pister さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
ありふれた現象だけどそれを指し示す名称を私は知らない
原作未読。
一期の監督であるよしもときんじ氏の急逝により二期はどうなるのか?と危惧したが普通に始まって良かった良かった。
というか、スタッフに不幸があったと聞くとその作品を悪し様に言うのはどうにも抵抗を覚えてしまうもので…それこそ一期がアレだったのは作ってた当時から監督は体調が悪かったせいかも知れない、なぁんてことを思ってしまうワケで…。
ってことで、一期の評価は完全に白紙状態にして、まっさらな気分で二期を見ることに(むしろ監督交代の支障を考慮して甘めに視聴)。
──なのだけど、いやぁこれはこれは…。
この作品に限った話ではなく、普通につまらない程度で殊更になじる程でもないが、非常に分かり易い(説明しやすい)実例が出たので頑張って説明してみる。
1話、一期でハジメによって計画を挫かれた魔人族のリーダーのフリードは、イレギュラー(ハジメのこと)に対抗する更なる力(神代魔法)を手に入れるため大火山へ向かうと宣言。
もう一度言う、対抗するための力を手に入れるために大火山へ向かう、つまりすぐさまハジメと一戦交えようということではない、「これからイレギュラー討伐に向かうぞ」ではない。
一方のハジメ達は、2話でアンカジ公国を救うため静因石を求めてグリューエン大火山へ向かうことを決める。
かくして両者の言い分から「3話は取るものも取り敢えず鉢合わせしてしまう展開になるのかな~?」と思ったら…あれ、なんか違う、フリードはとっくに準備万端、軍勢を率いて罠まで張って待ち構えてた状態。
そりゃあね、ハジメに気付かれないうちに先に発見して用意してたんだろう(であるならミハイルを連れてないのが不自然だが)、エンタメとして気にしない範囲と言われたらそう。
ここまでは重箱の隅、問題はここから。
不意打ちを食らいハンデを負ってたとはいえ、ハジメはフリードにちょっと怪我を負わせた程度しかできていない。
逆に奇妙なほど準備のいいフリードは、この火山が“要石”によって一度も噴火してないことを見抜いててそれを破壊してハジメ達をマグマに沈める計画を実行する。
同時に火口周辺を配下の竜で取り囲み、空を飛んで逃げるのを封じるという念の入れ様・奇妙な準備の良さを見せる。
で、ハジメはどうしたかというと…単身ティオだけを上空の包囲網から突破させ、本人はほうほうの体でマグマの中を進み、マグマの中を耐えられるか不安のあった船に乗り、海底を伝って外海へ脱出…。
──脱出?…まぁ脱出劇ではあるんだけど、正直これって敗走だよね?
勝つ自信があったらティオだけじゃなく全員で包囲網を蹴散らせばいいのに、追い詰められて運否天賦の賭け(不確かな船の耐熱性能)をさせられ、コソコソと海底から逃げたんだよね?
これって結構な屈辱だと思うのだけど──何故かハジメは悔しがる様子を一切見せない、余裕ぶってオラつくばかり。
敗走したのが悪いのではなく、敗走したのにそれを省みない主人公の思考はなかなかに受け入れがたい。
臥薪嘗胆の意気込みを見せるならまだしも、自分は惨めな目に遭ったということを自覚すらしてない、どんなに恥ずかしい行為をしても本人が恥と思わなければ恥ではないといわんばかり。
特に個人的に一番「えええ」と思ったのは、脱出後のうのうと海上の町エリセンへ向かい、そこで呑気に家族ごっこ&海底遺跡探索を始めたところ。
いや、その…ハジメを追って魔族がやって来て町が火の海になる可能性は、考えないの?
いつそんなことが起きやしないかソワソワして家族ごっこパートなんか全然心温まる余裕無かったよ、面白いかどうかは置いといて作り手がやろうとしてた意図が台無しだよ。
というか、火山の件はフリードはどういう判断を下したんだ?
