キャポックちゃん さんの感想・評価
2.9
物語 : 4.0
作画 : 2.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.5
状態:観終わった
監視社会での楽しい冒険?
【総合評価☆☆☆】
原案の湯浅政明と佐藤大、脚本の佐藤とうえのきみこら、くせ者たちの手になるストーリーは、先端的でかなり面白い。残念ながら作画と演出が今ひとつで、アニメとしての完成度は必ずしも高くないが、意欲作として評価できる。
舞台となるのは、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)が日常的に活用され、教育やショッピングでは、作中で「超再現空間」と呼ばれるメタバースが実用化された社会。ただし、高度な技術がもたらしたバラ色の未来などではない。カスタマーセンターによって常時行動がチェックされる、自由のない監視社会である。
市民は、視覚情報デバイス・デコの装着を義務づけられ、そこに表示される“らぶ”という評価値に一喜一憂する。この“らぶ”とは、SNSの「いいね!」やフォロワー数と似ているが、実は、承認欲求を満たしてやることで市民を馴致する手段。物語は、“らぶ”を強制的にゼロにしてしまう「怪人ゼロ」が出没するところから始まる。主人公のベリィやハックは、住民登録されず管理対象とならない「ユーレイ」の立場を獲得し、自由人として管理の実態に迫っていく。ただし、この実態解明の描き方が、どうにも中途半端である。
情報技術の過剰な発達がもたらす恐怖は、視覚的に表現しやすいからか、『電脳コイル』『フラクタル』『サイコパス』など、多くのアニメで描かれてきた。これらに比べると、『ユーレイデコ』における監視社会は、陰惨なディストピアとしての側面よりも、冒険の場という性格付けがなされており、切迫感に欠ける。ベリィらの行為は、管理者に逆らう命懸けの反抗のはずなのに、キッズアニメ風の作画のせいで遊び半分にしか見えない。また、表現の上でリアルとバーチャルが明確に区別されておらず、システムが機能しなくなったときの描写が先行作品ほど衝撃的でない。例えば、『電脳コイル』において、システムが個人情報にアクセスできなくなったときに起きるショッキングな出来事は、『ユーレイデコ』の楽しい冒険世界とは無縁である。
第10話以降の物語展開は脚本がよく練られており、作画と演出にもう少し工夫があれば、かなり優れた作品になったと思われるのだが…