退会済のユーザー さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:----
ライナスの毛布
きららにも関わらず実写化もされた大ヒット作品。
きららと言えば美少女動物園と揶揄されるような紳士の嗜むものという認識が一般的ではあったが、現代では女性もkawaiiを楽しむ時代に突入。ストーリー性皆無で虚無で脳死でキャラの魅力でゴリ押すというかもはや暴力とすら呼ばれる構造では限界を迎えた界隈に突如現れた革新的なイノベーションがおっさん趣味もの。ホビアニのような趣味に生きる者たちへの福音かはたまた迷惑極まりないニワカ発生装置となるかはほぼ運というかギャンブル。趣味きららでの革新的発明けいおんのような奇跡もあったが、若者が若者趣味を楽しむ構図だとKKOには少し敷居が高いという参入障壁であのレベルでもアニメに疎い層にまで広がることはなかった。そこでおっさん趣味との組み合わせを用いることで高齢化したアニメファンに親しみやすいモチーフで大ヒット。アニメに疎い一般高齢者にも馴染みやすい題材を押し出して「これは美少女動物園じゃないですよ」という方便を適用できるスケープゴート動物園アニメが爆誕し昨今に至る。
しかしながら数多の趣味ものが生まれては消え生まれては消えを繰り返す中、シリーズ化する長寿作品の地位にまで到達するこのような作品とその他の有象無象の間にはどのような違いがあるのだろうか。各作品のモチーフの知名度においてはそこまでの差異はないようにも思える。今作や現在進行形でヒット中のぼっちざろっくを観ればヒントがあるように思う。キャンプといえども今作では当時では今ほど周知的ではなかった概念がクローズアップされている。そう、ソロキャンである。ひとりでキャンプするという行為は昔なら確実に侮蔑の対象であっただろうし、当時にSNSがある世界線であれば確実に盗撮され晒し者にされ笑い者にされていたであろうことは想像に固くない。ソロキャンという蛮行はヒロシのようなある意味世俗を捨て悟ったような達観したような価値観の者が開き直って行う行為であり、一般的に普通というラベルがふさわしくない時代であった。それが今では。この作品のヒットだけによってソロキャンが支持を得たわけではないが、なんとも時代の変遷を感じさせる作品でもある。
孤高の趣味として描かれたソロキャンとそれを肯定するキャラ群。このラノベ的ぼっちの正当化こそが凡百のおっさん趣味きららとの圧倒的な違いであり今の時代にマッチしていたということではなかろうか。昔ならぼっちはキモオタ男子特有の称号ではあったが、昨今では女性への適用も増えてきている。
KKOとはおじさんおばさん両性に適応されるとのこと。一般向けっぽい女性雑誌においても「ひとりで生きる新しい生き方」みたいな特集が大ヒットしているらしい。もちろん厳しい社会生活を生き抜いている女性編集者などはそんなこと微塵も思っておらず「ただ売れるからやっているだけなのにまじウケる」とのことらしい。媒体は違うが抽象的に俯瞰してみるとこの構造は似ているのではないかと思う。ぼっちにやさしい肌触りの商品が今は求められている。恋愛も結婚も諦めて個人で好きに生きる生き方を多様性というラベルで正当化する行為はもはや社会生活を営む上で負うべき責任からの逃避行動でしかない。そこまで言い切るゴリラ種もいるようだが流石にそれは言い過ぎだと思うし、そんなマッチョ主義も他人からみれば優生思想排他主義でしかないとも言える。要するにお互い様だし多様性なんてのは突き詰めれば「世の中バカばっかり」のバカを尊重せよということ。そんなものはどう考えても人類にとって早過ぎる課題だ。
他人が楽しんでいるものに向かってキモいなんて吐き捨てるガ○ジムーブが横行する昨今。自分の足元を確認するのも大事だが、キモいと思った素直な自分自身の感情もまた尊重するべきではある。要は言い方の問題でしかないのだが、核家族やシングル家族という人類育成システムが破綻したなかで生き抜くしかない現代人では健全なメンタルを正常に育んできているオトナはもはやSSR。モラハラやパワハラなんてやってしまうような園児レベルの口唇期固着人間が我こそは健常者でございと大手を振って無垢な暴力に勤しみ社会的弱者を障害者と断罪する現代社会。心理的安全性や安全基地なんてのはもはや自前で用意するしかない。それがアニメでも小説でもドラマでも映画でも哲学でも数学でも音楽でも経営でもなんでもいいんだけど。
そもそもキャラを楽しむしかない今のアニメを見てストーリーガーなんてのはナンセンスに過ぎる。きららでなくとも今の1クールが主体の脚本に物語を求めてもしょうがないし、まともな物語ならアニオリで強引に締めてファンから袋叩き炎上祭りは不可避。だからこそ脳死なろうしかアニメ化されない現状に行き着いたわけで。物語を見たいなら素直に漫画小説ゲームやれとしか。この作品に関しては個人的には全然無理なんだけど、キャンプブームでキャンプ用品が高品質で安くなってる事象には貢献しているとは思います。