二足歩行したくない さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
もう一度だけ、君と会うことができるのであれば
新海誠監督の劇場版アニメーション作品3作目。
3つの短編が組み合わさった内容になっていて、それぞれ同一キャラクターの中学1年生の頃、高校生の頃、社会人になった以降の話になっています。
それぞれ異なる出来事を綴ったストーリーですが、1話目が起因となる出来事、2話目がそれを引きずったままでいたという話、3話目が完結編という感じで、3つで完結となります。
新海誠にしては珍しく、超自然現象やSF色はないです。
淡白に言ってしまうと"よくある話"で、似たような経験をした人は普通にいると思います。
客観的にみてありふれた話ですが、主人公にとっては非常に重要な宝石のようなもので、忘れることはできない宝物であることが、本作を通して感じられました。
同じような経験をした方はよりその思い出が尊くなる、無い方も切なさが伝わってくる、良作だと思います。
3話構成ですが、1話目の桜花抄が、個人的にはお気に入りです。
新海誠監督は結構電車好きらしく、氏の作品では"鉄道"が良くキーとして登場します。
本作は新海誠の鉄道描写ここに極まれりという作品で、小田急線豪徳寺駅から両毛線岩舟駅までの路線が描かれています。
電車自体にはあまり詳しくないですが、実際の電車が大量に出てくるため、鉄オタが見ると盛り上がる映画らしいですね。
遠野貴樹と篠原明里の二人は小学生の頃から仲が良く、クラスメイトからからかわれても平気でした。
そんな折、家族の都合で明里が栃木に引っ越してしまい、文通を重ねていましたが、貴樹も鹿児島に引っ越すことになります。
引っ越してしまうと会うことがかなり難しくなってしまうので、貴樹は電車を乗り継ぎ明里に会いに行く決心をする、という話です。
在来線で向かっているのですが、遅延することを予期できず、大雪に見舞われた電車は度々止まってしまいます。
雪に覆われた北関東平野に佇む乗客のほとんどいない電車内でうずくまり、動き出すのをひたすら待つ夜、劇中ではそれどころではない状況ですが、そういう孤独っていいなあと思いました。
2話のコスモナウトと鹿児島に引っ越した貴樹と、彼に惹かれる女の子「澄田花苗」の話。
打ち上げられるロケットの描写が美しいです。
2話目、3話目とも、桜花抄での出来事以来、連絡先がわからなくなってしまった明里を追い求める貴樹の話になっています。
大勢の人でごった返す東京で、たった一人の人間と、たった一人の人間が、偶然出会う確率がどれほどなのかわからないですが、どちらにしてもこれまでもこれからも生きてゆく、続いてゆくというストーリーでした。
ラスト少し『君の名は』っぽい感じがしましたが、個人的には『君の名は』より良かったですね。