「チェンソーマン(TVアニメ動画)」

総合得点
79.6
感想・評価
659
棚に入れた
1992
ランキング
496
★★★★☆ 3.8 (659)
物語
3.7
作画
4.0
声優
3.6
音楽
3.8
キャラ
3.8

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ネタバレ

ハニワピンコ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 3.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

「漫画」であって「映画」じゃない

ついに放映された、ジャンプに現れた対魔ダークファンタジーの傑作でありながら、幸せや自由という普遍的なテーマに新たな視野を持たせた、ジャンプマンガ新時代の異端児である藤本タツキ作品『チェンソーマン』

原作は、確かTwitterかジャンプ+で本作のPRとして出されて読んだ、SQ掲載時のセンターカラーに裸体を持ってくる読み切り『姉と妹』は正直、去年出た短編集で読み返すまで内容は忘れていたが、最初の部分だけは鮮明に覚えていた。それが『ファイアパンチ』の作者である事はもう少し後で知るのだが、とにかく、この作品の導線に従って当時出ていた巻を買って以降ずっと読んでる
ガチガチにネタバレして当時の回顧録を綴ると
{netabare} 感覚としては、夢バトルやその後の永遠の悪魔編でネット上やジャンプ読者を鷲掴みに、レゼ編の完成度の高さで読者の評価を上げ、闇の悪魔と雪合戦で一気にジャンプ読者以外のマンガ読みにも広がったと認識している(特に発行部数の伸びも8→9巻が凄い) {/netabare}

現在連載中の2部も、欠かさず読んで当時本誌で読んで感じられなかったライブ感と絶望感を感じています

アニメに対してや、それに付随して発生した様々な出来事について広く語っていく。感想は映像作品というフィルターを通して受け取った内容から述べられるものであり、原作からの比較が多めになると思う

1話見て感じた、前に投稿した最初の感想

{netabare}
一枚絵に流れを産むというやり方

1話を観て、このアニメの描き方について思った事があるのでそれを少しだけ。2話以降ももしかしたら書くかも
本編の感想は完走してから

原作既読。ここ最近のジャンプでは一番好き。今期一番に期待している

では本題。ついに放送された1話で、確かに動いてはいるけれど原作にあった絵のカットや迫力という点で否定的な意味では無いが思う事が結構あり、それについて色々と考えていく中で、何故そうなのかという部分を考察したので記す

本当に静動的で流れを感じるというか、演出は映画的で、漫画でもあった一枚絵や見開きというポイントを敢えて少なくしてアニメーションという動きに着目した作りになっている
漫画でよくある、見開きで必殺技をデカいフォントの技名と共に描かれたページという所謂“決め画”を上手く再現するアニメは昔からよくあるが、それをアニメで表現する時は大抵原作と同じような構図の一枚絵を数秒映すという方法が多く取られており、そういう、『ワンピース』で言うところの「ドン!」のシーンって映画ではあまりなく、それを止め画ではなく動的に表現しようとしたのがこのアニメ『チェンソーマン』であると思った
ゾンビの中からチェンソーとして出てくるデンジのシーンなんかがそう。あれは原作では一枚絵で、デンジが中央からバッと出てきてその後にチェンソーのアップの絵が描かれているのに対して、アニメでは端から一気に弾けて次の動きという形になっている

なので、漫画の再現という点で期待していた原作読者からは批判の声が挙がっているのではないかと思った
個人的には確かに動いてはいるけれど、やはりアニメに求めているのは派手なアニメならではの演出や構図や動作であるし、原作をカットされて出来た物が期待以上であったかは、その挑戦を100%応援出来る出来ではないと言うのが正直な意見
でも意見として出ている"原作を完璧に再現しろ"というのには賛成出来ないかな

