かがみ さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「正しさ」との和解
阿良ヶ木はあるところでは「忍野扇さえいなければ」といい、別のところでは「忍野扇がいてくれたから、今がある」ともいう。このような意味で阿良ヶ木にとって彼女は極めて両義的な存在として位置付けられている。こうして「終わり」の「終わり」となる本作では、いよいよ阿良ヶ木は扇と「対決」することになる。そして、この「対決」は阿良ヶ木がこれまで目を背け続けてきた自らの「正しさ」と向き合っていく営為そのものであるといえる。この点、本作を駆動する大きなテーマの一つが「正しさ」である。幼少期から中学に至るまでの阿良ヶ木は警察官を職業とする両親の教育によって普遍的な「正しさ」を曇りなく信奉する少年だったが、あの高校1年の秘密学級会で「多数決」により「正しさ」が捏造される瞬間に直面したことが契機となり、以降の彼はよく知られる「友達はいらない。人間強度が下がるから」という台詞に象徴される厨二病的ニヒリズムに陥ってしまう。もっとも、こうした厨二病的ニヒリズムもあの春休みにキスショットと邂逅して以降、数多くの出会いの中でずいぶんと揺らいではきたものの、やはり彼の中ではかつて抑圧した自らの「正しさ」とは折り合いをつける事は出来ずにいた。けれども本作ではいよいよ「正しさ」の方から彼に「対決」を迫ってくる事になる。いわば本作はある面で「正しさ」と和解する物語を物語る物語であったといえる。