「リコリス・リコイル(TVアニメ動画)」

総合得点
86.7
感想・評価
1005
棚に入れた
2789
ランキング
186
★★★★☆ 4.0 (1005)
物語
3.7
作画
4.2
声優
4.0
音楽
3.9
キャラ
4.0

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ネタバレ

AwO さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

好きなこと、今楽しいこと。小さな夢にも全力な千束に勇気をもらった。

[13話感想考察]
{netabare}冒頭でサクラが負傷。サクラを助けるために降下するか、マジマを捕らえるために上昇するか選択に迫られる。フキは楠木指令からの命令により降下することを選択、それに対してたきなはまたも独断行動を選択する。しかしそれに対してフキは「ダメだ、現場リーダーは私だ」と言っており、これは1話冒頭と似た展開だ。[1話冒頭]ではたきなはそのままマシンガン連射の独断行動に走っており、仲間の命などなんのそのといった態度だったが、13話ではたきなはフキを説得したうえで、たきなは千束のために上昇、フキはサクラのために降下と、チームワークを意識して各々行動しているという大きな違いがある。

一方展望フロアでは千束が心臓の負荷からダウンしたことで一時休戦となり、千束とマジマの会話が始まる。そこでマジマはバランスだとか、秩序だとか、終始自身の信じる正義についての価値観を千束に聞かせる。「現実は正義の味方だらけだ、いい人同士が殴り合う。それがこのくそったれな世界の真実だ」

マジマのこのセリフの直後吉松とミカのカットに代わる。
千束の才能が世界に輝くように「導きたい」吉松、導いてくれるのは子供たちなんだと「見守りたい」ミカ。
そして千束のために自らの「信じること」を伝え続けてきた吉松、千束のために「偽り」を伝え続けてきたミカ。
どちらも千束のために自身の正義を振りかざした2人の父親の対比が非常に印象的だった。(ミカとは偽り:make believeの略?)

そして千束とマジマの会話シーンに戻る。
終始自身の信じる正義についての語るマジマに対して、場違いにも千束は今飲んでいるジュースの感想を話している。そして「世界を好みの形に変えてる間におじいさんになっちゃうぞ」とマジマに優しく訴えかけている。初期の千束とたきなのように、マジマが「今後」に着目しているのに対して、千束は「今」に着目して行動しているという対比がここでもなされている。そしてこの一見場違いにも思える千束のセリフだが、マジマが世界についてああだのこうだの語っている間にも、美味しいジュースなど「今、楽しいことを逃しているよ。」と千束は伝えたかったという大切なメッセージを秘めている。

「今のままでも好きなものはたっくさん」
「大きな町が動き出す前の静けさが好き。先生と作ったお店。コーヒーの匂い。お客さん。町の人。美味しいものとか、きれいな場所。仲間。一生懸命な友達」
「それが私の全部、世界がどうとか知らんわ」

そしてこれらの千束のセリフに対してマジマは「ちっせいな」と呆れ返している。

この一連の千束のセリフはこのアニメを通しての一番のメッセージだ。
マジマの言う通り千束の夢はとても小さなものだ。しかし作中をとおしてずっと描かれてきたように、そんな小さな夢にも千束は常に全力なのだ。そして「大きな町が動き出す前の静けさ」「コーヒーの匂い」など、一見どうでもいいと思えるような小さなことでも千束は「好きなもの」として数えている。一方でマジマの夢は偉大で途方もなく大きいが「嫌いなもの」ばかりをずっと数えている。本当に「ちっせえ」のは一体どちらだろうか。

この千束の価値観は私たちにも十分刺さるものではないだろうか。
私たちは気が付いたら嫌いなことを数えるばかりに気を取られ、行動理由のほとんどは嫌いなことを避けたいからになっていないだろうか。初期のたきなやマジマのように「嫌いなもの」ばかり数え、とても叶わないような空想に浸っていては幸せにはなれるはずはないだろう。本当に大切なのは一見どうでもいいと思えるような小さなことでも、好きなものを「数える気があるのか」という単純なことなのかもしれない。そう考えさせられるシーンだった。


