蒼い✨️ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
マインの進む道は面倒くさい世界。
【概要】
アニメーション制作:亜細亜堂
2020年4月5日 - 6月21日に放映された全12話のTVアニメ。
原作は、「小説家になろう」に連載し完結したweb小説を改訂し、
TOブックスから刊行されている、香月美夜による小説。
原作イラストは、椎名優が担当し、2期と3期にあたる『第二部 神殿の巫女見習い』は、
TOブックスの『コロナEX』とニコニコ静画の『comicコロナ』にて、
漫画家の鈴華の作画によるコミカライズ版がweb連載中。
監督は、本郷みつる。
【あらすじ】
他の何よりも本を愛する現代日本の女子大生の本須麗乃は、
念願である大学の図書館の司書に就職が決まった日に大地震で本に埋もれて亡くなり、
彼女が異世界転生した先は、識字率が低くて平民は本の存在を知らない中世の世界。
そこでは本はとても高価で貴族の持ち物だった。
平民で兵士の娘・マインに転生した麗乃は、衛生観念の低い下町の環境に当初は戸惑い、
マインの家族に奇妙に思われながらも、日本で得た知識をもとに生活環境を改善して、
更には最大の目標である、「本がなければ作ればいい!」の夢を叶えようと、
一番身近な男の子のルッツとともに紙の代用品を作ろうとしては失敗していた。
口利きで大商人のベンノの知遇を得たことで職人を紹介してもらうなど状況が前進。
この世界での初の植物紙の製造に成功したマインとルッツ。
だが、マインには別の問題があった。並外れて虚弱なマインを定期的に苦しめる熱病。
それは身食いと呼ばれる死病の症状であり、倒れたマインを救ったのは、
ベンノが商業ギルドのギルド長に交渉して手配してもらった壊れかけの魔術具だった。
だが、それも一時的なもので身食いの熱は増え続け、残り1年ほどしか身体がもたない。
身食いの熱を吸い取る魔術具は貴族の持ち物であり、今回マインが支払ったように、
非常に高価なうえに通常は平民に回ってこなく、お金があったとしても入手不可能。
身食いの平民が出来る選択は二つに一つ。貴族のためだけに働く契約で魔術具を買い、
その借金を返すために貴族に飼い殺されて生きるか、
身食いの対処を諦めて残された1年間を家族とともに生活して一生を終えるか。
マインは家族に正直に話して、家族と過ごして短い人生を終えることを選んだのだった。
その後、洗礼式で神殿の図書室を発見したマインは巫女見習いになりたいと言い出すが、
平民出の神官や巫女は身寄りのない孤児が仕方無くなるものだと家族全員に反対される。
一度は志願した先の神殿に断りを入れに赴いたマインの口から自身の身食いの話をしたのだが、
身食いとは病気ではなくて、貴族並に高い魔力を持った平民がたまに生まれてきて、
その魔力が限界以上に溜まって身体に悪影響を及ぼす現象。
統治システムに影響する魔力の高さが権力の象徴である貴族にとっては、
魔力をほとんど持たないはずの平民の身食いなんて本来は目障りであったが、
政変による大粛清で貴族が激減。神殿に入っていた貴族出身の青色神官が、
元の貴族に戻るために数多く還俗したことで、
神事・祈念に魔力を捧げる捧げる青色神官が不足して、農作物の収穫量にまで悪影響。
そこで魔力不足を補うために魔力持ちのマインを神殿に取り込もうとの話になったのだが、
両親を召喚して平民の出だと知るとマインを奴隷のように扱い搾取・利用しようとの神殿長の考え。
中世の階級社会で平民が貴族階級に連なる権力者に逆らうの極刑ものであるが両親の必死の抗議、
マインの膨大な魔力での威圧で高圧的な神殿長を殺しかけて神殿側が折れたことで、
マインは青色巫女見習いとして権利を認められて神殿お勤めをすることに。
神殿は青色神官(貴族)と灰色神官(孤児)の身分社会であり、
平民出身の青色巫女見習いのマインを快く思わない者が多い。
神殿のトップである神殿長ベーゼヴァンスには徹底的に嫌われているが、
厳しいながらもマインを認める神官長のフェルディナンドの庇護下に置かれたマイン。
そこでもマインは本作りを初志貫徹しようとしたり、
神殿内で自分の手の届く範囲で改革をしようと奔走するのだった。
【感想】
原作者の読みやすくて面白い文章は、
なろう小説の中ではトップでは無かろうかと思っている作品のアニメ化。
マインの神殿の仕事が始まる2期は1期と比較すると話数が2話分少ないせいか、
進行を急いでいる感じ。
特にモノづくりのパートが職人に投げて結果がこうなったばかりで、
トライ&エラー成分が犠牲になってるような。
と思ったら構成の都合で回想という形で職人ヨハンのエピソードが3期に回されていたりでした。
本を作りたいというマインの目標は変わってはいないのですが、
2期でのメインはモノづくりではなくて、人間が正しく生きるには!みたいな話。
きちんと人の話を聞いて物事を考える大切さが描かれています。
封建国家で“人権”の概念が生まれていない中世の価値観の世界で、
貴族社会のいざこざの皺寄せで犠牲になっている神殿内の孤児たちを救おうと、
理不尽さに抗って手の届く範囲から環境を改善しようというマインたちの活躍。
マインの同僚であるはずの青色神官は、家庭の事情などの一部の例外を除いては、
魔力量が絶対の貴族社会で落ちこぼれて神殿に入れられていて、
本家で貴族として生活してる親類縁者に劣等感を持っていまして、
マインが自分たちと同じ青色の衣を与えられているのに対して、
平民の分際で生意気だ!と昏い感情で怒りや苛立ちを持ってしまったりするわけですね。
アニメでは該当シーンがカットされているのですが、
マインの味方の神官長フェルディナンドに仕える灰色神官のアルノー(オカッパとニキビの彼)が、
マインに度重なる小さな嫌がらせをしていまして、
彼に限らず神殿の中の人たちの心の歪みの数々が後の事件の伏線になっていまして、
細かく組み立てられた原作の物語が、アニメでは尺の都合とわかりやすさ重視なのか、
漫画で読んだ同じ話よりもシンプルに整理されていまして、
このアニメって子供向けにアレンジされているのかな?と思って見たり。
この作品で悪いことをしている人たちの多くは出自が貴族であれ孤児であれ自分の境遇への不満を、
誰かに嫌がらせや虐げることで鬱憤を晴らすという不毛な行為に走っていまして、
弱さから心が歪んでしまった人間と、歪まずに良心に従って生きようとする人間との対比で、
どことなく道徳的な部分があるのですよね。
権力社会にマインが入って陰湿なキャラクターたちと対峙してしまうところが、
1期のファミリー&モノづくり路線と違ってしまってるのですが、
作品のタイトルに、“下剋上”が入っている以上は、マインが段階的に成り上がっていく過程で、
歪んだお貴族様との対決が避けられないのは仕方のないことではありますね。
アニメはアニメで漫画では出来ない動きの表現の楽しさがあるのですが、
ストーリーは小説や漫画で読んだほうが完成されているのかな?
楽器(フェシュピール)を弾いているシーンでは、
演奏を描けるアニメーターがいないのか運指がアニメーションしてなかったり、
ストーリー面では十分に楽しめるアニメではありながらも、
不足の部分がところどころ気になるアニメではありましたね。
それでも、ルッツの家族間の問題の話であったり、2期の最終回であったり、
家族愛が強めで外してはいけない部分は外さずに見せ場は素晴らしかったのですので、
あまり評価が下がることなく観て良かった作品だと思うことにしました。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。