てとてと さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
潜水艦架空戦記の傑作。時代遅れな要素と、色褪せぬ問題提起
超強力な原子力潜水艦が反乱起こし独立国家として日本の在り方とか、冷戦後の核兵器の意義などを問う。
100分ほどのTV版と、各1時間のOVA2話。(纏めてレビュー)
【良い点】
サンライズ・高橋良輔監督の力作。作画良し、音響良し、渋い豪華声優陣。
冷戦終結直前の世界情勢下で日米安保や核兵器の意味を問題提起した政治劇。
核武装している(かもしれない!?)潜水艦1隻だけで独立国として日米や世界を激変させうる(かもしれない)構想は圧巻。
現実世界の情勢変化で陳腐化した面もあるが、現在もなお示唆に富む名作。
核兵器の本質、所持している可能性が僅かでもあれば超大国すら制約されるなど、現在でも多分変わっていない。
専守防衛の矛盾(専守防衛とは事実上の攻撃権の放棄なのだ)という問題提起は未だに未解決で色褪せず。
政治劇は竹上総理が傑物、危機に立たされる日本の総理として存在感見せた。
やまとと同盟でアメリカ他世界を敵に回す危機に、自衛隊を国連移譲案は実現したかはともかく見事な奇策で驚いた。
潜水艦バトル物としても金字塔。細かい描写や暗黒の深海で音だけで判断する虚々実々の駆け引きが熱い。
アップトリム(艦首上に向ける操艦)90度!とか、現実には不可能ぽいけれど、そこはフィクションの嘘でエンタメ的に御愛嬌。
3話のベイツ兄弟のシーウルフ戦は本作随一の名勝負、ここを丁寧にアニメ化したのは良かった。
兄弟どちらも名将、アメリカの威信と血の繋がらない兄弟の絆。
キャラクターは渋いが、各々が信念を持ち、自分の役割を貫徹する男たちのドラマが熱い。
【悪い点】
尺の都合で仕方がないが原作大分削られている。
政治劇に関しても詰め込み気味でかなり無理を感じる。
政治劇に関しては冷戦末期の話で現在では時代遅れも目立つのは仕方がない。
日本が(アメリカも)まだ元気だった頃の話、今ではすっかり荒唐無稽な架空戦記になってしまった。
日本は世界で唯一の政教分離云々はちょっと皮肉だった…
戦闘はシーウルフ戦以外は地味。
その前のロシアのロブコフ大佐のアルファ級レッドスコルピオン戦が省かれたのも残念。
シーウルフ戦で打ち切り。
バトル的にはここが山場なのでいいんだけど、政治劇的には消化不良。
【総合評価】7~8点
時代遅れになってしまった要素も含めて色褪せぬ名作。
原作最後までアニメで見てみたかった。
評価はとても良いには惜しい「良い」
高橋良輔監督は翌年1998年にガサラキを制作しているが、多分沈黙の艦隊を自己流ロボットアニメでやってみた。
ガサラキも専守防衛や日米安保に異議唱えてアメリカと対決する展開で今思うと沈黙の艦隊踏襲している。
良作だけど時代に取り残された感あるのはガサラキも同じ?