後半では行方不明になった千束とたきなとのやり取りの中でもいくつか印象的だったことがある。
何故ここがわかったのかと問う千束に対して、たきなは携帯を取り出し1枚の写真を見せる。そこにはサオリさんとその彼氏のツーショット写真の背景にドレス姿の千束が小さく映っている。[1話]では"不運"にも銃取引現場を撮ってしまいマジマに追われることになったサオリさんだが、13話では"幸運"にも千束を見つけるための足掛かりになっている。

また今までも千束のために嘘をつき続けてきたミカだが、吉松を殺した件でさらなる嘘を千束につき続けることを決意している。千束の幸せのためにどんなことでもするミカに対してクルミは「お前が一番怖いからな」といった印象を抱いている。

海岸のシーンでは「何しようかこれから」と言う千束に対して、たきなが「あきらめてたことから始めてみたらどうですか」と提案しており、今までは千束に引っ張られっぱなしだったたきなが今度は千束を引っ張っている。お互い立ち止まった時にお互い引っ張り合える、まさに相棒だ。
{/netabare}

[レビュー]
リコリス・リコイルという作品は主人公の「千束」を他の登場人物の視点などから多角的かつ間接的に表現した作品だ。
しかしそれはなろう系のように「主人公すごい」で統一されているわけでなく、登場人物それぞれが千束に対して立場の違いから別々の思いを抱いているのが大きな特徴の一つだ。
例えば楠木にはDA司令官の立場から「生意気で優秀」と言われているし、DAに戻りたいという立場のたきなも最初のころは「疑心」を抱いており、反対にミカは養育者の立場から「娘のような存在」のように思っている。
他にもさまざまあるが、このように主人公に対する「立場」によって「思い」も変化してしまうところにも非常に一貫性がありリアリティを感じる。
またどの様な作品でも「それぞれの思い」みたいなことを表現することは当たり前だが、ここまで主人公一人に集中していてかつ、非常に多彩なのはこの作品くらいなんじゃないだろうか。
それに千束を他者の視点から間接的に表現することが多い一方で、肝心の千束目線での描写をあえて少なくし、その核心には安易に触れずに大切に大切に描写しているように見える。
それ故に他の作品と比較して主人公の魅力も段違いに高いと感じられるのかもしれない。

例えば[7話]で{netabare}ミカが吉松とバーで会っていたのを千束とたきなが尾行した次の日、千束がリコリコになかなか来なかった。
心配していたミカは「さすがに今日くらいは休ませてやろう」と言うが、次の瞬間いつも通りの元気な千束が店にやってくる。
この描写に対して「全然気にしていなかったんだ」「単に遅刻しただけか」こういった解釈もできるだろうが、それとは全く別の解釈もできる。
私としては「ちょっと無理してみんなの前では笑顔を絶やさないようにしている」これが千束の本心に一番近いのではないかと考察している。
もともとそういった能天気な性格であることには変わりがないだろうが、意外にも千束は遅刻しかけたことは何度かあっても、明確に遅刻したという描写はこれ以外に一度もない。{/netabare}
[4話]での {netabare}たきなとの待ち合わせではむしろたきなより先に到着しているし、逆に定期健診やライセンス更新は分かっていても行かなかったりと、千束は心情がそのまま行動に現れるキャラだと考察できる。
つまり一見いつも通りに見えても実際は全然いつも通りではないのだ。
このようにわざわざ遅刻してきたという描写があるからにはその表現に何かしらの意図があったと考えるのが妥当かもしれない。
それにただの能天気として千束を見るには、前述に述べた通りあまりに心理描写に力が入りすぎている。これでただの能天気設定だったら衝撃で私の心臓が止まるだろう。{/netabare}