しかし、CGIに関しては作画とほとんど違和感なく見れたし、アニメーターさんのツイートでCGIだと勘違いしてた部分が分かったり等、クオリティは凄いと思う

挑戦や一話の動きやスタッフのツイートや意気込みなどで渾身の作品であるという事は十分伝わったので、2話以降もやはりしっかりと観ていきたい
{/netabare}



ここから全話見終わっての話。本編
まず第一に、原作は「まるで映画のよう」であって「映画じゃない」んですよ。別に映画を目指している訳ではなくて、漫画という媒体の表現技法の一つに映画的な要素を組み込んでいるだけで、あくまで漫画なんですよ
原作に入ってくる映画要素やパロディは、取ってつけた様な物ではなくて現状に関連したエッセンスの一つに過ぎないんですよ。それがアニメではあたかもこの作品のアイデンティティかの如く推されているのは、この製作陣がどう理解しているかが分かる重要な要素で、最大の失敗点

原作はトップスピードのジェットコースター展開で進んでいく中で、漫画という媒体で様々な表現用法を使ってるんだよね。大ゴマ ページの引き、無音のページ 視線誘導、コマの繋ぎでの微妙な変化(特にコレ。同じ人物を複数のコマに渡って細かい変化などを描いているのが原作の特徴)など。それらを駆使してトップスピードな中でも見せたいドンとしたシーンや、間の小さいコマで緩急がつけられて読んでいて心地が良い作りになってるんだよね。まぁ漫画の読み方は千差万別だし、映像化する以上決められた流れで映像を流すのでその解釈が合う合わないはある。けれど、そのアニメ側の解釈、映像と読んでいた時の流れの乖離を少なくしようとせずに、全く別の、実写映画的な動かして静動を感じさせる作りになっているのが、この「アニメ チェンソーマン」である

アニメの演出について、演出論の観点から見ていく
{netabare}
漫画の大ゴマって緩急を付けるのに大きな役割を担っているんだよね。例えば戦闘の動きはいくつかのコマ割りで表して、そのキメの部分に大ゴマ 見開きなどを入れて一連の動きを締める“結”の役割。そうする事で動作の起承転結が容易にわかる様になり、これらを一連の動きとして認識して、一旦区切りを入れる事ができる。そうして次の動きと繋げていくのがよくある漫画のバトル描写で、原作でもよく意識されている部分なのだけれど、アニメ1話のゾンビの中からチェンソーとなって出てくるシーンや、最終話のサムライソードとデンジがビルぶっ壊して登場するシーン等、この感想でも前述した様に決め絵を動かすという演出を行なっているこのアニメには、ただでさえ難しい映像作品の緩急の付け方を大ゴマ 決め絵を削って更にやりにくくしている

そうしてどうやって緩急を付けていくかと言われて行われている方法が、映像や音楽のブツ切りやスローであり、ハッキリ言って短調である
どれも平坦。全て4コママンガのコマ割りの如く一定のスピードで流されていくのを、音楽や動かす事で映像として成り立たせているのかもしれないが、漫画という媒体にはコマ割りや大ゴマ利用という見せたい場面の引き立てや、ページや見開きを利用した“魅せ場面”があるんだよ。それを感じさせる様な演出や作り方をしてない映像作品となっている以上、原作を読んでいた時に感じた流れを求めていた『チェンソーマン』のアニメ化とは違うと思う人間が現れるのも当然である

あと、小さいコマでの微細な表情などの変化を得意としていた原作の部分は結構理解されてない部分も多かった。デンジのポチタへの目線、会話シーンでの目線の変化や顔の向き1コマでの表情の変化、あとこれはTwitterで見た物だけれど「マキマの京都からの攻撃で飛び散った血が顔に付いた沢渡が拭うととれる原作なのに、アニメでは顔に血が付いてないのにとりあえず手を顔に付けて拭う動作をしている(無線の為に耳を塞いでるみたいな意見もあったけれど頬を強くギュッとしている風だし、次のページでその頬の血は取れてるから拭ったと見える)」みたいな、その些細な変化を描いた原作の要素を拾いきれてないのはあった。まぁこれは膨大な作業の中の一つだし、実際これは映像は流れていく以上難しいことではある

