てとてと さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
角川のタイムトラベルアドベンチャー映画
91分。高校生たちと先生が、未来人の時間逃亡に巻き込まれ、太平洋戦争や戦国にタイムスリップしていく。
【良い点】
タイムトラベルアドベンチャーとして良く出来たストーリー。
過去と未来が交差する、タイムトラベルを巧みに活かしている。
ヒロインたちが未来人の時間逃亡に巻き込まれる形で日本の戦乱期を体験していく過程で、仄かなロマンスや切なさ、戦乱の虚しさ、未来の管理社会ディストピアに対する自由の在り方、歴史から目を背けるべきではない云々のメッセージがさりげなく盛り込まれている。
90分に詰め込み気味ではあるがテンポが良く、キャラ描写や交流シーンも悪くない。
中盤は関ヶ原、終盤は本能寺の変に関わる未来人同士の歴史改変の攻防でサスペンス的なハラハラ感もあり飽きさせず。
キャラは地味だが各々しっかり自己を持っている感じ。
哲子(てこ)は奥ゆかしい昭和ヒロイン。
男子ふたりはあまり見せ場はないが、パソコン部のお調子者がいいキャラしていた。
生徒たちよりも先生の方が見せ場あり、地味だが大人らしい小心さと存在感併せ持っている。
キャラ間の雰囲気が良く、互いに良き友人同士な感じも良い。
戦乱を彷徨う状況な割に雰囲気が明るかった。
未来人たち各々のバックボーンも丁寧。
歴史改変を狙うサイボーグ?の執念と人間臭さなど、短い描写で各キャラの立ち位置や信念を描写。
東京大空襲中に出会った少年と哲子、戦国で森蘭丸に戦争中の少年の面影を見る、二度の切ないロマンスの余韻あり。
何気に幕末で夫亡くした老婆と、老婆に夫と間違われた先生のドラマも、一抹の切なさあり。
戦乱の時代を見分しつつ、未来の管理社会ディストピアで、過去(現代人にとっては未来)に核戦争で破滅する、その悲惨な歴史から目を背ける在り方に疑問を呈する。
ターンエーガンダムの黒歴史に先駆けたテーマだった。
キャラデザは古いが哲子は昭和の美少女で申し分ない。
作画クオリティーは高い。
声優陣は未来人の美少年アギノ・ジロを戸田恵子氏が艶のある好演。
戦時少年と森蘭丸が堀川りょう氏など要所で豪華。
【悪い点】
90分に詰め込み過ぎて余裕が無い。
テンポは良いがとりとめが無く感じる。
主要キャラは悪くないものの地味、あまり深い交流堀り下げが無い。
現代少年二人はあまり見せ場無し。
未来人組は割と濃密なドラマではあるが、終盤に詰め込み気味。
哲子と蘭丸のロマンスも尺不足でやや強引。
哲子たちと、未来人組のドラマが別々に進行する構図もやや盛り上がりに欠いた。
哲子たちが終始巻き込まれで時間改変攻防の蚊帳の外。
哲子視点では二つのテーマ(管理社会アンチと黒歴史から目を背けない)がイマイチ。
哲子たちとアギノの交流がもっと欲しかった。
蘭丸の行方も消化不良。
【総合評価】6~7点
尺不足で粗さも否めないものの、魅力を感じるタイムトラベルもの。昭和の地味な良作。
キャラと物語は4未満だけど数値に現れない総合力で魅力がある感じ。
評価は「良い」