このように千束に対しての心理描写はしっかりしている一方で他の登場人物ではやや粗が目立ってしまう。
例えばOPのたきなの全力キックも一見たきなの心理描写に見えるが、どちらかと言えば千束を間接的に際立たせることが主な目的の描写ように感じる。
1話(冒頭以降)ではたきな視点から物語が始まるように、「千束」という主人公を「たきな」という視聴者に近い目線から描写することがこの作品の目的のためか、他の登場人物の心理描写は典型的でどうしても普通に見えてしまうため、千束のような魅力を他の登場人物に対しても感じることは少し難しいようにも思える。

ただたきなに関しては「視聴者目線のキャラ」「もう一人の主人公」「真の主人公」などと、どのように解釈するかによって受け取り方がだいぶ変わってくる。
私自身も始めは千束についての考察ばかりで愚かにもたきなのことを「千束の引き立て役」とばかりに思っていた。しかしアニメを見返し考察する中で千束とたきなは常に対照的に描かれており、この作品は千束とたきなの双方がいないと構造上成立し得ないということに気が付いた。
正直1話から3話までは「千束の引き立て役」でもおかしくないほどだったが、たきなは話数を重ねるごとに成長し魅力も増している。
いまは千束でやや陰ってはいるが、最終話では千束に勝る魅力をもつ「真の主人公」になっていてもないもおかしくない。


[1話感想考察]
{netabare}1話は特に千束とたきなの違いが強調された回だった。
千束は「命大事主義」、非殺傷弾を使用し、負傷した敵の応急処置もいとわない。さらに後処理にDA呼ぶと犯人が殺されるため、費用は高いがクリーナーに依頼する。一方のたきなは護衛対象を囮にするなどと徹底した「合理主義」であり、終始2人の食い違いが強調されている。

また喫茶店の千束の「事件は事故になるし悲劇は美談になる」というセリフはおそらく旧電波塔事件のことだろか。千束は旧電波塔事件のことで何かしらの隠し事があると考察できる。{/netabare}

[2話感想考察]
{netabare}1話同様に2話でも2人の違いが強調された回だった。
依頼現場に向かう途中の特急で千束は弁当、たきなはゼリー飲料。千束は依頼現場の場所すら把握してないのに対して、たきなは時間も正確に把握していた。このシーンだけでも千束は「今」に着目し、たきなは「今後」に着目して主に行動していることがわかる。

1話同様に戦闘シーンでは相変わらず千束の「命大事主義」、たきなの「合理主義」が際立ったが、1話との明確な違いはウォールナットが撃たれて救急車で運ばれているシーンで、ウォールナットの死に動揺した千束に対して、寄り添うようにたきなが「すみません」と謝っている。
ここから読み取れように、1話も2話も全体的な流れは同じだが、2話では一見正反対に見える2人でも根は似ているということが表現されている。{/netabare}

[3話感想考察]
{netabare}3話ではたきながDAに戻りたい理由が判明する。
DA本部の寮で暮らすことはリコリス全員の憧れであり、たきなにとってもそれが一番の目標だった。たきなにとってDA本部は唯一の居場所であり、それを理不尽に奪われたこと、そして自身の無価値観に悩んでいた。噴水のシーンでちさとが「自分で決めたことが一番大事」「失うことで得られることもある」「やりたいこと最優先」などとたきなを説得、千束の価値観が全面にでる良いシーンだ。
これにより模擬戦ではたきなが自身の殻を破り勝利。冒頭や行きの電車ではたきなの「合理主義」が際立っていたが、帰りの電車ではフキと射線が重なっているちさとをあえて撃ったことに対して「よけると思いましたから」と、ちさとに対する信頼が見え始める。

3話前半ではたきなはみんなとのゲームに参加せず、DA復帰を第一に考えている一方で、後半では前半のことがすべて対象的に描写されているという特徴がある。(つまり 喫茶店➡行き電車➡DA本部➡帰り電車➡喫茶店 という鏡写しのような構成の中で上手く対照的に表現されている){/netabare}

