たばこ さんの感想・評価
2.5
物語 : 2.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 1.5
キャラ : 2.0
状態:観終わった
「THE がっかりアニメ」-終わり悪ければ、全て悪し-
これほど、後半で失速してしまうアニメは珍しい。
正直、後半は視るのが苦痛だったほどだ。
問題は、
●たたみきれないままの大風呂敷
だ。
とにかく、前半の出来はいい。後に続く展開を大いに期待させるような大風呂敷をどんどん広げてくれる。
しかし、その広がった風呂敷、ぱんぱんに膨らんだ期待という名の風船は、見事に後半で加速度的にしぼんしまう。
まさに
「THE がっかりアニメ」
だ。
挙げればきりがないが、不満が残る理由は大きく4つ。
●しぼんだ風船その1:「サタン」
悪魔の住まう世界の王、「サタン」。どんなに有能なエクソシストもまったく歯が立たない、最大にして最強の存在。
そんな設定だ。
ところが、こいつ、全然怖くないww
たとえば、物語終盤、主人公の弟・ユキオの意識をのっとって、人間界に降臨し、エクソシストや、主人公・リンと対峙するシーンがある。
まさに、サタンの圧倒的な力を見せ付ける、見せ場のシーンに違いない。
ところが、巨乳のイチ女エクソシストが、そこそこ歯が立ってしまう程度の実力なんである。できることといえば、名も無い脇役キャラを、「青い火」で燃やすことくらいで、メインキャラに対しては、瞬殺どころか、結局誰も殺せない体たらくだ。
そしてグタグダしているうちに、兄弟愛を再確認したユキオが目覚めることによって、あっけなく憑依が解けてしまう。
いったい、なんなのだこいつはwwww弱すぎるw
その姿は、まるで戦隊物のアニメに出てくる悪役キャラのごとき小物感っぷりである。
視聴者をがっかりさせるという意味においては、確かに圧倒的な力だった。
●しぼんだ風船その2:「エクソシスト設定」
エクソシストは、5つか6つくらいの特性に分かれるらしい。(詳しくは覚えていないが、呪術を唱えて魔物を消滅させるタイプとか、重火器で戦うタイプ、悪魔を呼び出して従魔として召喚するタイプ、剣で戦うタイプなどに分かれるらしい)。
もうお分かりだろうが、この設定、全く活きてこないwww
こうしたタイプ別の棲み分けを行う以上、それぞれの特性を活かした戦略なり、戦闘シーンなりの見せ場がしっかりと描かれても良いもんである。というか、それを期待する。
しかし、いずれの戦闘シーンも、バトルアニメ特有の、「切れた主人公の怒りの一撃」で全て解決してしまうご都合展開。
もちろん主人公のクラス仲間の中には、確かに、キツネの魔物を召喚する奴や、呪術系を得意とする奴など、設定上は、存在する。
が、このクラスメイトは、ほとんど見せ場がないし、全く役に立たないwww
ドラゴンボールの「ヤムチャ」や「テンシンハン」を彷彿とさせる、影の薄さだ。
それだけではない。
エクソシストにはピラミッド構造のヒエラルキーが存在し、強いエクソシストにはより上位の官位が与えられる。そして、その頂点には「パラディン」が君臨している。
最強のエクソシストに与えられる称号・パラディン。
さて、もうお分かりだろうが、この設定、全く活きないwww
金髪剣士のエクソシストが最初、パラディンとして登場するのだが、こいつがまた、案外強くないのであるww
というか、強いのか弱いのかが良く分からんww
終盤にいたっては、ユキオがいつの間にかパラディンの称号を与えられ、あっさりと最強エクソシストの名を冠してしまう。
じゃあ、ユキオちゃんは強くなったかというと、それもそうでもないww
毎度のごとく、ちゃちな「てっぽう」でチビチビと雑魚キャラを打ち落とすくらいが関の山で、中ボス級の敵が出てくると、さくっとやられてしまうwwそして、最後は、いつもどおり「切れた主人公の怒りの一撃」によって、全て解決。
哀れ、パラディン。
●しぼんだ風船その3:「友情」
