てとてと さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
大河ファンタジー英雄戦記の傑作。ダイジェスト感を差し引いても素晴らしい完成度
ロードス島戦記の水野良作品。全24話。
混沌渦巻く乱世に、流浪の青年君主が、愛する魔法師少女や仲間たちに支えられて混沌の時代に終止符を打つ。
【良い点】
王道にして壮大な英雄戦記を24話で綺麗に纏め上げた高い完成度。
1話たりとも無駄が無く、淀みなくテンポ良く進行。24話ノンストップでグイグイ引き込まれる面白さ。
英雄戦記でありつつ、一貫して愛の物語であるのもロマンチック。
また信念と誇りをもって散りゆく者たちの見せ場も熱い、劇を見ているかのようにドラマチック。
西洋風な剣と魔法のファンタジーでありつつ、戦記としては中国時代物も参考にしてそうな内容。
劉備ぽい主人公とか、呂布と陳宮ぽいミルザー主従、天下三分の計など。
王道主人公が覇道を打ち破る構図も良し。
君主、聖印、魔法師、混沌などの世界観設定も丁寧かつ、分かり易くファンタジー戦記に組み込まれている。
戦術は大味ながら君主たちの個性で痛快に見せるのに、聖印や魔法が効果的に使われている。
魔法が乱舞する外連味ありつつも、戦記としての戦術もしっかりしていて見応えあり。
主人公テオは劉備タイプな人徳の英雄、彼の真っ直ぐな理念が仲間を集め、時代を動かしていく流れも良い。
ヒロインの魔法師シルーカはテオの理想を支え、愛し合う。
劉備と孔明よりも、劉邦と張良(横山光輝の漫画)に近い印象。
テオの戦う動機が故郷を圧政から救いたい、民草の為に混沌を収める、そして愛するシルーカの為…
テオはてらいなくシルーカを愛し求め、キスをする。この一点のみでも素晴らしき主人公。
壮大にして淀みなく進行するストーリーの主軸に、愛し合うラブロマンスあり。
主人公組の他にも途中退場するヴィラールとマルグレットの情熱的な愛、ロミジュリ状態なアレクシスとマリーネ、三組のカップルの愛のドラマが動乱の時代を変えていく。
特にアレクシスとマリーネに対し、テオがシルーカへの普遍の愛を示し続け、これが物語全編に渡っての理念なのも素晴らしい。
愛のドラマとしてはマリーネの悲壮な覚悟を象徴するミルザーの略奪愛もロマンス感。
男女どちらも魅力的キャラ多数。
24話では尺不足で一人一人を丁寧に描く余裕が無かった割には、各々がしっかりと役割を果たし、存在感見せた。
少ない出番で英雄たちが見せ場示し、群雄戦記として申し分ない。
戦記としてはテオが個人武勇タイプではない分、同志の英雄たちの見せ場があった感じ。
ソロン王みたいな1話のみで退場したり、モブ兵士でも死を恐れず勇敢に立ち向かうなど、一人一人に信念がある。
テオの故郷で圧政を敷くロッシーニ一家も、終盤立ち塞がる魔法師協会や教会も彼らなりの信念あり、テンプレな悪役ではない苦悩がある辺りも深い。
わからせたい系バイキング娘ウルリカちゃん可愛かった。
作画は抜きん出てはいないが申し分なく綺麗。
楽曲はどちらかというと前半OPとEDが好き。
【悪い点】
良い点とも裏腹、無駄なくテンポの良い進行で物足りない面も。
ややダイジェスト感あり。
大善戦はしているが、魅力的キャラ多数なだけに見せ場をもっと丁寧に見たかった感は否めず。
淀みなく進行するためか、波乱万丈なはずなのにやや予定調和。
【総合評価】9点
大河ファンタジー英雄戦記アニメとしては自分の知る限り最高傑作の一つ。
ダイジェスト感を差し引いても極めて完成度が高い。
24話でも不十分というべきか、24話だからこそテンポ良く綺麗に纏まったとみるべきか。
評価は最高には届かないが「とても良い」
【余談】
最終話で明かされた敵の思想は、ロードス島戦記の灰の魔女カーラの思想踏襲か。
前半EDの歌詞、「傷だらけの手で何度も叩いた」の「何度も叩いた」が「田んぼを叩いた」に空耳する…
当時ニコニコ動画で空耳されていたが最近聴いても「田んぼを叩いた」に聴こえる…