[4話感想考察]
{netabare}4話は日常回だが2人のやり取りに少し変化が伺える。
相変わらず前半はたきなの「合理主義」が際立つ表現(トランクス、食事制限、タツノオトシゴの合理性など)が多かったが、水族館での「さかなー、ちんあなごぉ~」や、千束のペンダントに対して「めっちゃ可愛いですよ」と言うなどたきなが徐々に千束の影響を受けていることがわかる。

このように4話は千束の影響を受けたたきなが明るく振る舞い始めた回ではあるが、たきなのトランクスを千束が履くなど、千束もたきなの影響を受けていることが伺える描写もある。またいままでは千束の明るい部分とたきなの暗い部分にフォーカスが当たっていたが、たきなが千束に対して「非殺傷弾を使う理由」「DAを出た理由」を聞いたシーンで、千束はそれを一時茶化そうとするなど4話では逆に千束の暗い部分が少し垣間見える。

また、駅が爆破した際は真っ先にたきなが現場に駆け付けようとしたのに対して、千束はそれを止めるなど今までとは逆の展開も起きている。{/netabare}

[5話感想考察]
{netabare}5話は千束とたきなの対比がない代わりに千束の心臓が機械でできていることなど大きくストーリーが進行した回だった。
最後ではおじいちゃんの正体がよしさんと判明。またミカのセリフからおじいちゃんと暗殺者JINには接点がないことが判明、このことからも千束にJINを殺させるいわばテストだったと考察できる。おじいちゃんのバックストーリーも千束がJINを殺すことを躊躇しないようによしさんが用意したものだったのだろう。

またクルミとミカの会話からアラン機関は「命と引き換えに使命を与える」と判明、そしてその「使命」に対してクルミは問うが、ミカは「それ(使命)は千束が決めることだ」と言っている。つまりこの時点でミカはアラン機関の立場と矛盾していることがわかる。千束の「使命」とは一体何なんなのだろうか。

またおじいちゃん(よしさん)のセリフの「娘と約束してたんです、一緒に見上げよう首が痛くなるまで」はもしかしたら伏線かもしれない。{/netabare}

[6話感想考察]
{netabare}冒頭では千束が定期検診をサボっていたということが判明、忘れていたというよりもおそらくわざだと思われる。これはやや深読みかもしれないが、DVDやお菓子が散乱していることからも千束は「嫌なことがあると映画やお菓子に逃げる」のかもしれない。

6話ではマジマに焦点が当たる会だった。マジマの目的は日本に入国したテロリストが行方不明なのを解決したいことだと判明。そのためにリコリスを殺害して情報を収集していた。襲撃時には千束のペンダント、そして非殺傷弾に興味を示す。この時点でマジマは千束を殺すことは目的ではなくなっていたのかもしれない。マジマは千束に「お前の使命は何だ?」と聞いていることからも、マジマがアラン機関と関係があることが示唆されている。

一方、最後のほうではたきなが千束にじゃんけんで勝って初めてはしゃぐ描写があるなど、たきなの新たな一面が見えた回でもあった。{/netabare}

[7話感想考察]
{netabare} 7話は一部の伏線が回収されるも最も難解な回で疑問も多い。
よしさんのセリフから千束の才能とは「たぐいまれなる殺しの才能」であることがわかる、そしてミカにはその才能を世界に届けることを約束して千束を託した。しかし[5話]でおじいちゃん(よしさん)は千束が自身の「使命」を自覚していないことに驚く描写があったことからも、千束の「使命」はミカから本来明かされているはずだったのだろう。しかしミカはそれを明かさず、[5話]では「それ(使命)は千束が決めることだ」と言っており、千束の思い(命第一主義)を尊重する姿勢を貫いているように思える。

またよしさんはたきなに対しても「君には期待しているよ」と言っていることから、アラン機関はたきなの才能にも目を付けている伏線なのかもしれない(ロボタ同様道具と見ているのかもしれないが)

