てとてと さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
新海誠監督の8作目の劇場アニメ122分。大傑作未満だけど秀作以上
ヒロインと相方男子が、災害の起点となる?異界の扉?を閉じるべく日本全国を旅する。
【良い点】
ボーイミーツガール、異界(日本神話系ファンタジー)、引き裂かれる危機などの新海作品のお約束満載、こういうのでいいんだよ感。
ロードムービー形式での人々との出会いと交流による温かさ、ヒロインの成長、恋、共闘で絆深まる、外連味抜群の異界を閉じるハラハラ感などがテンポ良く飽きさせない。
星を追う子供以来の女の子主人公だけど格段に面白い。
ロマンチックかつドラマチックな出会いから、捨て鉢な行動力で冒険が始まる。
主人公(女の子)がアグレッシブで物語引っ張れる強さありつつ、話が分かり易く、盛り上がりも申し分ない。
嫌味なキャラや不快な展開が殆ど無く、終始気持ち良く視聴できる点も良い。
この点は前作天気の子が社会規範に反逆し過ぎていた反省か。
また、題材(自然災害と日本の関わり方?)の割には思想や説教臭さをほぼ感じさせない点も前作と対照的。
自分としては前作の挑発的内容も好きだけど、エンタメ作品としては今作の方が気分良いのは確か。
災害に対する、旅先の人々の善意と活力で、清々しいメッセージを感じる。
キャラは軒並み魅力的だが特に芹澤がおもしれー男だった。
この手の劇場版のお助け男子にありがちな無個性ではなく、癖が強いが良い奴でちゃんと魅力がある。
すずめちゃんと叔母さんの、震災で拗れた関係も、共に旅して冒険した成果も合わせてハートフルに纏まっている。
ここの描き方によっては辛気臭くなりがち、すっきり解決していて良かった。
これをロードムービーとファンタジーを通して、一人の少女の災害で失った悲しみと成長から、普遍的に共感できる物語になっているのが見事。
新海作品らしい男女断絶からのロマンスと、震災と家族ドラマの二本立ての感動が味わえるお得感。
九州の女子高生が、船や鉄道や車と色々な交通手段で日本全国旅するロードムービー感も魅力。
主人公の行動力と、出会った先の人々の善意でテンポ良く、現代日本か舞台でも冒険ファンタジーが成立していた。
丁寧な作画も相まって旅行記アニメとしても高水準。
相手男子が途中まで呪い?で椅子にされる展開もユニークかつ上手い。
ラブコメが適度に保たれていたり、頼れる大人な草太に制限掛かる事で、女子高生の日本横断の冒険感も高まる。
草太は災害封じのスペシャリストな強キャラなので、彼が封じられる事で鈴芽ちゃんが頑張らなきゃ!な構図が自然。
それでいて旅先の人々の助力で展開にストレスが無い、少女が無計画に日本横断する冒険ファンタジーが上手かった。
扉を閉じる祝詞などの神道系・日本神話系ファンタジー感もステキ。
ミミズ封じのアクションシーンは手に汗握る。
楽曲は芹澤のカーステレオの懐かしソングが良かった。
細かい点だと、鈴芽ちゃんが捨て鉢に行動してボロボロになりながら、覚悟を決めた際、一旦草太の家に戻り態勢整える一幕が良い。
このシーンのお陰でリアルに危機に挑む覚悟が伝わるし、ただ無鉄砲なだけではない強さも分かる。
震災のトラウマ抱えて慎重さも身に着けている性格が共感できる。
もう一点、スマートフォンの位置情報アプリを使いこなす作劇も良かった。
2022年らしい時代性感じるし、神がSNSで導いたり、モブの人々と繋がったりする構図、こういうのは好き。
【悪い点】
強いて言えば展開がスムーズすぎる。ご都合主義とは思わないが。
後半草太の危機は新海作品のお約束だし。
ロードムービー冒険として完成度が高い一方、展開自体は似たようなミミズ対策の連続でやや単調だった。
良い点と裏腹、相手男子が半分以上椅子状態なので、ラブロマンス感が地味。
ミミズ封じに忙しくてラブコメする暇があんまり無かった感。
強いて言えば、キャラの魅力は申し分ないが、主人公も相手男子もやや優等生。
君の名はの主人公ヒロインに比べるとはっちゃけた強い印象が薄い。
鈴芽ちゃんのお父さんはどうしたんだろ?と若干気になる。
劇中歌は良いが、主題歌は可もなく不可もなく。
…以上は「強いて挙げれば」で、大傑作に比べれば若干物足りない程度。
【総合評価】9~8点
新海作品の一般受けする集大成で手堅い上で、災害と日本神話と現代日本も捨てたもんじゃない希望も見せてくれた良作。
概ね素晴らしいんだけど、君の名はに比べると、十年後二十年後も話題に上る大傑作かは未知数?
ロードムービー部分が楽しいので、二周目以降も楽しめそうな気はする(まだ1回しか見てない)。
このレベルで物足りないのは期待値が高過ぎる故、評価は「とても良い」