栞織 さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
どう見てもこれはジブリ映画
新海監督作品ですが、どう見てもこれはジブリの人々の手で作られた作品だと思います。思えば途中で視聴を中止した「ニノ国」もこの手の匂いのする作品でした。宣伝では決してジブリの名前を出さない。しかし作画はどう見てもジブリ作品のうちの二番手作品、いわば「ゲド戦記」ぐらいの感じがする。ラストのクレジットで流れる名前の中に、ジブリスタッフの変名みたいなものが散見される。これがこの手の作品の特徴です。
そして後半の展開を皆さんアレに思っておられるようですが、見るからに宮崎監督の「シュナの旅」に出てくるインカマヤ文明の疑似文明の名残りみたいな描写が続きます。宮崎さん本気で三千里のペルーあたりが好きなんだ・・・と見ていてあっけにとられましたが、まあそうした趣味性の強い作品です。従いまして、監督のこのインカマヤ旅行記を俺は見せたいんだ!という熱意に根負けできない人には、この映画はついていけないことになります。私はまあまあ面白かったですが。ナウシカなどで出てくるあの変なデザインのメカとか巨神兵みたいな怪物が登場しますから。ただ新海監督作品ですので、声を大にして言うことはできないです。
話としてはそういうことですので、あらすじ的にはかなり破綻している部分があることをご承知ください。あまり丁寧にシナリオが練られていないと思います。要するにここでこういう活劇を見せたいとか、こういう行動をさせたいというのが先に立っていて、理由があとづけ的なつながりになっています。はじめに異世界の皇子?の兄の方がヒロインと出会うのも、あとになってヒロインが鉱石ラジオの芯にしていたクロヴィスの石を取り戻したいとか、そういうことなのか?と思えるというだけで、話の中ではっきりとした説明はなされません。そういう消化不良が多い作品です。
ただ作画はジブリ二番手風とは申しましたが、ものすごく細かいですし、「ゲド戦記」よりはるかにいいと思います。特に出だしの昭和40年代の頃におそらく設定されている日常シーンは、さすがジブリとうならせるものがありました。後半のインカ風シーンの作画もいいと思います。ただヒロインがトトロのサツキが作画崩れしているみたいな顔だったのは残念でした。アバウトなキャラのラインに設定したのは、作画陣があまり強力な布陣ではなかったせいなのでしょうか。しかし出てくるアガルタなどの地球空洞説の話は、私も昭和40年代に父の書棚でそのようなことの書かれた古本の文庫を読んだことがありましたから、その頃の自分を重ねて懐かしかったです。ちょうどこのヒロインと同じ中学生低学年の頃でした。その頃の自分なら取りそうなヒロインの行動の数々に、作画崩れしている顔も含めて、ちょっとタイムスリップしたような感覚でしたね。決してベストな映画とは言えないものでしたが、私には非常に思い出深い作品でありました。