また「アランチルドレンには役割がある」や、マジマがよく「バランス」と発言することから、マジマの「使命」とは「この世界のバランスを保つこと」なのかもしれないと考察している。{/netabare}

[8話感想考察]
{netabare}これまでは千束がたきなを振り回す側だったが、8話では逆にたきなが千束を振り回している回だった。各話ごとに徐々にたきなの主体性が上がっていることがわかる。また8話では千束が定期健診をバックレる描写が複数ある。たきなにその理由を問われ「注射が苦手」と言っているが本心かどうかは少し疑問がのこる。ただ「山岸先生はただのビタミン剤って言うけど・・・」というセリフから注射の内容物に違和感があるのは本当らしい。

また旧電波塔の回想シーンでマジマは非常に耳が良いという描写がある。ただそこではマジマは眼帯の上にサングラスをかけており、とても目が見えるような状態でなかった。[6話]千束との戦闘シーンでも目をつむったまま千束を殴っていたが、マジマは目が見えなくとも行動できる才能があるのだろう。もしかしたらマジマは元々盲目でアラン機関に「目」を貰い、その見返りに「使命」を与えられたとも考察できる。{/netabare}

[9話感想考察]
{netabare} 9話では8話以上にたきなが千束を振り回す側だった。余命宣告を受けてもいつも通りな千束に対し怒鳴ったり、DA復帰に消極的だったりとすでにリコリコはたきなの「居場所」になっていた。たきなはDA復帰をミカからではなく直接伝えるために千束を休暇に誘うが、これも5話(水族館回)とは対照的に今度はたきなが千束を振り回す側になっていた。別れ際には、ちさとの「めっちゃ楽しかったぜ、やるな」に対して、たきなは「やったぜ」「ありがとう、行ってきます」と、いつもの敬語とは少し違ったことも新鮮だった。

また、余命宣告を受けた千束がいつも通りなのに対して、ミズキ「あんたほんとにいつも通りね」楠木「もうすぐ死ぬにしては元気そうだな」など言われているが、本当にいつも通りなのかは少し疑問だ。{/netabare}

[10話感想考察]
{netabare}冒頭では千束がリコリコを閉店すると宣言する。その理由は「みんなの時間をとるのが悪い、そしてリコリコは楽しい場所であってほしい」そして千束はそれを前々から考えていた。一同気がまずくなるなか、千束は"無理やり"明るい話題に変えようと各々に今後の夢を語らせようとしている。そして千束がそんな無理していることをミカは見抜いていた。私は10話で初めて気が付いたが、どうやら千束は強がるときに男口調になるっぽい(?)

また、ミカが千束の成人式用の晴れ着をずっと前から用意していたというシーンではガチ泣きした。成人まで生きられるのかも定かではないのに晴れ着を用意していたというのは、ミカにとってはそれが希望だったんだろうなという「親心」がすごく伝わってくる良いシーンだ。

このように非常に感動的なシーンが複数あった一方で考察できる点もたくさんある。まず千束のカメラを楠木司令が回収していたことや、延空木の任務に本部がしつこく千束を使わせようとしていたことからもDA本部がアラン機関と繋がりがあると考えても不思議じゃない。個人的には楠木司令は命令に従っているだけで黒幕ではないだろうが、冒頭でクルミが千束の心臓の件で「アランが研究者を見つけたきっかけがどこかにあるはず」と言っているように、アラン機関の背後には巨大な勢力がいるものとみていいだろう。

あとどうでもいいが、銃千丁は千束とかけているのだろうか、これも伏線??
{/netabare}

[11話感想考察]
{netabare}毎話ごとにたきなの主体性が上がっているが11話は特にそれが際立っていた。命令違反の連続で、フキの「バカが移っている」は本当にそのとおりである(笑) 今までの傾向からこの作品はたきなの成長にフォーカスの1つが当たっているが、11話でのたきなの命令違反は1話冒頭の命令違反とは異なる点も多い。