物語前半は、たっぷり時間を費やして、クラスのサブキャラたちが掘り下げられる。そして、それらを通して、リンとの熱い友情が育まれていくのだ。
ところが、この「熱い友情」、後半で全く役に立たないwww
サタンを倒せたのも、結局は、双子の兄弟愛によってであって、この「熱い友情」ではないし、かといって、主要ボスキャラも、友人たちとの連携で倒すわけじゃない。
単に、リンとその仲間たちが、仲良くなりました、ってだけの話しで、この設定は後々でまったく活きてこないのである。
これだけ、サブキャラ描写に時間を費やしたにも関わらず、それらのサブキャラを全く活かさず、殺しもせず、意味の分からん「熱い友情展開」だけはところどころで脈絡なく織り交ぜる。
何をテーマに描きたいのかが、後半で全く見えてこない。
●しぼんだ風船その4:「世界の融合」
極めつけはこれ。多くのエクソシストが殉職した16年前の「青い夜」の真相が明かされる終盤・第23話。タイトルは「真実」。なぜ主人公の母親が死んだのか、そして、サタンの目的がなんなのか、これも明らかにされる。
なんとサタンの目的は
「悪魔界と人間界の融合」である。
平たく言うと、
「悪魔も、人間も、仲良くしようよーー」
ってことだ。
つまりだ、それまでの「悪魔vs人間」という対立構造を乗り越え、「両者の共存」という第三の選択肢が、この終盤になって始めてはっきりと提示されたのである。
もちろん、伏線はあった。
例えば、深海の悪魔「クラーケン」。
人間にとって、恐怖でしかなかった、大イカの魔物だ。しかし、討伐に向かった漁師はクラーケンと和解することに成功した。友情のようなものさえ芽生えている。悪魔と人間が実は共存できることを示唆する一話であった。
他には、しっぽが二股のネコ魔物「ケット・シー」。
これも、上位の悪魔でありながら、主人公の仮親のジローや、主人公自身とも打ち解け、共存している。
まだまだある。キッチンに住み着き、料理を美味しくしてしまう魔物・ウコバク、ヒロインの使い魔である「ニーちゃん」などなど。
これらの伏線が、この23話において、ようやく回収されようとしている、そう期待した。
ところが、だ、続く24話、そして最終話の25話において、この長い伏線が、いっきに吹っ飛ばされるww
歩み寄ろうとする悪魔サイド、それを主人公と弟があっさりとぶった切ってしまうのだww
兄弟二人でサタンに剣を突き立てる最終話のラストシーンの会話を抜粋しよう。
サタン「なぜだ。なぜ俺とユリの血を引くお前らが、俺たちの夢(=人間界と魔物界の融合・両者の共存の夢)を壊す」
リン 「お前の夢なんて知らねー!」
ユキオ 「ただ、僕たちは」
リン 「大切な仲間を」
ユキオ 「この世界を」
リン&ユキオ 『守りたいだけだぁー!!』
降魔剣がサタンに突き刺さる。
サタン 「んぎゃーーーーーー!!!」
サタンがあまりにもかわいそうであるwwww
歩み寄ろうとした彼に対し、息子二人は徹底的なまでの拒絶っぷりだwww
間違いなく、サタンのほうが生産的な解決策を提示していたのである。人間と悪魔が共存できる可能性を彼は模索したのだ。それが、最愛の妻だったユリの遺志でもあった。
ところが、のぼせ上ったこの兄弟はまったく理解しようとしない。彼らがやろうとしていることは、単に、問題を先送りしているに過ぎないことに気づかない。
確かに、サタンを一時退却させることには成功した。しかし、人間と悪魔の軋轢は依然として残っているし、不毛な対立は続くのである。
サタンとユリはそれを止めようとした。それが、この馬鹿兄弟には分からないのだ。
一体全体、これまでちりばめてきた「両者共存路線」の伏線、そして23話の「真実」は何だったのだ、と首を傾げざるを得ない。
以上、随分長くなってしまったが、本当に、前半の出来がよかっただけに、後半の糞展開が残念でならない。
どうやら原作の漫画が完結していないため、18話以降が完全にアニメオリジナルのシナリオになってしまったことが原因だと考えられるが、ポテンシャルのある良作アニメを、商業目的で駄作に変えてしまったことが、重ね重ね、残念で仕方が無い。