ハニワピンコ さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
アーニャが強すぎる
もちろん面白い、今年を代表するアニメだと思うが、原作1話からのファンとして果たしてこのコンテンツはこのままでいいのか?とは思った
まずは感想
犬さん編って隔週だと結構長いなと感じたけれど、アニメだとテンポ良く進むし家族全員が良い感じに活躍して場面が変換していくから飽きないし、何より話の完成度が高い。アーニャの可愛さ 純粋さ、超能力を活かした活躍、ヨルさんの超身体能力と母親らしさ、ロイドのスパイとしての有能さと覚悟がしっかりと話の中に描かれていて、ギャグとシリアスそして少しの感動も入った隙のない展開だった
その後のABパートに分かれたコメディ部分は正直アーニャありき感が強くなっていった。ここまでアーニャというキャラが声優 アニメーションで魅力的になってしまった結果、アーニャを中心としたドタバタ的なのに振り回されるちちははじなんやベッキーという描写が一番面白く感じてしまい、他のキャラがメインのパート、黄昏はまだスパイというカッコいい側面があってシリアスな方向に持っていけるが、ヨルさんの方は殺し屋の描写はほぼ無くなり、脳筋 ポンコツ要素だけで展開されるギャグは正直アーニャのと比べると物足りなく感じる
数分で読める原作の1話分をわざわざ10分程度の尺で改めて見るとなると、別にわざわざアニメとして観る必要はあるのか?という事を考えてしまうパートが結構あった
あと17話Bパート“情報屋の恋愛作戦”で「いらん情を抱くな」みたいなこと言ってたくせに、その次の話のハンドラーに「娘が跳び箱を飛べる様になりました」っていうのはなんか…ロイド自身が情を抱いているのに気付いているのはそうだけれど、それをモジャモジャにどんな顔で言ってんだよってのは思った。そもそも休載濁しの「Short Mission」っておまけ要素的な部分で読んでいたのに、作者のコメンテータリで結構意図を含ませているらしいというのを知って結構予想外だったんだよね。結構言われているし今まで自分も敢えてスルーしていたけれど、スパイ黄昏として最初からアーニャや家族に入れ込んでいるのにいらん情云々のハッキリ言って矛盾は、コメディ作品だからで濁されているけれど、実際シリアス的な要素で使われるとかなりノイズになっているのは確か
1クール目と比べて不評気味のBUMPタイアップのOP曲 {netabare}
この「souvenir」という単語は、「おみやげ」という訳が当たることが多いが、実際は「旅先で自分に向けた記念品」という意味が強いので「gift」や「present」が正しいみたいな事言われてたが、歌詞から見るに「見た景色やあなたといるこの時間にリボンをかけて集める」という意味で取られているし、仮にこのリボン掛けた物を渡すとしても、思い出等の場合は渡すとしても「souvenir」はフランス語の「思い出す」を語源としているので正しいと言えば正しい
曲の中身についてあまり語ることはないが、BUMP好きなのでちょっと。アニソンタイアップだけに絞ってみても『月虹』ばりの尖った曲は中々出さなくなったなーって思った。まぁここ数年のタイアップ先はポケモン(これはゲームだけどAMVなので) コナン スパイと癖のないコンテンツだから尖らせないのは当然なんだけれど、だからこそ1クール目の、スパイ作品黎明期にありそうな曲調でありながらコメディも融合させて転調も仕組んだ『ミックスナッツ』が凄すぎたんだなぁって
『Souvenir』は良くも悪くもファミリー要素にフォーカスし過ぎて無難な作りになったのかなと。なんだかんだやっぱりBUMPは良いね。次第に盛り上げていって、ドラムの入りから丁寧にサビに入っていく感じは落ち着いていながら聴き心地が良い。でもアニメOPには合ってないのもわかる。歌詞や映像と共に秋の哀愁感が押し出されていてキャッチーさがないから明らかギャグな本編と合っている訳でもないし、アニメOPこそサビが映像と共に最もフォーカスされるべき所なのにあっさりし過ぎている。曲自体はスゴい好きです。イントロ削られたのも痛い。フルで聴こう!
{/netabare}
この作品はスパイとホームコメディという題材の中で求められる最大公約数を得て大ヒットになったが、それに至るまでに削ぎ落とされた不要な要素は深掘りされていく中でボロが出てきたりしてしまっているが、今はなんとか体裁を保っているという感じだと思う
簡単に挙げられるものなら、アーニャ一強人気、スパイ 暗殺者が正体を隠しながら展開されるシリアス、作者の本当に描きたい内容。最後に関しては一部の曲解の鵜呑みではなく、しっかりとファンブックのインタビューを全文読んで自分が読み取った末と一応念を押しておく
と、ここら辺が今後の懸念材料にはなりそうだと思う。普通に娯楽王道コメディ作品としてみれば特に減点要素もない作品な故に世間には親しみやすいだろうし、この大ヒットは当たり前であるが、ある程度数を見てきた側からすると、作者の作家性が見えたり独特な癖のある展開やキャラがあれば加点して楽しめたのだろうが、前述した通りこの作品は題材から得られる最大公約数をとった作品であるので深掘りにも限界はある
最後にアニメ化についての展望や懸念
十中八九続編はあるだろうと思っていたけれど、当然の如くあった。大ヒットしたのはそうだが、元々Wit Studioに頼んだ計画に製作側は大ヒット間違いなしと踏んで続編ありきの制作体制を組みたかったので、Cloverworksと組んだんだろうし(そもそも最初からクローバー制作ならアニプレ主導)
でも中長期的な目で見ると、作品の力が一過性の話題 人気というのはあるだろうし急ぎそうではあるけれど、原作の量的にこのまま連続して作っていくのは2期は1クールにしないと原作の量的に難しそう。1クール目のアニオリも不評気味だったし、お先は真っ暗程ではないけれど意外と今後は厳しいかもしれないプロジェクトともみれる。完全オリジナルの映画もやるようだが、スパイ 超能力 暗殺 コメディという要素を入れ込んで一本にするって中々難しそう。それが上手くいったボンド編に更にボンドの要素も入れなきゃいけないから中々だと思う
もちろん放送も公開もしたら絶対見るが、1期程の話題性や人気を得られるかと言われれば出オチ気味の作品な故に難しい思う。でも、公式が需要に応じて変化させているのはポイントかな。アニオリの空気感もそうだけれど、何より世間のアーニャ関心をしっかりと公式が理解して反映させているのは優秀だなと思う
ここ1.2年で“アニメの持つ力”という物が顕著に現れ製作側の意識も変わり、その改革された意識で生み出された作品群のはしりとなる本作、アニメ業界の今後の趨勢という部分からみてもどうなるかは見ていく必要があると思う