まず1話冒頭の命令違反は仲間との相談なし単独でのマシンガン連射だったが、11話の延空木から旧電波塔に向かおうとしている時には仲間に対して自分の意見をハッキリと伝えている。また1話冒頭では命令違反をしたたきなをフキがぶん殴っているが、11話では命令違反に対してフキは理解を示し黙認という立場を取っている。

表面上は1話も11話もたきなの自己本位的な行動なのに変わりはないが、たきなの仲間に対する認識と、仲間からのたきなに対する認識はどちらも変化していることが伺える。このように11話では1話冒頭のたきなとフキのやり取りが対比された回だったといえるだろう。{/netabare}

[12話感想考察]
{netabare}自分に心臓を移植するバカ、命令違反のバカ、トイレに籠るバカ。12話は多くの伏線が回収され、バカに焦点が当たる回だった。

吉松は千束に人を殺させるためのテストとして暗殺者JINやマジマを利用していたと判明。そして最終的には自分を殺させようと千束に迫る。千束の才能を生かすために自分の命さえ天秤にかけることから、吉松にとって千束とはある意味「娘のような特別な存在」というのは本当なんじゃないかと思う。また今までのセリフから吉松は「人間は才能を認められて初めて世間的に評価される」といった価値観が根底にあり、そのため才能を持ちながらそれを生かさない千束に対して「このままでは千束が価値のない人間になってしまう」といった強迫的な感情を抱いているものだと予想される。

最終話でその辺のバックストーリーは語られるだろうが、個人的には[5話]のおじいちゃん(吉松)のセリフで「娘と約束してたんです、一緒に見上げよう首が痛くなるまで」がすごく気になる。おじいちゃんは千束が暗殺者JINを殺させるために用意した存在しない人間だが、妻と娘を殺されたといった設定の一部は吉松の実際の過去と関係があるのではないかと考察している。また[11話]では千束の心臓の設計者に「Dr.吉松」と呼ばれていることから吉松は元々医師だった可能性もある。こういった諸々の情報からからやや飛躍にはなるが、吉松は元々医者で、才能あふれる大切な人を殺されたとか救えなかったなどで強い後悔を抱えているのだろう。

一方で延空木ではフキがたきなとのやり取りを回想することで、待機命令を無視する決断をする。このことからたきなに対して「バカが移っている」と散々言ってきたフキも実はバカが移っていたことがわかる。そして今まで敵か味方が謎な立ち位置にいた楠木司令も実は千束の肩を持っていたことが判明、トイレに籠りリコリス救出をリコリコに依頼する。また回を重ねるごとに成長しているたきなだが、12話では旧電波塔への独断行動を後押ししてくれたエリカ(1話人質リコリス)に対して素直に「ありがとう」と伝えている。今までであれば「なんであんなことしたんですか」とかぶっきらぼうに言いそうだが、ここまで素直に「ありがとう」と感謝を伝えたのは12話が実は初めてだったりする。以前にもたきなが謝罪や感謝を伝えたシーンは何度かあるが一貫して少し"どもった"ような感じの言い方になっている一方、12話では誰から見てもたきなが心からの感謝を伝えようとしていることがわかる。
{/netabare}

[13話感想考察]
{netabare}冒頭でサクラが負傷。サクラを助けるために降下するか、マジマを捕らえるために上昇するか選択に迫られる。フキは楠木指令からの命令により降下することを選択、それに対してたきなはまたも独断行動を選択する。しかしそれに対してフキは「ダメだ、現場リーダーは私だ」と言っており、これは1話冒頭と似た展開だ。[1話冒頭]ではたきなはそのままマシンガン連射の独断行動に走っており、仲間の命などなんのそのといった態度だったが、13話ではたきなはフキを説得したうえで、たきなは千束のために上昇、フキはサクラのために降下と、チームワークを意識して各々行動しているという大きな違いがある。

