てとてと さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
多重人格を扱った青春劇の傑作。一見ゴチャゴチャふざけているが実は完成度が高い
通称「おれつば」全12話。
※作品の性質上初見はネタバレなしで見た方が良いが、レビューでは不可能なので…
(一見)容姿も性格も異なる三主人公の群像劇に見せて、実は主人公は多重人格である。
【良い点】
多重人格主人公それぞれの人格と、関わるヒロインたちを魅力的に描きつつ、一本の線に集約していく見事なストーリー。
序盤こそ戸惑うが、3話早くも真相の一端を開示、以降情報小出しに開示しつつ12話まで飽きさせない。
フリーターやカラーギャング?的な陽キャなコメディーの掛け合いが豊富、頻繁にH萌えや中二病妄想が入り乱れ一風独特なコミカルさで楽しい。
一見ゴチャゴチャした群像劇で序盤こそ戸惑うが、不真面目で冗長な掛け合いや妄想エピソード等の茶番を通し、各キャラ(人格たち含む)の性格や関係性を丁寧に掘り下げており、一見不真面目な茶番にちゃんと意義かある。
例えば人格の一人、タカシが辛い現実から目を背けて異世界逃避しての中二病茶番とか、コミカルに茶化されているが、これが回が進む程に周囲のヒロインたちや他人格との関わりそしてメインテーマに繋がってくる。
実はかなり重いストーリーだが、殆どがコミカルに進行、真相の毒親シーンを最終話ちょこっと触れるに止める塩梅も良い。
茶番や適度な萌えで明るく楽しく、最後まで見ればきちんとテーマが伝わり、しっかり感動できる。
わずか12話でキャラが多い割には各キャラの魅力を描けている。ヒロインたちもサブキャラも良い。
シナリオの良さもさることながら、騒がしい活発な会話劇、ライトノベル寄りのゲーム的な掛け合いの妙が光る。
人格を代表して全話登場する隼人の飄々としたキャラが良く、回が進む程に魅力が増す。
妹ちゃんが、人格毎に好物を供するさりげないシーンで、兄の各人格を受け入れてくれている事が分かる一幕で健気さに萌えたり。
群像劇としての完成度が非常に高かった。
何気にカラーギャング?たち、陽気なアウトロー連中の存在も大切。
店長も含め、陽気で気の良い彼らとの交流がとても良かった。
OP映像でもヒロインたちと同列に彼らの笑顔も映っている。
後半はメインヒロインのアスカちゃんのヒロイン力高く、入れ替わる人格全員殴りまくる11話はコミカルにして名場面。
「違う世界に逃げてもいい、この世界で生きる大切なことを持ち帰れるなら」
「俺たちに翼はない」のタイトルに対し「翼が無くてもいい」
ヒロインたちはどの子も大らかで少し変わっているが、実は主人公の色んな面を彼女たちが受け入れてくれたからこその物語。
周囲の対応がポイント、どの人格も肯定してくれる人々に支えられて成長する。
最終話の主人公「世界なんてお前らの中にあるチャンネルを捻ればいくらでも変わってしまうものなんだぜ」と総括も素晴らしい。
作画は抜きん出てはいないがキャラデザがかなり好み。
アダルトゲーム原作らしいあざとい萌えシーン多々あり楽しめる。
声優陣はゲーム出演中心の方が多いが適役多く、小鳩ちゃん役の又吉愛氏が良かった。
楽曲も良し、OPは往年のアダルトゲーム原作系の持ち味感じる良曲、サビが盛り上がる。
【悪い点】
序盤3話くらいまではキャラと展開がゴチャゴチャ&冗長な茶番に辟易する可能性。
4話以降グングン面白くなるし、二周以降だと序盤から伏線だと分かるけれど。
意味があるとはいえ、茶番やH萌えおふざけのノリは好みが割れるか?
キャラデザ自体は可愛くて好みだけど、女の子の描き分けがやや不十分。
【総合評価】9~10点
群像劇路線のアダルトゲーム原作アニメの秀作。
評価は最高かかなり迷う「とても良い」
ホーク卿の茶番、昨今のなろう系異世界転生を揶揄しているように思えて面白かった。
いや、異世界系自体は好きなんだけど。