどうか迷うところはありました。
でも高評価の感想を目にするとやっぱり気になって、
ようやく時間が取れたので劇場で観てきました。
結果、やっぱり劇場で見てよかったなあと思います。
美しく、迫力のある映像を大きな画面で味わえたこともそうですが、
今回は音をきちんと味わえたことが一番の満足ポイントでした。
120分ほどの作品です。
● ストーリー
岩戸鈴芽(いわと すずめ)は九州で暮らす女子高生。
学校へ向かう途中で廃墟を探す青年・宗像草太(むなかた そうた)と出会う。
草太を追いかけて向かった山中の廃墟で、
鈴芽は一つのドアを見つけた。
扉の向こうには不思議な空間が広がっていたが、
そこに入ることはできない。
その扉は「災いの扉(後ろ戸)」。
扉の中から災いをもたらす“ミミズ”が姿を現す。
謎の猫のダイジンによって椅子に姿を変えられてしまった草太と共に、
日本各地の開かれた後ろ戸を締めながら、ダイジンを追いかける。
ミミズは災いの予兆。
ミミズが姿を現し、その土地に倒れこむと大きな地震が発生する。
ミミズが倒れる前に扉を閉じれば、
災いを防ぐことができる。
椅子に姿を変えられた閉じ師の草太を放っておけなくて、
鈴芽も一緒に日本各地を旅していくお話です。
舞台は現代日本ですが、
ファンタジー色をかなり強く感じました。
閉じ師と鈴芽以外には見えないミミズという存在、
椅子に姿を変えられた結果、しゃべる自由に動き回る椅子、
ダイジンと名付けられたしゃべる猫。
でも根っこはちゃんと現代日本に下ろされていて。
これから日常生活の中で不思議な現象を見たら、ミミズの予兆?と思ってしまうような、ファンタジーが日常の中にうまく織り交ぜられていると思える演出でした。
鳥が大量に移動していたりすると、
なんだあれ?と思いはするけど、そこどまりなところとか、
そんな些細な日常の風景をうまく活かしているなと感心しました。
今回は災い=地震という形で現れます。
地震のアラーム怖い。
また、鈴芽が東日本大震災の被災者であることから、
東日本大震災の記憶に触れられるシーンもちらほら。
● キャラクター
鈴芽は明るく優しい女の子。
唐突な状況に巻き込まれても引くことを知らない、
前に突き進んでいく強さと行動力がすごい。
旅先で出会う人たちに恵まれ、助けられていくのは、
彼女の社交性の高さも関係しているのでしょう。
作品の中で髪型や服装が変わっていきますが、
どれも可愛くて、そういう変化が飽きさせない一助となっていました。
鈴芽が東日本大震災によって負った心の傷と、
鈴芽に寄り添ってきた叔母の環(たまき)。
環の抱えてきた想いと歩んできた人生もまた、
この作品の大きなテーマ。
本当ではない親子。
自分の人生を費やして鈴芽に寄り添ってきた環のことを思うと、また別の物語が浮かび上がってくる。
入場者プレゼント第3弾として環のスピンオフ小説をいただきましたが、
それを読んでいると彼女の優しさや葛藤、苦しさがよくわかります。
私が同じ立場になって、
果たして最後に自分の選択を幸せだと言えるかどうか…
そうする以外の選択肢は考えられなかったとはいえ、
途中で投げ出すことのなかった環を立派だと思います。
草太の友人として登場する芹澤朋也(せりざわ ともや)はいい味出してました。
チャラいやつなのかと思ったら、
巻き込まれ体質の面倒見のいいお兄ちゃんでしたねw
良い意味で空気を読まず、
どんな状況にも怖気づいたり流されたりしない度胸は見習いたい。笑
● 音楽
新海監督の作品に三作品連続で携わってるRADWIMPS。
前作の「天気の子」ではお腹いっぱいに感じていましたが、
今作ではとてもいい感じに馴染んでいました。
今までの中で一番完成度が高かったんじゃないかな。
新海監督がRADWIMPSに求めていたのはこの感じだろうな、と思えるほどに。
使用される挿入歌が減っていることも個人的には良い印象。
楽曲に使用する編成が増えた?
専門的なことはよくわかりませんが、
厚みを増した曲が、
少ない曲数でも十分な存在感を示してくれました。
今作でRADWIMPSが新海監督作品に携わるのは最後だそうですが、
これは気持ちの良い終わり方^^
【 主題歌「すずめ」/ RADWIMPS feat.十明 】
【 主題歌「カナタハルカ」/ RADWIMPS 】
この2曲の完成度の高さはあっぱれです。
やっぱり作品を観てから聴くのが一番好きになれますね^^
また、今回は「ルージュの伝言」「バレンタイン・キッス」などの懐メロが多用されていたのも私は好きでした♪
最近のレトロブームにうまく乗っかった?
● まとめ
見てよかったと満足しています^^
作画の美しさはさすがです。
だけど、新海監督の「秒速5センチメートル」や「言の葉の庭」のような作品もまた見たいなあと期待しちゃいます。
「君の名は。」以降の作品が広く浸透している今では、やっぱり難しいのかな。
当たり前のように過ごす日常は、当たり前ではない。
そこにある幸せも、ずっと続くとは限らない。
私たちは失って初めて、
当たり前だと思っていた日々のかけがえのなさに気付く。
立ち止まったり嚙み締めたりしながら、
今ある当たり前とそこにある幸せが少しでも長く続きますように。