一方展望フロアでは千束が心臓の負荷からダウンしたことで一時休戦となり、千束とマジマの会話が始まる。そこでマジマはバランスだとか、秩序だとか、終始自身の信じる正義についての価値観を千束に聞かせる。「現実は正義の味方だらけだ、いい人同士が殴り合う。それがこのくそったれな世界の真実だ」

マジマのこのセリフの直後吉松とミカのカットに代わる。
千束の才能が世界に輝くように「導きたい」吉松、導いてくれるのは子供たちなんだと「見守りたい」ミカ。
そして千束のために自らの「信じること」を伝え続けてきた吉松、千束のために「偽り」を伝え続けてきたミカ。
どちらも千束のために自身の正義を振りかざした2人の父親の対比が非常に印象的だった。(ミカとは偽り:make believeの略?)

そして千束とマジマの会話シーンに戻る。
終始自身の信じる正義についての語るマジマに対して、場違いにも千束は今飲んでいるジュースの感想を話している。そして「世界を好みの形に変えてる間におじいさんになっちゃうぞ」とマジマに優しく訴えかけている。初期の千束とたきなのように、マジマが「今後」に着目しているのに対して、千束は「今」に着目して行動しているという対比がここでもなされている。そしてこの一見場違いにも思える千束のセリフだが、マジマが世界についてああだのこうだの語っている間にも、美味しいジュースなど「今、楽しいことを逃しているよ。」と千束は伝えたかったという大切なメッセージを秘めている。

「今のままでも好きなものはたっくさん」
「大きな町が動き出す前の静けさが好き。先生と作ったお店。コーヒーの匂い。お客さん。町の人。美味しいものとか、きれいな場所。仲間。一生懸命な友達」
「それが私の全部、世界がどうとか知らんわ」

そしてこれらの千束のセリフに対してマジマは「ちっせいな」と呆れ返している。

この一連の千束のセリフはこのアニメを通しての一番のメッセージだ。
マジマの言う通り千束の夢はとても小さなものだ。しかし作中をとおしてずっと描かれてきたように、そんな小さな夢にも千束は常に全力なのだ。そして「大きな町が動き出す前の静けさ」「コーヒーの匂い」など、一見どうでもいいと思えるような小さなことでも千束は「好きなもの」として数えている。一方でマジマの夢は偉大で途方もなく大きいが「嫌いなもの」ばかりをずっと数えている。本当に「ちっせえ」のは一体どちらだろうか。

この千束の価値観は私たちにも十分刺さるものではないだろうか。
私たちは気が付いたら嫌いなことを数えるばかりに気を取られ、行動理由のほとんどは嫌いなことを避けたいからになっていないだろうか。初期のたきなやマジマのように「嫌いなもの」ばかり数え、とても叶わないような空想に浸っていては幸せにはなれるはずはないだろう。本当に大切なのは一見どうでもいいと思えるような小さなことでも、好きなものを「数える気があるのか」という単純なことなのかもしれない。そう考えさせられるシーンだった。


後半では行方不明になった千束とたきなとのやり取りの中でもいくつか印象的だったことがある。
何故ここがわかったのかと問う千束に対して、たきなは携帯を取り出し1枚の写真を見せる。そこにはサオリさんとその彼氏のツーショット写真の背景にドレス姿の千束が小さく映っている。[1話]では"不運"にも銃取引現場を撮ってしまいマジマに追われることになったサオリさんだが、13話では"幸運"にも千束を見つけるための足掛かりになっている。

また今までも千束のために嘘をつき続けてきたミカだが、吉松を殺した件でさらなる嘘を千束につき続けることを決意している。千束の幸せのためにどんなことでもするミカに対してクルミは「お前が一番怖いからな」といった印象を抱いている。

海岸のシーンでは「何しようかこれから」と言う千束に対して、たきなが「あきらめてたことから始めてみたらどうですか」と提案しており、今までは千束に引っ張られっぱなしだったたきなが今度は千束を引っ張っている。お互い立ち止まった時にお互い引っ張り合える、まさに相棒だ。
{/netabare}

投稿 : 2022/09/27
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