てとてと さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
病院を舞台にした青春恋愛劇。泣かせ感動系ではなく、不確かでも生きる意味を描いた青春劇
不治の病で余命幾許も無い少女と、彼女に恋していく少年のラブロマンス。全6話。
【良い点】
題材からしてあざとく泣かせ感動系と思わせて、実態は主人公や主治医ら周囲のキャラたちの苦悩や青春の活力を荒々しくも力強く描いていく。
コメディーや破天荒さ(主人公や主治医らのリアルではあり得ない問題行動)も含めて、良い意味でライトノベルらしい軽快さと活力がある。
ヒロインが余命幾何も無い現実に直面し苦悩する重苦しさと、向き合う過程で青春の熱血な明るさのバランスが良い。
エロ本関連のエピソードは結構大事、本作が普通の高校生の青春劇というメッセージ。
どちらかというと恋愛以上に、青春劇として瑞々しい良作。
必要以上に感動や泣かせようとはせず、淡々と進行しつつ、「半分の月」のような薄暗く不確かな未来でも生きてゆこう的なテーマを真摯に描いている。
死を悲劇として泣かせるのではなく、前向きに生きていこう的な力強い物語。
入院中で余命幾許もないヒロインとのラブロマンスというベタなツボもちゃんと抑えている。
ヒロインのリカちゃんはこの手の王道な我儘めんどくさい系だけどしっかり可愛らしい。
宮沢賢治を引用する文学少女路線もあざとく、ロマンスを彩った。
ふたりの交流シーンは意外と多くはないけれど、少ない邂逅で互いに惹かれていく描写が瑞々しい。
主人公裕一は良い意味で子供らしく、重い現実に直面しながらもガムシャラに行動に移す若さが良かった。
リアルだと危険過ぎて許されない問題行動の数々も、アニメ(ラノベ)ドラマとして許容範囲。
こういう作劇こそフィクションの醍醐味。
入院中亡くなった多田老人や、裕一を助けてくれる友人など、周囲のキャラも魅力的。
特に元ヤンの看護師や不良主治医の大人ふたりの存在感も大きく、過去の後悔を引きずり若い裕一に大人げなく苛立ちをぶつける彼らもまた主人公だった。
裕一と主治医の確執や葛藤から、ひたむきに行動し想いをぶつける裕一と受け入れるリカを見て、主治医もまた決意を高めるドラマが良かった。
作画は普通だけどリカちゃんのキャラデザは可愛くて好み。
主題歌は主題に沿った良曲でじんわりと感動させる。
【悪い点】
尺が短いためか、主人公やヒロインの心情掘り下げがやや浅い。
ヒロインはともかく、主人公は自分でも気持ちの整理が付いていないタイプなので、分かりづらい。
展開も粗く、特に5話の看護師の悪友お姉さんにオネショタ食われちゃうシーンが唐突。
この点は「イリヤの空、UFOの夏」と似た問題点感じるけれど、イリヤの空よりは大分マシ。
良い点と裏腹、主な視点が主人公と主治医にあり、ヒロインの存在感がやや薄い。
良くも悪くも、あざとくお涙頂戴するタイプではなく、半分の月のように意外と印象が弱い物語。
悲恋で泣ける!を期待して見ると肩透かしかも。
良い点と裏腹、リアルでは許されざる問題行動が多い。
ここをアニメ(小説)と割り切れるか否かで評価割れそう。
伊勢の御当地アニメとしては背景描写が今一つ。
【総合評価】8~7点
ちょっと惜しい面もあるけれど、文学的な香りのする良き青春ラブロマンス。
あざとく泣けるタイプではなく、視聴後じんわりと良い作品見たなとなる、良い意味で地味な良作。
評価は「とても良い」