nyaro さんの感想・評価
3.0
物語 : 2.5
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.5
状態:観終わった
団地という核家族の象徴にノスタルジーを感じるのは昭和世代でしょう
「SONNYBOY」を想像していましたが、印象としては舞台設定というか作りは「つみきのいえ」ですね。ちょっと違うのが、別れはあったけれどいい人生だったという老人の達観にも似た幸せな思い出とは違い、現在に苦しむ少女の話でした。
団地が舞台です。そしてある程度団地に意味性があります。が、あの手の団地に意味性とノスタルジーを感じるのは昭和に足を突っ込んでいる人でしょうね。
団地は核家族の象徴ですよね。成長による幸せとその思い出。その意味ではクレしんのオトナ帝国ですね。なのでやっぱりオトナ帝国と同じ問題が発生します。令和の少年少女どころか平成以降に小学生だった世代には感覚が通じないのでは?
そして離婚問題もあり、ヒロインはこの冷たい核家族の成長期に苦しめられて、老人に安らぎを見出しました。
ただ、令和では核家族問題どころか、家庭は解体され夫と妻と子供の分断も、経済問題に置換可能なほど進んでしまっています。
ですので、少年少女向けっぽいですが、実は昭和世代のノスタルジー作品で、40歳以上なら辛うじてこの映画の団地が象徴するものの感覚が分かるのかなあという感じです。
2020年代はぎりぎりの時期ですね。これ以降になるとアニメを見る世代が理解できないでしょう。
テーマとしては、カメラが象徴するように過去の思い出を切り取った写真は美しいけれど、それは現在ではないということになると思います。あるいはカメラが渡せなかったこと=老人の喪失がヒロインと主人公の別れとなった過去ですね。もし、カメラがあれば、もし老人が生きていればのIFの提示はありませんが。
あとはまあ、家族の問題もあるようですが、どちらかと言えば幼さ故のコミュニケーション不足と駄目オヤのせいで心が壊れかけた、幾分自殺願望、逃避願望のある少女の話でしょう。
ヒロインの少女があまりにコミュニケーション不全過ぎて、ちょっと見ていてもどかしくなります。小学校6年生ならそんなものか、とも思わなくはないですが、ちょっとデフォルメがきつすぎる気がします。
主人公もそうですけど、このやり取りを映画館で見せられるとすると辛いですね。私はネトフリでパソコンで見たのでいいですけど。
のっぽの正体は登場する前から想像がつきます。2パタン考えられると思いますが、結果的に途中で解答はでます。
ヒロインと主人公の他の登場人物が、キャラの性格は濃い子もいるのですが、ちょっと薄目で、意味性において必要だったか、という気もします。特に男の子2人の意味は非常に希薄でした。
テーマは、生活、家、家族そう言ったものの美しい、辛い、悲しい、うれしい思い出の蓄積も、それは過去のものとして消化して前に進みましょうという話だと思います。あとはコミュニケーションですね。
最後とってつけたようなヒロインの親の登場はちょっとイラッとします。
エンタメ性という点で劇場版にする意味は希薄ですかね。確かに団地の衝突や豪雨などはすごい作画だとは思いますけど、劇場作品としては絵柄が地味すぎました。
やりたい事は理解できます。核家族とコミュニケーション、そして過去の思い出に縋りつくことの否定。それを取り壊される団地が象徴していたのでしょう。
いい話だし面白い内容で、見て損をしたとはネトフリで見た限りでは感じません。ですが、やっぱりエンタメ性、キャラ造形、そして、内容の深さの割に映画が長すぎ、地味すぎだと思います。TV特番ならかなりの高得点ですが、映画なら可もなく不可もなく55点という感じでした。