退会済のユーザー さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:----
オール・オア・ナッシング
野崎まど。以上。
これだけでわかるって凄い芸風だと思う。
傑作orゴミ、と両極端。作家性ってこういうことか。
アリです。ケチのつけようもないとは流石に言えないが。
物語・野崎まど
作画・臨場感溢れる演出
声優・まさに怪演
音楽・癖になるメインテーマ
キャラ・曲世劇場の躍動感
作品数は少ないながらも強烈な作家性でアニメ界にもその名を轟かす野崎氏。十数年に一枚のペースでアルバムを出す大御所バンドのような存在感と安心感。まどマギ以降、如何にして視聴者の予想を裏切るかを主題にした、もはや内容よりも意外性そのものが本体であるかのようなビックリアニメが粗製濫造されたアニメ史においても異質な輝きを放つ野崎作品。まどマギの高評価は時代性やリアタイ要素が大幅に加味されたものであり、ムーブメントの当事者性の無い白紙の状態での視聴においてはもはや歴史的資料価値しか感じ取れない者も少なくは無い。
その上で本作である。本作は時代性や当事者性、老若男女すらも問わず観た者の感情を容赦無く激しく揺さぶる驚異的なパワーを持ち、そしてそれは現在においても微塵も損なわれることはなく、数十年先の未来においてもその輝きが失われることはないであろうと推測される。それほどまでにギラギラとした切れ味が損なわれない稀有な作家であろうと言える。
「正解するカド」同様に本領はむしろ後半であり前半はただのエサ。悪くいえば熟練した釣り師とも言える。不要な物は描かないのがアニメの正義というチェーホフ教の方にはノイズまみれの悪そのものなので不快極まりないでしょう。
情報量の多さで畳み掛けたのち急展開で締める初回。二転三転どころか縦横無尽に変化する展開。畳み方の予想もつかないほど急速に拡大する大風呂敷。序盤においては観る者問わずハイスコアを叩き出す期待感。浦沢直樹に並ぶとも劣らない圧倒的な吸引力。もちろん戸惑う場面も多かったですけど自分は一気見でした。
が。まあ否定派のおっしゃる事もまことにごもっともで正解。
変幻自在で神出鬼没、アニメ史に名を刻む存在感を示すヴィラン曲世愛は凶悪犯罪者というかほぼミュータント。もう空飛んだりワープしても驚かない。常識が歪んでるというよりは環世界からして違うのでやってることはほぼ寄生獣。寄生獣は漫画媒体なので長期連載による世相の変遷を鑑みて途中で路線変更をしてますが、これは小説なので最初から最後まで一貫して構想通りに展開してるはず。まどマギの様に壮大な設定に見えてこじんまりとした設計によるシンプルで簡潔なわかりやすさは皆無で、いったい誰が主人公やねんと不意に着地点を見失う居心地の悪さ。それでいて最後はほぼUSA!USA!になるという。大統領カッコよすぎ。彼の意図を汲んでの勇気と判断力からもやはり正崎が主人公でしょうか。これマジで日本でしか作れないだろ。架空の国でもない列強の首相たちにあんなこと言わせて大丈夫なのかと心配になる。
善=続けること、悪=止めること
この作品を最後まで見続けることが正義というわけです()
「善とは何か」に言及する勇気は買うが勿論万人が納得する真理というものはないでしょう。だからこそ考え続ける事が大事って言ってるわけだし、それと似た様なセリフはジョジョにもある普遍的なマインド。コレジャナイって思った方はモロなタイトル「善の研究」ってのもあります。アレはアレで一応の帰結はありますが勿論鵜呑みにせずに考え続けることが大事でしょう。
胸糞ではあっても悪趣味かと言えば違うと思います。それなら正崎の奥さんと子供を○すのが一番効くはずなので。ミエミエに露出させといて「そこを○すのだけは勘弁してくれ」とハラハラさせる装置で済ませてくれたので個人的にはヨシ。オチも予想通りというかアレしかありえない。顔見せずに小道具だけで示す方が好みだが流石に不親切かな。
心地よい肌触りとわかりやすさで向こうから寄り添ってくれるシンパシー作品。
意味がわからない創作的世界に自ら能動的に向き合う必要のあるワンダー作品。
泣けて感動して感情移入が正義とされる時勢で貴重なワンダー枠。ここもメタ的。
余談
コレが気に入った方には実写映画「プラットフォーム」もお勧め。本作以上にグロくてキモくて何も説明しないまま終わるヤツ。自分はコレもソレも傑作だと思いますが逆にコレを見て憤慨された方にも興味本位の怖いもの見たさでお勧め。ふざけんな時間返せ度合いはコレと比較にならないレベルで凄いと思います。人によってはトラウマレベルの相当に酷い凄まじいグロいスプラッター描写があるので自己責任で。