nyaro さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
お別れを言われた感覚。なでしこは抽象的な存在になった。
見る前は女子高生部活モノではなくなって否定的な感覚を持っていましたが、劇場アニメ作品としては、悪くない出来だったと思います。
社会人としては悪意の無さと緩い感覚に現実味がないということもできますが、もともと女子高生の話から悪意の全くないリアリティはない物語です。社会人のストレスからの逃避というリアリティを求めてしまうと、ますます作品世界からの逸脱になりますので、本作の雰囲気はこれで良かったのでしょう。
ただ、やはり、この子たちの将来は想像に任せて欲しかったと思います。モラトリアムが許されない厳しい世の中なので、できれば成長しない世界を残してほしかった。1期の空飛ぶテントみたいな将来を妄想するような夢のある世界だったのに、現実を持ち込まれてしまいました。現実というのは社会ではなくて時間です。
チクワに象徴されますが、映画の主旨的に時間経過と増えて行く制約を受け入れながら、その時その場面に応じて楽しみを捨てないでいこうという風に見えました。
映画を見ていてその点での出来の良さを認めながらも、最後まで夢オチにしてくれないかなあという感情は残りました。
無理にこの娘たちを社会人に当て嵌めることもない気が。できる範囲で楽しむというのは、言われなくても分かってることですから。時間の経過を意識するとそこに達観があったとしても、どうしても寂寥感を伴います。
その寂寥感の正体は時間は経過し死に向かっているんだと言う現実であり、感動の種類がオープンエンディング的な「お別れ感」につながります。つまり、この娘たちの人生はこれから続くにしても「ここまでしか見せませんよ」というメッセージにも見えるということです。
さらに言えば、5人で集まろうといいながらも、この先はそれぞれの人生があるので、正月に数時間集まれるにせよ、こういう楽しみはこれで打ち止めという見方すらできると思います。そこは現実で嫌と言うほど味わった感覚なので、この子たちにまでそれを感じたくなかったかなあ。
それとこれはTVシリーズから思っていましたが、やっぱり本作の主役はリンちゃんで、なでしこって抽象的な存在だよなあ、と思います。内面があるようで内面が見えない、無垢性の塊というか、悪意もストレスも持たない究極の人間というか…TVでは欠点の描写が沢山あったので、目立ちませんでしたけど。
なんというか、女子高生ものとして「あずまんが大王」の大阪から「けいおん」の唯を経て、ついに人類が進化するべき「理想の人間」を描いてしまった感じです。形而上学的存在と言えばいいのでしょうか。
結婚しても、老人になっても同じ調子でいくんだろうなあ、という感じです。つまりこれ以上なでしこには感情移入できなくなってしまったとも言えます。
まあ、黒歴史とはいいませんが、3期も始まるし歴史のIFとして一旦脇において考えればいいかな、と思います。ただなあ、もうゆるキャン△はいいかなあ、という気分にさせてしまった感じは否めません。