かがみ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「青春」の祝葬
思いのほか重厚で屈折した神原の物語。とある事情から左手に「悪魔」の力を宿していた神原は、ある日不意に「絶対に願いを叶えてくれる」という「悪魔様」の噂を耳にする。もしかしてその「悪魔様」とは、左手に「悪魔」を宿した自分の事ではないかと疑った神原であったが、果たして「悪魔様」の正体はかつての「宿敵」である少女、沼地蠟花であった。共に中学バスケのスタープレイヤーとして脚光を浴びた2人はそのプレイスタイルも性格も生い立ちもまったく真逆の存在である。こうした意味で神原にとって沼地は「生きられなかった半面=あり得た姿」としての「影」であるともいえるだろう。羽川翼にとってのブラック羽川、阿良ヶ木暦とっての八九寺真宵がそうであったように、この物語シリーズではユング心理学でいうところの「影」の元型というべき存在がしばし登場する。「影」の元型との向き合い方は人それぞれである。例えば羽川は「影」を迎え入れる道を選んだ。あるいは阿良ヶ木は「影」に振り回される道を選んだ。そして神原は「影」を真っ向から対峙/退治する道を選んだ。深層心理学的な観点からすればいわゆる「思春期」とは、子どもがそれまで生きてきた経験論的世界の外部をなす「異界」ともいうべき超越論的世界へ接近する時期でもある。そしてこの「異界」を力づくでねじ伏せる若年ゆえの特権的行為を仮に「青春」などと呼ぶのであれば、本作は「青春」を鮮やかに祝葬した見事な物語といえるだろう。