テングタケ さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
良作です
異世界転生ものですが、主人公たちはあくまで一般人で特殊能力も無く、最弱のモンスターにすら苦戦するというところにリアリティーがあって、すぐに物語に引き込まれました。
また、モンスターを倒して稼げるようになるまでの貧乏生活が、丁寧に描写されていて好感を持ちました。
登場人物が皆物凄いイケメン・美少女ではない(例外アリ)ところにも親近感がわきました。皆それぞれに役割と性格が違いますが、誰もが魅力的に描けていると思います。
背景がセザンヌの風景画やジブリのラフ画のような感じで、幻想的な雰囲気を醸し出しています。模様のある赤い月もいいアクセントです。
ここからはモロバレなので、未見の方はそっ閉じしてください。
ものすごく頼りになるイケメンのリーダーが、なんと数話にして命を落としてしまいます。事前に情報を入れていなかった私にはショッキングでした。そしてそこから主人公がパーティーのリーダーになり、不慣れながらもなんとか仲間を纏めていこうと悪戦苦闘するのが本作の大筋です。主人公の心の声はダダ洩れなので、失敗したり不平を言ったりしながら、それでもなんとか前に進もうとする姿がとても「エモい」感じです。
仲間たちとの温かい交流がありながら、一方モンスターを倒す場面は残虐とも思えるハードな描写で、生きることの困難さを浮き彫りにしています。
あとエンディングがしっとりと落ち着いた女性ボーカルで本作に合っていました。1枚絵をグルグル回すのも悪くないと思います。
さて、いい雰囲気の異世界、魅力的な仲間たち、見かけによらずハードでシリアスな展開と、非常に丁寧に良く作られている本作ですが、では「面白いか」と言われると割とそうでもないような気がします。
まず重要なバトルですが、強い敵を工夫して倒すカタルシスのようなものはありません。普通にスキルを覚えて普通に戦って普通に倒す、そんな感じです。終盤の2度の絶体絶命のピンチ、はてさてどうなるのかと手に汗を握るシーンですが、なんかよく分からないうちに逃げ出せたり倒せちゃったりしてます。
また、なぜ主人公がこの世界に転生してきたのか、それがなおざりになっています。主人公たちの成長と友情を縦軸にするなら、なぜ主人公たちが転生してきたのか、この世界に秘められた謎が横軸になり、縦と横の軸がガッチリと絡み合ってこそ、しっかりと強固な物語が織り上がるのではないかとは私は思います。
例えばゾンビものだったら、ゾンビが何者だとかどこから来たのだとか、私はあまり気にしません。ブードゥーの呪いか秘薬か、企業の開発したウイルスか、彗星の爆発か害虫駆除の超音波か、原因は何だっていいしナイトオブザデッドのように原因不明でも全然かまいません。
ですが本作は、主人公がなぜこの世界に転生したのか、はっきりと明かさないまでも、それを突き止めようとするベクトルがあれば一層本作の完成度が増したと思います。イケメンが一度、元世界の記憶のようなものをにおわせましたが、それっきりで終わってしまいました。とても残念です。
原作はまだまだ先があるようなので、その点はどうなっているんでしょうか。2期があったら見てみたいですね。