キャポックちゃん さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
パロディするなら、こんくらいガチでやれ
「パロディするなら、こんくらいガチでやれ」---自信を持って、2022年秋アニメのベストワンに推せる快作だ。
日活無国籍アクションよろしく、コスプレとガンプレ(イ)のボーダーが華麗に取っ払われ、秋葉原を舞台にメイドたちが殺し合う。これを人間の俳優が演じると、どうしても人臭さが漂う。鈴木清順ですら、その弊を逃れるのに書き割り風の人工美を必要とした。ところが本アニメでは、「萌え萌えキュンキュン」のメイド姿が強烈無比の脱臭剤となって、人間社会の常識など気にせず血みどろアクションを堪能できる。
ベースがパロディなので、動機付けのような細かな心理描写を抜きにし、設定だけでストーリーを展開する。ただし、オリジナルとは異質な要素を混入することで作劇のパワーを方向転換するというパロディの本質は、踏み外していない。
パロディとは、ふざけることではない。『あしたのジョー』のパロディ(第3話)では、原作よりも遙かに激しいファイトが大真面目に繰り広げられ、見ていて熱くなる。第6話、嵐子が「このラーメンがあることで、自分はアキバでやっていけます」と言い、愛美が「何でもかんでも新しうなればええってもんじゃなぁ。変わっちゃいけん、変えちゃいけんものがあるじゃろ」と返すシーンでは、高倉健や菅原文太の姿が脳裏をよぎり、涙が出てきた。
私が特に好きなのが、無数の野球アニメをパロッたエピソード(第8話)。死体を使ったギャグが古典落語の大ネタ「らくだ」の「かんかんのう」を彷彿とし、不謹慎ながら吹き出してしまった。
泣いたり笑ったりできるアニメは少なくない。泣きながら笑えるアニメもある。だが、笑いながら泣いてしまうアニメには、久しぶりに巡り会えた。