nyaro さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
少女は先に大人になる。少年時代という世界は破壊される。
新劇場版序については、シンジを通して自分が何者か、自分が何をすればいいのか、どこにいるのかがわからない14歳のみならず、バブル期以降の日本人の気分を象徴していた、という印象を持ちました。家族の喪失、大人と子供の溝。設定考察では見えてこないものが描かれていたと思います。
本作、破も当然その続きではありますが、ここではアスカとレイ。2人の少女です。天才型と秀才型ともいえるし、陽と陰ともいえる対照的な2人。この2人とシンジとの交流がテーマになりました。
同級生の少女たちと葛藤を持ちながらも、次第に心を通わせる。アスカとは性的なニュアンスもありました。
2人のエヴァに乗る動機の部分は新劇場版だとちょっと表面的でした。もちろん承認という点は描けていましたが、ちょっと肉付けが物足りなかった気がします。新劇場版の序破は特にアスカの掘り下げが説明不足な気がします。
冒頭、新キャラのマリは5号機を破壊したことを「自分の都合に大人を巻き込むのは気おくれする」と言っていました。つまりエヴァとは「大人の都合」あるいは「大人の世界」と解釈することができます。
マリの獣は分かりやすい肉食系女子のアナロジーに見えます。アスカはエヴァに取り込まれます。このときのアスカのプラグスーツはほぼ裸でした。あのシーンって性的なニュアンスが色濃くあった気がします。デート(あるいは行為)の前の身支度をしている雰囲気でした。髪もいじってたし。レイはシンジをエヴァに乗せないために、自ら特攻します。レイのエヴァは「食べられて」敵側に取り込まれて、シンジに襲い掛かります。
ここは強烈に性的なアナロジーを感じます。3人の少女たちは様々な形で、シンジを置き去りにして「大人」になる、と見えます。つまり、本作「破」は少女たちが先に大人になって、おいて行かれた14歳の少年の話ということだと思います。
それがつまり、純粋だった少年時代の終わり、つまり世界の破滅です。セカンドインパクトとかサードインパクトは成長段階の事とみることができそうです。
思春期の性的な成長(性行為そのもの、または、同級生の少女が先に性行為をしているという事実)、あるいはエヴァにのる大人の社会に自分の意思で足を踏み入れる、親離れなどがサードインパクトかなあ、という気がします。(Qに至って、ニアサードインパクトという名前になっていました。つまり、正式なサードインパクト=実際の成長=性行為ではないという定義になります。それが後付けなのか、本作時点からの意図なのかはわかりません。本作の描写から言って、実際レイとはなんらかのふれあいがあったとみるべきか、あるいはこの時点で…というのはQで考察します)
序、破の並びで比較すると、なんとなく、破は、心を通わせ始めた少女たちとの交流を楽しんでいたのに、少女たちが先に大人になる、という気がします。
アスカの登場時の子供っぽさと、最後の出撃前の大人っぽさのギャップ。最後のミサトへのお礼というのが明確に描かれていました。もちろん、性的な事ばかりでなく、少女がわの視点に立った場合、大人世界=社会的な役割を果たす、という意味にもとれます。
レイもシンジのために…という自分の意思でした。マリは初めから大人を利用する気満々です。マリについてはまた次作以降で考察します。
まあ、エヴァでの考察は厳密性を求めると、何かを見失いそうなので、これくらいにしますが、少女のほうが先に大人になる。その先を見ようとすると世界=少年期は崩れ去る。そういう話だったと思います。
この世界を虚構の世界、つまり2Dと見ることもできますが、どうでしょうか?そちらの意味もあるかもしれませんが、あまりシンエヴァやまごころのラストで、「アニメを卒業」に引っ張られないほうがいいかもしれません。庵野監督がそちらを意図したとしても、エヴァファンはそこに乗っかったのではなく共感したのは「14歳の気分」だと思いますので、そこは忘れたくないです。
また、エロスの視点は重要だと思います。TV版と「AIR/まごころを、君に」も参考にしてますけど。
改めてすごい作品だなあと思います。考察云々はおいて置いても、SF、ロボットアニメとして凄い設定、映像、ストーリーの作品だし、何よりアスカとレイの2名の美少女は日本のアニメ史をもっとも彩ったキャラではないでしょうか。