かがみ さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「終わり」へ至る二つの「始まり」
本作では二つの物語が語られる。一つは老倉育の物語。2年前の7月15日、阿良ヶ木が所属していた1年3組の学級委員長であった老倉育は数学の試験で起きたカンニング疑惑の犯人を探す秘密学級会を開催するが最終的に「多数決」で犯人は老倉ということにされてしまい、結果、彼女は不登校になる。そして、2年ぶりに登校してきた老倉との再会をきっかけに、阿良ヶ木はこれまで完全に忘却していた自らの過去と向き合うことになった。もう一つは初代怪異殺しの物語。400年の時を経て現代に蘇った初代怪異殺しはかつての主人である忍とヨリを戻すことを熱望するが、その一方で、忍は彼との再会を頑なに拒絶する。そんな忍の煮え切らない態度を神原は「きみはただの人見知りだ」と真っ向から糾弾する。そして阿良ヶ木は忍の心中を理解しつつも、あえて憎まれ役を務めてくれた神原に報いるため初代怪異殺しとの決闘に赴く。この一見して関連性のなさそうな二つの物語は「忍野扇」という存在を語る上で実は密接に関連している。阿良ヶ木はあるところでは「忍野扇さえいなければ」と述べ、別のところでは「忍野扇がいてくれたから、今がある」とも述べている。このような意味で阿良ヶ木にとって彼女は極めて両義的な存在として位置付けられている。いわば本作は物語が「終わり」へ至る二つの「始まり」の物語である。