nyaro さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「学校は分断と差別の装置」という重いテーマだけど、面白いです。
本作は少年マンガ的な荒唐無稽な設定ですが、その上に教育論・学校制度についての重いテーマが乗っかっていることにはすぐに気が付きます。設定と見た目で切るのは非常にもったいない作品です。
スコアによって分断された、スケープゴートの対象クラスという設定。「バカとテストと召喚獣」「ようこそ実力主義…」「魔法科高校…」などでも採用されている設定です。程度はそれぞれですが、そこに生まれる階層主義と差別。現実の学校内でここまで露骨にやっている学校は少ないでしょうが、日本の学校の様子を見ると偏差値で区切られたヒエラルキーが見事に出来上がっています。
生徒の可能性を信じて、努力、根性、個性を否定しない殺せんせいの教育に、ちょっと心が持っていかれます。そして何より、自分を殺せという共通目標を持たせることで、教室を一体化させてゆきます。
そして、教師を殺す…教師の否定ですね。教師が何かを教えてくれるわけではないし、教師がいなくても学ぶことはできる。学校教育は学びの場であって知識や能力を与えることはできないと読むことができます。あるいは学ぶ気になるように導くことで、やっと教えることができる…でしょうか。
映画「バトルロワイヤル」では、教師が「今日は皆さんにちょっと殺しあいをしてもらいます」でした。それが「この怪物(教師)を君たちに殺してほしい」ですから。つまり、スクールカースト的な同年代グループ内の階層分断から、もう学校制度そのものが差別分断の温床になっているということでしょう。つまり、気分は教師=学校制度をぶっ壊したい、です。
この2作品の間にあるのが、「桐島、部活やめるってよ」です。この3作を並べると、ちょうど5年ごと学校を取り巻く、生徒の気分を感じることができます。
当時の気分に乗っかって、先生殺しを落ちこぼれと言われたクラスが請け負う。これが面白くないわけはないです。先生が何者なのかという設定もかなり裏があるようです。先生の一つ一つのセリフを味わうだけでもなかなかのものです。
エンタメとして、殺せんせいのキャラ、暗殺という目標、そして特殊な学校制度という舞台。作品の大きな設定が秀逸な上に、個々のキャラの深掘りを通じてのエピソードがなかなか面白いです。そして、ストーリーがダラダラ続く感じでもなく、何かに進んでいる感じがちゃんとあります。期限を切ったのもいいですね。
作画も丁寧だし、とにかく殺せんせいのキャラのおかげで画面が面白いです。エンタメとして秀逸な上に、テーマの深掘りができます。年齢問わず楽しめるアニメだと思います。
なお、原作既読です。前半も面白いですけど、後半の方が圧倒的にいい話なので、ちょっと1期は評価低めにしておきます。