色々思うところを言ったけれど、今作の演出の仕方が一方的に全て悪かったとも言い切れないシーンの作り方があったのも事実である。特にコウモリ、ヒル辺りはデンジの仔犬の如く必死に抗っている姿が、素早い動きの描写によってさらに無鉄砲なヤバさが伝わって良かったと思う
日常シーンも、外側から切り取るというか動く 動かないのメリハリがちゃんとしていて挑戦的なカメラワークなども相まって引き込まれる
{/netabare}

また、脚本面でもアニメに際して原作エピソードを1話24分にどれだけ盛り込めて構成するかという事にかなり厳しいところがあった
{netabare}
特に、5〜7話の永遠の悪魔編は2話弱分(5話Bパートと7話Aパート前半分)の尺を使って6話の引きに溜めに溜めたチェンソー化の引きを使ってるのに7話の比重をゲロキスに置くってマジでなんで?遂にチェンソー化して悪魔みたいな作戦行うデンジの頭のネジがブッ飛んでるって、永久機関の迷台詞と共にカタルシスが得られた原作とは違って、攻撃を受けたり受け返したりしてるシーンを動かす為に引きで攻防を描いているのはちょっと淡白というか痛い痛い言ってる割には攻撃が重くない。これだったら一枚絵をスライド挿入で何枚も続けた方が迫力ありそう。それにトドメは永遠の悪魔単体でやられるだけの描写って。マジで迫力が無い
姫野の尺の割き方も、正直ゲロキスとアキに最期に呪いの言葉を捧げて散る部分以外、デンジと同じくらいの「泣けねぇ」印象で捉えられるキャラだったのに、変に広げようとするよりは他に回して欲しかった
それ以降の尺の使い方は、自分は結構好き。特に日常の崩壊という唐突さが、前半にゆったりと尺を取って後半の超展開。そのままのスピードで次回に回すというのは上手いと思う
{/netabare}

以上が大体のアニメ本編に関しての感想
もっと色々あるけれど、流石に長くなるのでここら辺で。まとめるなら一話の時に抱いていた期待とは全然違ったかな

原作の『チェンソーマン』というコンテンツからアニメについての見方
{netabare}
製作側も勘違いしているのが、この作品ってそもそも一般受けはしないんだよね。選ぶ人が多い作風や展開だったけれどジャンプ読者 漫画読みの中では選ぶ人が多かった。それは今までとは違うぶっ飛んだ型破りな展開を描いてきたから
でもその“普通”とは違う要素を選んで描いていく中で、一般受けに重要な「少年マンガ」らしいカッコよさや泥臭さは捨ててるんだよね。写実的でリアル志向な描き方は漫画としては面白いかもしれないが、「少年マンガ」としては物足りなく感じる。ハッキリ言って展開は衝撃的なだけで燃えない。だから一般には受けない
バトル中に成長して一気に形成逆転することも、起死回生の一手で絶望的な状況を仲間と一緒に乗り切る事もない、衝撃と絶望を与えて“溜めた期待”を希望ではなく儚さで消化してしまう構成な以上、読んでいて燃える様なことはなく、「漫画」として印象には残るが「少年マンガ」としてはあまり褒められた物ではないというのが実際のところ

この作品が漫画読みにウケたのはいいが、それを一般にも広めようとしていたのが『アニメ チェンソーマン』であり、その絶妙に勘違いしまくった結果がプロモーション方法や製作方針であり、その期待は実は全く空っぽな物なのだと気付かなかったのは見る目が無いとしか言い様がない
{/netabare}

その他話題になったOP EDについて色々語っていく
{netabare}
『KICK BACK』のイントロ ABメロ サビ アウトロの隙のない盛り上がりと理解度の高い歌詞、そしてネタ要素とどれを取っても申し分ない。米津好きとしても、ハチを感じるイントロからの暴れっぷりやサビ前の溜め等がアニソンと親和性高く、上がりまくったハードルの中お出しされたこの曲のインパクトは凄まじかった。 OP映像も流石yama演出で細かいカット割で素早く入れ替えていく中でしっかりと印象に残る小ネタや、原作への理解を感じる映像を作り出してまさに作品の顔として出来上がっている

