Tnguc さんの感想・評価

3.5
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態：観終わった

アニメとしての面白さよりも競馬そのものの魅力が光る作品

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　史実上の競走馬たちを擬人化させた「ウマ娘」なる少女たちが日本一のダービーウマ娘になるまでの努力と友情を描いた美少女スポ根アニメ。本作で描かれた主人公・スペシャルウィークの物語は、第一に史実をベースにしており、ゆえにノンフィクションだからこそ込み上げる感情のうねりがある。お母ちゃんのため、日本のため、友だちのため、そして何よりも日本一を目指す自分のために、あらゆる夢を背負いながら走るスペシャルウィークの姿は美少女アニメを超えたスポーツ精神の塊が宿っている。そしてこの熱量を超える歴史のドラマが２０世紀に本当にあったのだから凄い。下手な脚色をしなくてもドラマとして十分に通用するだけの世界が競馬にはあり、そこで描かれるウマ娘たちの努力の姿を見ていると、これは間違いなくスポ根の領域だと言える。そして、沢山のウマ娘が登場しながらも、物語の主軸はスペシャルウィークとサイレンススズカのみに絞っているため、無駄な回が一つもないまま進行できたのが素晴らしかった。この作品は、夢を叶えられなかったり、生まれる時代が早すぎたり、様々な「たられば」の中でくすぶっていた競馬ファンたちの夢を叶え、世代を越えた夢の共演が同じスタートラインに立つ。これは、競走馬たちが別世界で救われる御伽話であると同時に、あり得たかも知れない未来や、悲しい思い出を掘り起こした、ある種の禁術とも言える。それでもなお、彼女たちのメイクデビューを再び眺めているような、そんな気持ちにさせてくれる夢物語である。そして、史実を知ると、スペシャルウィークだけではない、登場する競走馬たちのどれもがドラマを持っており、みなが時代の寵児たちであることを知る。たとえそれが人間の作り出した数字だとしても、競走馬として生きることを強要された馬たちの人生だとしても、夢破れて帰る家を無くした馬たちもいれば、引退馬として余生を過ごしているのはごく一部である人間の身勝手さ、そんな過酷な運命を全うする馬たちの命の輝きを「美しい」という言葉のみで正当化することしかできない人間の業には複雑な気持ちしかない。だが、この「ウマ娘」という作品にはそれがない。理想的な競馬の世界は、人々の酸いも甘いも置き去りにして、光る大地の上で少女たちの肉体だけが美しく疾走する。作品としてよりも、ギャンブルの影で隠れていた競馬そのものの奥深さを知るきっかけになるという意味ではとても価値のある作品である。競馬にはきっと多くのドラマと歴史があることを教えてくれたこの作品はかけがえのないものであり、戦車とか戦艦とか、美少女とミックスされた色んな作品群の中で、なぜ今まで取り上げていなかったのかと思うレベルの逸材だと思う。故に、全体的に作画が微妙だったことがとても無念でならない。せめて走りのアニメーションくらいはまともにかけなかったのだろうか。アニメの基本だろうに。

個人的評価：★★★☆☆（３．５点）