「イレギュラーとてこのマグマに飲まれたらひとたまりもなかろう」なのか「まだ生きてるかも知れん、探せ」なのか。
もっと言えばハジメがマグマを抜けて海底に出た際サメのような魔物に追われるのだが、これが元からそこに居た魔物なのかフリードの配置した手下なのか分からない。
フリードの手下だったら生きて逃亡したのはバレるハズで…。
更にもっと言えば、ティオはマークされてるんじゃないの?アンカジは無事なの?(※)
長じてハジメはフリードがどういう判断を下したか考えを巡らせないのが不自然極まりない。
「今アイツはオレは死んだと思ってるハズ」なのか「追っ手がどこに居るか分からない、目立つ行動は控えよう」なのか…魔族はエリンゼを攻めないという確証でもありゃあいいんだけど、そんな描写は見受けられない。
もはや異常と言えるレベルでグリューエン大火山の件・フリードのことを思い返さない。
ということで、前述の「フリードが妙に準備がいい」と併せて、こんな考えが頭を支配することに。
作り手の脳が極度のシングルタスクで、今目の前で起きてる出来事(主に主人公の行動)以外は同時に考えられない、「一方その頃~」に思いを馳せられない。
興味のあることだけ書いて、興味の無い部分はスルー。
さながらオープンワールドのゲームで、視界に入ったモノだけロードされてそれ以外はロードされない…みたいな。
興味が無くてもストーリー上必要なら書くのが一端の作家じゃないかなぁ?とは思いつつもなろう作家に多くを望むのもアレだしなぁ…と思ってたら別の解釈が頭を過ぎった。
原作未読でこの作品がそれに該当するか知らないけど、一人称視点で書かれた小説であるなら、この手法も成り立つのかも?
良い悪いではなく相性の良いメディアってことね、そこでだったら気にならない話の運び方だったのかも知れない。
けどなー、そうだとするとなー、今度はメディアの違うアニメで、足りてない部分をフォローできてないのはどうなのよ?と懐疑心がアニメスタッフに向くことに。
ヘンな描写があればここがヘンだと簡単に言えるけど、描かれてないことがヘンって場合、前後の脈絡を解説して抜けてる部分に「こういう描写が必要なのに無いよね?」と説明しないといけないのでかなり面倒臭い。
(私が出来てるかどうかは不明だけど、スカーレットネクサスではホント苦労した)
なんとなーくで流し見してる人は違和感は覚えても「ここがヘン」とは指摘しづらいんじゃないかな、なんかズルい。
こういう現象ってこの作品に限ったことではないのだけど、むしろなんで頻発するんだか不思議でならい。
分かり易い例としてちょっと頑張って書いてみたけど、こういう現象を端的に言い表す言葉って何か無いですかね?
とはいえ、ひょっとしたらこの作品は仕方無いのかも知れない…と、またまた別の解釈が頭を過ぎったり。
急遽の監督交代によるゴタゴタの影響?
この考えは視聴中に抱いたものだけど、今こうやって感想を書くにあたり公式サイトを覗いてみたらおかしな部分があって「やっぱりそうなんじゃ?」と考えを強める結果に。
※の「アンカジは無事なのか?」について、公式サイトの二期四話の説明が…あれ?
「噴火する大火山の中に取り残されたハジメは、ここから脱出するための秘策を明らかにし――」とのことなのだが、噴火してなくね?
何を噴火と呼ぶのかにも拠るけど、地底のマグマが海水に触れて水蒸気爆発はしたものの(これを噴火と言うのならそうなんだが)、山の天辺から溶岩を噴き出す様なことは起きてない。
なんせ作中4話、マグマで船が斜め下に流されてハジメは「これが噴火だったら外に放り出されて楽なんだがな」と言っている。
「じゃあ3話でアンカジに残ったカオリに視点が移り、地面が揺れて「グリューエン大火山が噴火したぞー」と騒ぐシーンはどういうことだ?」というと、その直前、ティオが包囲突破した際フリードの追撃を阻止するためハジメのクロスビットが発射されて、それで起きた爆発をアンカジ住人が噴火だと勘違いしたから…と私は解釈してます。
いやぁ描写が不親切だから絶対にそうとは言い切れないんだけどねー。
けど、そうでないと──山の天辺から溶岩が噴出すような噴火が起きたとするなら──救護に手一杯でカオリはアンカジを発てない・ハジメと合流するのはもっと遅くなると思うんだ。
地震は起きてるだろうからそれを噴火と言えばそう言えなくもないが、とりあえずアンカジに大きな被害は出てないと考えるのが妥当かと。
まぁそれもこれも、描写が無い、思い返す・思いを馳せるシーンが無いのがいけない、原作読めって?ヤダよ。
おかげで公式でも解釈が分かれてるんじゃないか?
