かがみ さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
思春期における異界体験
人は通常その発達過程で世界を「見えるもの」だけで囲い込み「見えないもの」を切り捨てていく。けれどもその一方で切り捨てられた「見えないもの」はしばし「異界」とも呼びうる体験として回帰してくる。とりわけ10代の「思春期」と呼ばれる時期はこうした「異界」へ最も接近する時期であるといわれている。この点〈物語〉シリーズに登場する様々な「怪異」とは、ある意味で、思春期における「異界」のメタファーでもある。そして同シリーズの「セカンドシーズン」を構成する「猫物語(白)」「傾物語」「花物語」「囮物語」「鬼物語」「恋物語」という作品群では、羽川翼、八九寺真宵、神原駿河、千石撫子、忍野忍、戦場ヶ原ひたぎといった〈物語〉シリーズのヒロイン達にとっての「異界=怪異」に焦点が当てられることになる(もっともアニメでは「花物語」のみ別枠扱いとなっている)。人は世界に棲まう上で自らの生を基礎付ける「物語」を必要とする。そして「異界=怪異」との遭遇は、しばし生の「物語」を紡ぎ直す重要な契機ともなる。こうした意味で同シリーズは心理療法の現場においても言語化が極めて難しいとされる異界体験を見事なまでに「物語」として描き出しているとも言える。