結構言われているし、まぁ商売だからって言えばそうなんだし結果論だけど、アニメのEDという観点から言えばここまで多くなくて良かったんじゃ無いかな。商売目線で言えば名を売るには大いに役に立ったでしょう
せっかく12曲もあるので好きなやつやらを並べてみたいと思う
好:
Chainsaw Blood
一番好き。序章を締めくくる曲として最高じゃあないっすかぁ… 他の曲は各エピソードに沿った曲調だけれど、これこそザ・チェンソーマンって感じの曲

刃渡り2億センチ
正直デスボの所はよくわからないけれど、それがあってこそのサビの爽快感半端ない

インザバックルーム
映像が凄い。曲もちゃんと盛り上がって面白い歌詞で担当話のEDというのを生かしていて凄い

Deep down
映像100回見ろ。マジで凄い一つの作品として出来上がっている。繋ぎも描き方も上手すぎて流れているようで丁寧な映像に魅入った。曲も雰囲気に合っていたし流石の歌声

DOG LAND
ラスサビ転調も入れてきたし単純に気合いが伝わって好き。ある意味一部のテーマをここの修行パートで表現してくるかと思った

普通:
残機
期待値が爆上がりしてたからね。結構落ち着いているなーって感じ。まぁ前後の強大な壁に挟まっている緩衝材として気軽に聴ける

錠剤
映像凄い。自身の味も出していていながら丁寧に作られているから雰囲気がマッチしている小ネタも多いし楽しめる

バイオレンス
印象に残らなかった。CMの影響かもっとバイオレンス バイオレンス言ってるのかと思ったから改めて聞いたら思ってたより落ち着いてた

ファイトソング
締めの曲として良いね。早川家の曲として機能している

その他:
大脳的なランデヴー
めちゃくちゃ似てる某曲の影響かサビが無いと満足出来ないのはマジで仕方ない

ちゅ、多様性。
敢えてそうしてるのか知らないけど70年代にありがちな露骨な韻踏みの最初のフレーズしか合ってない歌詞好きじゃない。あと7話のメインを永久機関からゲロキスにした不満もある。ショート動画で“消化”される程度の曲

first death
いつものTK。もはや区別が付かない。サビ前の小声パートももはやお約束。8話のEDとして一瞬で過ぎ去ってあとはわざわざもう一回自発的に聞く事も多分無い

わざわざ3パートに分けたけど、正直印象としては“チェンソーと刃渡りか“それ以外かって感じ
{/netabare}

長々と語って、結論から言って正直かなり自身の思っていたものとは違う出来に戸惑った作品であるが故の、書き殴った感想とは程遠い何かになってしまったコレは、原作を読んでいる一人の意見として、原作厨だと吐き捨てられても、意見の一つとして見られても構わないと思っている
でも実際、何故ここまで中々な意見が交わされるアニメ作品という事になったのかを考えていくと、まぁ原作がそもそもかなり他の人の手によって改めて作られるというのが難しかったという事もあるし、それを引き受けた制作の大言からの、出来上がった物が元々の期待とは180度違った演出や映像の描き方、原作の解釈の仕方などがそもそも挑戦的だったにも関わらず、その挑戦を100%応援出来るほどではない程度の、ただ動かす 実写的にするなどの作り方をしてしまったというのが結局の原因なのではないだろうか
仮にその挑戦的な演出をするとしても、原作の演出の意図や拘りを理解して、それを踏まえた上でどう昇華させるかというのが期待していた人達の求めていたものであり、正直その理解を見て取れない以上、残念だと思ってしまったのかな
本当に長くなってしまった。ここまで読んでいただきありがとうございました

投稿 : 2023/01/18
閲覧 : 229
サンキュー:

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