こんなことが起きるなんて、やっぱり現場は結構混乱してたのではなかろうか?と思い至った次第。
──が、ここまで書いた「まるで作り手はシングルタスクみたい」な現象は中盤以降(7話Bパート、ミュウと別れて以降)鳴りを潜め、二点を除いてはマトモな話運びになる(話運びがマトモなだけで面白いという意味ではない)。
ひょっとして、中盤以降は混乱が治まって現スタッフの本領が出せる様になった?
因みに二点というのは──
まずは9話A、ユエが「ハジメを傷つけた」と魔人族への恨みを吐くのだが、今までそんな素振り全然無かったじゃーん!
強く恨んでるなら平時(家族ごっこの時とか)でも頭の隅に思い浮かべろよって。
「あ、今思い出した、オレあいつのこと恨んでたんだ」って…それホントに恨んでる?って感じ。
ただこれは前半のヘンテコ時期の後遺症で、仕方無いの…かなぁ?
あと一点は10話、覚悟を決めた先生がティオのブレスを高めた結果、教会を壊滅に至らしめるのだけど…そのブレスを吐く映像が、無い。
遠くで煙が上がるだけ。
えええ、派手な見せ場になると思うのだが、そこを見せないってアニメとしてどうなん?
教会を焼き払うシーンがなんか問題あってストップかかったとか??
ってかそれ以降、大量殺戮してしまったと先生は凹み続けるのだが、スマホ片手で二倍速で流し見してる方にはどうして凹んでるんだか分からないんじゃなかろうか。
ついでに言うとそもそも何で教会を襲ったかというと、9話でノイントと戦闘中にハジメが教会から衰弱する魔法をかけられたのでそれを阻止するため…だよね?
アニメではどこからともなく賛美歌的な合唱が流れてハジメの周りがキラキラ光って「ちっ、相手を衰弱させる魔法か」「イシュタルですね」と言っただけで、教会の人間は一切映らないのでまぁ分かり難い。
…なのだけど、教会を壊滅したのはノイント戦が終わった後で、戦闘中「くっ、衰弱魔法さえ無ければ」って展開は無い、衰弱魔法が解除されて「しめた→形勢逆転」って展開は、無い。
つくずくシングルタスク、別の場所で同時に起こってることを噛み合わせることができてない。
そもそも衰弱魔法なるものが効いてたのかどうか不明。
もうこうなってくると、ひょっとしたら先生の行いは無駄だったのかも…って思わせるのはどうなんだ?
それ以前に一週間9話の出来事を心に刻んでおかないと先生とティオは何をしたかったのか分かり辛い。
一体どうしてこんなことに?…繰り返しになるけど教会を焼き払うシーンが何かの規制に引っかかったんだろうか。
ということで、後半の「なんだかなぁ」って二点はなにか事情がありそうな感じがして、そこまで論ってヒドいと言う程でもない(論っちゃってるけど)。
それ以外の部分は至って普通、ここが素晴らしいと取り上げるものも無いので結果的に文句ばかり書いてるが、本当普通。
敢えて言えば「クラスメイトのうち誰が裏切り者か分からない=一人一人疑って見ないといけない」から「裏切り者/少なくとも敵ではない」に色分けがハッキリ付いて一気に見やすくなったせいかも知れない。
まぁ前半がアレだったところからよく持ち直せたとも言える。
これが現スタッフの本来の力であるのなら、3期はちょっとは期待しても良いのかなぁ~?
一応期待ポイントとしては、カオリがノイントのアバターを手に入れ──美少女が美少女に乗り移ってもなぁってのは置いといて──本体の無事が約束されてる限り、破損OKな無茶な戦闘が…できるよね?
ロボットバトル的というか、あれだ、“宝石の国”みたいな立ち回りが可能なハズ、やってくれんかなぁ?
というかねぇ、スタッフの中に加戸誉夫の名前を見つけちゃいまして…初代ZOIDSやゾイドワイルドZEROの監督っス、スタッフが変わらないんだったらこれは期待しちゃいます。
ハジメが荷電粒子砲やプラネタルサイト砲弾を練成してくれんかのう?
まぁだからこそティオがブレス吐くシーンが描かれてないのに尚更不服ではあるんだが、これも「3期でド派手なの見せてやるから待ってな」という伏線だったら…いいなぁ。
ってことで総評。
途中からマシになる、それまでのヘンテコ展開は急な監督交代によるゴタゴタが原因かも知れないのでそう強い非難もしづらい。
むしろよしもときんじ氏が健在だったら中盤以降どういう内容になってかなー?と思いを巡らせるのもアリかも?
後半もあくまで普通レベルだが、相対的に上り調子ではあるので3期にはほんのりと期待。