nyaro さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
田山花袋のパクリじゃん。まあ、アートではありました。
田山花袋の「蒲団」じゃんが第一印象です。また欧米の日本パクリかと思わなくはなかったです。老人の悲哀を入れるなど細部は違いますが、構造はそのままの気がします。
日本の私小説的な歪んだ性愛をいれないために老人にして、別れた娘という言い訳はしてます。それと昔の良きものが廃れて行くような雰囲気を出していますが、まあ、それは主要たるテーマではないでしょう。
初めバンドのスターに若い娘がキャーキャー言うような場面に対して、田舎娘のヒロインが出てきます。この対比かと思うと、結局ヒロインもロックスターに騒ぐ娘も同じということなのかもしれません。
アニメ作品としての出来の良さは否定しませんが、テーマ性ですね。日本の純文学…私小説に比べると入門的な感じです。だったら、もっと老人のドロドロした欲望まで描かないと、単なる悲哀と老人が身を引く潔さで終わってしまいます。「蒲団」の最後のドロドロした感情まで行き着かないとちょっと物足りないですね。
ラストシーンです。
{netabare} うさぎを逃がすのは引退ということなんでしょう。飼いうさぎを野に放ったらすぐ死ぬと思いますけど。
最後の場面で裸のマネキンの前でキスをする2人は、その後結ばれる暗示でしょうね。クレジットの後のスコットランドの男が雨の中ズリズリしている場面が何を象徴しているかは初見では取れませんでした。ちょっと考えてみます。{/netabare}
なので、これがアカデミー賞?と思わなくはないですが、私小説的なパーソナルなストーリーは欧米では目新しいのかもしれません。
アニメーション映像に関しては、演出やカリカチュアライズが初めあまりに極端だったですけど、慣れてゆくうちに味になってくるのは良かったです。主人公のクセは、手品師のクセなんですかね?実写パートのあの俳優がなんか関係あるんでしょうか。意味がちょっと取れてないので意味性があるかもしれません。
それとキャラデザが日本人の顔はのっぺり卵に絵を描いたような顔で、ゲルマンの立体的なキャラデザはやっぱり顔の作りが違うなあ、と思いました。
とにかく映像美は素晴らしいです。新海誠やバイオレットエヴァ―ガーデン的な方向ではない、アート的な印象です。ですが、手書き感はあまりなかったですね。背景美術には、3DCGがふんだんに使われていました。街のモデリングはちょっとすごかったです。
ということで、総評するとアートとして見る価値はあります。それと、私小説を欧米的に焼き直すと、どうなるかを確認するのかにはいいと思います。
が、純文学としては、ちょっと2番煎じで内面描写が弱いかなあ。村上春樹がノーベル賞を取れないのも分かりますね。