かがみ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
物語消費の復権
東浩紀氏が「動物化するポストモダン」において主唱した「物語消費」から「データベース消費」への転換は、必ずしも個々の作品の背景にある「大きな物語=世界観設定」の衰退を意味するところではない。むしろ「データベース消費」を強力に加速させるための支援装置として「大きな物語=世界観設定」が逆説的に要請されることになる。このような逆説を端的に表したひとつの例として2008年と2010年にアニメ化された「ストライクウィッチーズ」という作品を挙げることができる。兵器と少女を組み合わせた「ミリタリー萌え」のイラストコラムというまさしく「データベース消費」の極致の如き企画を起源に持つ同作は、アニメ、漫画、小説といったメディアミックス展開を通じて、やがて「ワールドウィッチーズシリーズ」と呼ばれる壮大な「大きな物語=架空戦記」を構築する。そして同シリーズの名を初めて公式に冠した作品が2016年にアニメ化された本作「ブレイブウィッチーズ」である。本作はこれまでアニメ化された第501統合戦闘航空団(501JFW)とは別部隊の第502統合戦闘航空団(502JFW)の活躍を描く。時系列として本作は501JFWの1期と2期の間に相当し、また501JFWが欧州西部方面を担当する部隊であるのに対して502JFWは欧州東部方面を担当する部隊となる。すなわち、本作により同シリーズの「大きな物語=架空戦記」は時間的にも空間的にもかなり広範な部分の映像化が達成されたことになる。これはシリーズを長期に渡って展開する上ではかなり理想的な在り方といえる。こうした意味で同シリーズはデータベース消費を徹底する事で逆説的に物語消費を復権させた稀有な例といえるかもしれない。