ウェスタンガール さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
羊たちの主張
このアニメを観ながら、ふと思い出した絵がある。
子供の頃持っていたカラー刷りの百科事典、その中で見つけた不思議な絵だ。
それは一昨年全ての修復を終え、一般公開にこぎ着けた中世フランドル絵画の最高傑作である『ゲントの祭壇画』の一枚、別名「神秘の子羊の礼拝」とも呼ばれ、イエス・キリストを表す子羊が祭壇で生贄(いけにえ)にささげられる様子が描かれたものだ。
その作品に再び再会をを果たしたのはテレビ越しではあったが、それはそれは驚いたのである。ただの羊であったその顔は、製作当時の姿に修復され、我々を見据えている。宗教心など全くなく、ましてや拝金似非教団とのつながりなど無い私ではあるが、見透かされているような畏怖を覚えたのである。
印象的な“あのシーン”に被ったのである。
そして勿論、『羊たちの沈黙』につながってゆく訳だ。
原題は“The Silence of the Lambs”だそうだ。
ラムは、門歯(永久歯)が一本も生えていない子羊のことであり、純粋さの象徴であり、屠殺される運命を前に沈黙する姿でもある。
人間はどうだろう?
一般的には、永久歯が生え揃うと言われる(ネタバレ)歳。
思春期を超え、青年期に指しかかろうとする時期。
ラムがマトンとなり、やっと“らしさ”を押し出そうともがいて行くとき。
面白い作品であった。
この辺りにしておこう。
もう強烈なネタバレを遣らかしそうなので…。