蒼い✨️ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
見た目に反して良かった。
【概要】
アニメーション制作: WIT STUDIO
2021年10月15日 - 2022年3月25日に放映された全23話のTVアニメ。
原作は、『マンガハック』でweb連載中の漫画作品。
著者は、十日草輔。
アニメ版の監督は、八田洋介。
【あらすじ】
王様ランキングとは、高名な騎士を数多く従え、国民が多く町が発展している。
なにより王様自身が勇者のごとく強いこと!
それらを条件に恰好の王様をランキングしたものである。
↑“原作1巻より”
そして、ボッス王国があった。建国者で初代国王のボッスは巨人族の戦士であり、
本人の強さだけなら最強であるが、とある理由で寿命が尽きようとして病床にあった。
ボッス王には幼い王子が二人いて、どちらかが次期王になるのだが、
亡き前王妃シーナとの息子である長男のボッジ王子は耳が聞こえず口も利けずに、
身体が小さく極度に非力なことから、家来の信を得られず民衆からもバカにされていた。
後妻の王妃ヒリングとの息子の第二王子のダイダは厳しく育てられ努力を尊び文武両道。
大人顔負けの剣の腕前で、彼こそ次期国王にと推す声が多数派だった。
絶滅した暗殺集団「影の一族」の生き残りのカゲとの出会い。
兄に対する屈折した感情を持つダイダとの剣の勝負。
そして、ボッス国王の病死。
と、強い王になることへのあこがれを持つボッジ王子の人生の転機となる様々な出来事が、
ふりかかり、王子は成長していくことになるのだった。
【感想】
絵本のような作画の話題作というものの、リアルタイムでは興味が湧かなかったです。
「comic walker」で第1話を読んで、ボッジ王子のvの形の口が気に入らない。
と、まず商業としては上手いとは決して言えない作画で敬遠してましたかな。
それも、連載が進んでいくうちにキャラデザが良くなってはゆくのですけどね。
一見は好みでない作画や作風ですが、それでも人目を引くものがあるかも知れない?
との理由でアニメを見始めたのですが、既視感がありあり。
誰もが認める優秀でキリっとした弟と、健常者とは言えずにバカにされているチビスケの兄。
これは、こせきこうじ氏の、「ペナントレース やまだたいちの奇蹟」の山田太一・泰二兄弟!
無能だと思われていた兄が実は開花してない未完の大器で驚異的な能力を秘めていて、
それを武器に大活躍で『アイツはすげー奴だ!』と皆が口を揃えるスーパーヒーローになっていく。
んで、兄を愚鈍だと嫌ってたように見えていて複雑な感情を持っていた弟も、兄を認めていく。
他にも、そういう話を探していけばあるかもしれないですけどね。
何故、私がそういう話をしたかというと、この手の泥臭いレトロな少年漫画の因子を、
そのままに「王様ランキング」は、持っているからですね。
命令されて全裸で校庭一周をさせられて泣きながら走っていた落ちこぼれ野球部員が、
三軍の仲間と一緒に一軍を倒して自らが一軍となって甲子園で準優勝の大活躍、
プロでも万年最下位チームをセ・リーグ優勝に導いていく「名門!第三野球部」
同じ作者で、片手に障がいを持ついじめられっ子が立派な医者になっていく、
史実とは大幅に人間描写が異なる「Dr.NOGUCHI 新解釈の野口英世物語」
他の作者でも、様々な困難や嫌がらせに負けない若き寿司職人の「将太の寿司」であるとか、
モヤシみたいな少年がキックボクシングで格闘家を倒していく漫画とか、
1975年生まれの作者の心に、昔のジャンプやマガジンの作品が持っている、
努力+人情=勝利がピンポイントに刺さって、それが作風に影響していったのではないかと?
そして、一周回って令和の時代にこの手の作品の需要が再び生まれてきたのでしょうか?
その原作が、アニメの制作能力の高い「WIT STUDIO」の手で理解されて良いところを伸ばされる。
それで、表情豊かにキャラクターが生き生きとしたアニメとして磨きがかかっていますからね。
キャラクターが叫びまくり、目や鼻から流す液体の量が多すぎであるとも思いますけどね。
仮に下手なスタッフなら、キャラの心が響かない駄作・凡作なアニメで終わってた可能性が高く、
原作に対して誠実かつ実力のあるスタッフに恵まれた作品であるとは思いますね。
主役のボッジ王子役の日向未南さんも良かったですね。
「賢者の弟子を名乗る賢者」のルミナリアの演技は全く記憶に残らなかったのですが、
こちらでは、台詞がほぼ言葉になってないのに、声だけで感情表現が豊かでしたね。
自分としては、脱獄してきた敵数人がボッス王国を襲ってきて、
そのバトルシーンが長くて中盤がだれた感が否めませんが、
総合的には良作だとは思いますね。
・思いは違ってても、顔が悪くても、頑張る奴は嫌いになれない。
・海よりも深い母親の子供への愛情。
舞台装置に役割が近い民衆の描き方は画一的で流されやすい愚民そのものではありますが、
名有りキャラの感情や行動には、きちんと心に響くものがありましたね。
まあ、罪と罰の話が、アイツは可哀想な奴だからソイツの罪を俺が背負っていくという話が、
現実であった殺害事件の加害者と被害者の話とそぐわずに、
それで違和感が拭えなくて微妙に思えることがあったり、
(他にも同じテーマでキャラを扱っている作品は数多存在しますが)
あきらかにモデルがわかる某国の歴史的事実や事件に基づく民族性の酷さの話を、
写真などの資料をそのままに作画してアニメの第18話にぶちこんできたりで、
ふと、アニメの世界への没入から現実に引き戻されると、
んんー?と思うことが、このアニメでありましたね。
キャラが魅力的に描けている良い作品ではありますが、
そういう理由で少しだけ物語の評価が下がってしまいました。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。