栞織 さんの感想・評価
4.1
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
スタインベック的世界の任侠もので
テレビでは36話あたりで脱落して、その後見たり見なかったりだったので、このほどdアニで最後まで視聴しました。昔の時の記憶はおぼろげなのですが、明らかに作画・脚本・演出が修正されていたと思います。具体的に言うとメリベットと雪之丞のいきさつが削られていましたし、ガエリオとアインのアラハバキシステムの連携はテレビではなかったような気がします。これらはおそらくテレビ放映時にファンからの声で不評だった点を改善したものと思われます。そのような修正箇所は多岐に及んでいて、私にはいちいち指摘することは困難です。なにしろ五年ぐらい前に放映で一回見た限りですので、違っているというのも私の気のせいということにされるかもしれません。そのあたり自信がないのですが、見ていて本当に違っているような気がしました。
ただ修正箇所も作画的には少しよくなっているだけで、もともとのキャラデザインが劇画の昔のもののようなデザインなので、その点は同じです。これはおそらく男臭い世界を描くということで、キャラ萌えを排したものにされているのだと思います。おそらくこの世界観の念頭に置かれたのは、アメリカ文学のスタインベックの世界です。私は読んだことはないのですが、鉄華団たちヒューマンデブリが宇宙ねずみと蔑称されていたのは、スタインベックの「ハツカネズミと人間」からとられているのだと思います。全体的にアメリカ中西部の比較的の貧しい地域と、クーデリアに代表される東部の白人社会の対比で描かれた作品で、これもアメリカでの放映も視野に入れての世界観の構築だと思います。つまり非常にアメリカナイズされた作品ということなのですが、描かれる話は日本人にもなじみ深い任侠ものの世界で、その点は日本でも受け入れやすかったのではと思います。もちろんアメリカでのギャング映画からの引用も多かったですが。全体的には従来のアニメファンを切り捨てた映画志向で作られており、シノがここぞという時に狙いを外したり、ラストの鉄華団がほぼ壊滅してしまうあらすじと言い、非常に大人っぽいビターなテイストで描かれた作品です。
しかし苦言を呈するとすると、ビーム砲などの発達した科学兵器の使用が今は禁じられているという裏設定がなかなか画面から伝わって来ず、過去の厄祭戦がどういった内容だったか想像するしかない状態で、そのあたりが群盲が象をなでる印象だったのは否めません。そのあたりがうまく説明されており、今はダインスレイブを使用しているというのがよくわかる話であり、またその状況だからこそ鉄華団の連中があのようなジャンクや生活を余儀なくされたという部分が最初から説明されていれば、もっといい作品になったのではないかと思います。つまりもっと全体的に包括した世界観で描いてほしかったです。
36話以降を今回見ましたが、シナリオは改善されていたと思いますので、もし機会を逃している方は見た方がいいかもしれません。しかしあらすじには感心しましたが、テイワーズのつながりのあたりは非常にわかりにくかったですし、やはりシナリオは改善されていてもベストとは言い難い作品だと思います。今後のガンダムではこの鉄血より悪いシナリオにはならないように祈っております。