Tenjin さんの感想・評価
4.9
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
量より質がもたらすリアルな空気感
主要な登場人物が少ない(前半は2人、後半になっても3人)が、その分とても描写は丁寧。
何もなかった日常がバイク(カブ)と出会うことによって変わってゆく、それを静かに見つめるような視点で見せている。
同じように細かい描写が特徴のアニメではあるが、「明日ちゃんのセーラー服」は動、こちらは静といった傾向の違いはあるかも。
ドビュッシーなどクラシックの名曲も使ったBGMは主張しすぎずに寄り添う感じでとても良い。
主人公の小熊の気持ちが高揚するとき、通常は色調抑えめの画面がフワッと色彩鮮やかになる演出は一種の発明。言葉でなく映像で表現するアニメの利点をよく生かしている。
前半最後の6話で小熊の成長が一段落した感はある。修学旅行先の神奈川へ山梨から一人で敢行したロングツーリングは、何もなかった状態から独り立ちした象徴と言っていい。
着いた先では先生の言いつけに背いてまたバイクに乗り、道交法違反の二人乗りまでしてすっかりワルになっているけど、それもいわば自分の殻を破る通過儀礼みたいなものだと思う。
まあ、9話のブランデー入りの紅茶を飲むシーンで出したような(「量が多いと飲酒で罰せられるから注意」)テロップで注意喚起しても良かったかとは思うが。あるいは、二人乗りをしても問題がない礼子に運転手を変えるか。
7話以降は成長した小熊の腕試しミッションのようなものじゃないかと思う。文化祭準備でトラブルの解決を申し出た場面は、以前の小熊なら間違いなく傍観したままだっただろう。
(直接のきっかけは原付きバイクをバカにされた事だとしてもw)