たわし(爆豪) さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「セカイ系」の円熟
宮崎駿が古典的な話で日本民族の話を描き、押井守や富野由悠季がSFで人間の未来を憂うとするならば、
新海誠は庵野秀明と同じく、「現代劇」を描く事によって今の時代の「空気」を再現しようとする。。。。
相次ぐ異常気象、世界情勢や伝染病による人々の分断、失われた30年とも言われる長引く不況を経験する我々の気持ちを淀みなく映像化しようとする試みは今回の作品で「セカイ系への決着」として作られたのではないだろうか。
それほどまでに「君の名は。」と「天気の子」などの大ヒット作が荒削りの作品だとすれば、「すずめの戸締り」はきちんと丁寧に構成され脚本を練った秀作になっていると思う。恐らくは新海誠監督のキャリアで一番の出来だと思う。
宮崎駿や押井守にできないことは、人間を俯瞰してみるあまり「その時代の空気」を再現できないことであり、だからこそ普遍的な物語へと繋がるのだが、庵野秀明や新海誠はむしろ「今の時代」にしか興味がなく、ある特定の年齢層には絶大な支持を受けるような作品にしている。
映画とは普遍性も大事だが、今の災害や不況にもがく若者の気持ちをどうにか汲み取ろうとするその姿勢も非常に大事であり、特に「この30年間何も良いことがなかった」と思っている人には、「シンエヴァ」然り、この「すずめの戸締り」は大いに感動できると思う。
今回は正直、ベタ褒めでいい。。。
それくらい新海監督は「今を生きる若い人たち」に最大限のエールを贈っている。