nyaro さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
まんま「ペットセメタリー」ですが、換骨奪胎できています。
原作者はっとりみつるさんの前作「ケンコー全裸系ウミショー」がコミック、アニメとも大好きで、原作を手にしましたがなんとまさかのゾンビもの。
私、ゾンビってどうしても、腐敗臭が鼻の奥によみがえるというか、肌の崩れとか生々しい連想をしてしまって苦手です。敵ならまだ理解できますが、恋愛対象とかありえません…と思い断念していました。
しかし、この「さんかれあ」アニメ版。非常に高評価の様で、勇気を振り絞ってみました。やっぱり猫とかの描写が生々しいですが、ヒロイン「れあ」ちゃんが想像以上に可愛くて、一気見してしまいました。
この作品は、発想は「ペットセメタリー」というホラー映画ですよね。ほとんどそのままと言っていいでしょう。そして、さんかれあは「サンゲリア」?とにかく、生き返りもののホラーでゾンビものは、これらのオマージュなのでしょう。作中にも「チャイルド・プレイ」ぽいポスターみたいのがありました。つまり、映画から発想を借りてきたということは隠していないようです。
また、父親が娘の成長記録としてヌードを撮影するというのは、みやすのんき氏「冒険してもいい頃」に出てきた設定とそっくりでした。
別に借り物の設定をあげつらうわけでなく、こういう引き出しを沢山もっていて、それを上手く組み合わせて換骨奪胎した結果「恋愛、毒親、ゾンビもの」というまったく新しいカテゴリーを創り出したことが素晴らしいと思います。
超箱入り娘が自由を求めて、死んでもいいと思う。この絶望感は非常にうまく表現していたと思います。「死んでいるのと同然の」少女と「死んでいるのに生きている」ゾンビと上手く重ね合わせて「れあ」という、儚くも美しい魅力的なキャラを作り上げました。
お寺、アジサイ、猫などの雰囲気も良かったです。出会いのきっかけもなかなか物語のスタートとして少女の絶望と井戸、廃墟、崖などの組み合わせはワクワクしました。そして、ファンタジーというか少年向けの作風であるにも関わらずストーリーはシリアスもあり、想像以上にきちんと展開がある優れた脚本だと思いました。
残念ながら、話が非常に中途半端で、この先が見たいのにという感じですが、2012年ですか。2期はないでしょうね。だったらコミックを読むしかなさそうです。
作画もキャラデザも素晴らしかったです。はっとりみつる氏の絵は魅力的なんですけど、ちょっと線が荒い感じがします。そこが味なんですが、このアニメのヒロインの美しさは素晴らしかったです。
話の導入部分で終わったみたいですけど、この作品の雰囲気から言って幸せになるのか微妙ですよね。最後のハーフゾンビがなにか解決の糸口になるのかわかりませんが、ペットセメタリーが基だとすると…
毒親からの解放が基本にあるとするなら、結果は、本当の死なのか、ゾンビとしての幸せなのか、復活なのか、がわからないのがもどかしいですね。
恋愛は基本には成就しない構造な気もします。生と死は所詮は会い入れません。あるとすると2人の死か、れあの復活ですね。本作の流れで言えば2人ゾンビでしょうか。そこは少年マンガですからハッピーエンドでもいい気がします。
とにかく思っていたよりゾンビに対する嫌悪感は少なくて済みました。面白い作品だったと思います。
追記 なお「ペットセメタリー」「オーメン」「シャイニング」は私の3大怖かった映画です。ホラー映画史的に重要ですが、見て後悔すること受けあいです。決してお勧めしません。